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【INTERVIEW】 阿部翔平「今年は楽しめるとわかっているからこそ、本当に楽しみ」 選手兼任監督 開幕直前インタビュー

2022年3月26日

SHIBUYA CITY FCの2022シーズンが3月27日(日)の三菱UFJ銀行サッカー部戦で開幕を迎える。シーズンの行方を占う重要な開幕戦を前に、今年からCITYの選手兼任監督に就任した阿部翔平に意気込みと展望を聞いた。


――選手兼任監督という立場で挑むシーズン開幕が近づいてきました。今の心境はいかがですか?

「率直に楽しみですね。いい準備ができてきているし、みなさんにプレーしているところを見せられるのが本当に楽しみです。選手たちのポジティブなオーラを感じられているので、それを早く見せたい気持ちが一番です」



――開幕1週間前時点でのチームの状態やご自身のコンディションは、ここ数年と比べて違いますか?

「かなりいいと思います。CITYでは3年間やってきましたけど、その中でチームの状態は一番いいです。選手としても38歳を迎えて、Jリーグ時代も含めて30代になってからの毎年の自分と比較してもコンディションはかなりいいと思っています。個人的な面でも、チームがどう戦えるのかという意味でも、2つの楽しみが相乗効果となってワクワクにつながっていますね」


――例年以上にいい状態を作れている要因は何ですか?

「選手たちの見ている方向がバラついていないのが一番大きいと思います。こうやっていくんだという方向性が統一されていて、チームのまとまりを感じています。戸田さん(戸田和幸TD兼コーチ)と一緒に落とし込んでいるサッカーも、チームとしてのベースがあって、そのうえで個人を生かして、みんなの能力を遺憾なく発揮できるような戦い方ができるんじゃないかと思っています」



――ピッチ上での戦い方の部分は戸田コーチと一緒にチームへ伝えている最中だと思います。今年のCITYのサッカーのポイントになってくるところを教えてください。

「運動量になるのかなと思います。ただ、それが最初にくるわけではなくて、自分たちがやりたいサッカーを可能にするためには、結果的に運動量が必要になるということです。『この戦術はキツい』という見方もできますけど、みんながこの戦い方を成立させて勝ちたいと思っているし、それに伴って選手たちの思考の順序も『この戦術を成り立たせるためには、一生懸命に頑張って走らないとダメだよね』という形で整理されていて、『キツい』こともポジティブに捉えられている印象です」



――選手たちには目指す戦い方の全体像も見えてきているのでしょうか。

「今は個々が課されたタスクを何とか完遂しようという意欲が強いので、結果的に全体が噛み合って、すごくうまくいっている感じですね。選手たちにも自分たちのサッカーの全体像は見えているとは思います。最終的にはもっと深く知ってほしいですけど、実はあえてまだそこまで細かく教えていません。まずは日々のトレーニングを通じて、自分の周りで何が起こっていて、目の前の問題をどう解決していくのか、そしてどうすれば次の段階につながるのかを自力で探してもらいたいと思っています」



――シーズン中のどこかで完成させるために余白を残しながら、徐々にできることを増やしていき、積み上げている段階ということですね。

「まずベースを作りたいので、いまはこちらが提示するものにそのまま乗っかってきてもらえればいい。やろうとするベースがしっかりしていて、それに則った正しいポジションを取れば、自然にいい攻撃が生まれてくると感じている真っ最中です。

選手たちは今年のCITYがやろうとしているサッカーを成長させていく能力を持っていると思うので、この戦い方を極めていったらどこまでたどり着けるのか、とにかく楽しみです。楽観的すぎるかもしれないですけど、今はネガティブ要素を全く感じないので、いい流れができていると思います。

そのうえで、この流れをずっと維持するためには勝たなければいけないと、みんながわかっているし、自分たちのサッカーを表現するためには走らなければいけないともわかってくれていると感じます。まだ安心はしていないですけど、チームにはすごく期待しています。今年は楽しめるだろうなというのがわかっているからこそ、本当に楽しみです」



――Jリーグでの経験が豊富な選手や、大卒で伸び盛りの若手選手たちが数多く加入しました。今年の新加入選手たちの印象はいかがですか?

「明らかに選手の能力のベースが上がっていますよね。また、CITYを選んできてくれた選手はモチベーションが非常に高くて、それもすごくありがたいです。新加入選手たちの充実ぶりが既存の選手たちにも派生していって、チーム全体のモチベーションがすごく上がっているのを感じます。

僕が入団した当初に比べると、多くの選手が入れ替わり、チームはかなり様変わりしたので残念な部分も当然あります。でも、チームはそうやって歴史を重ねていくものです。フレッシュな選手たちが入ってきて一緒に戦ってくれて、よりよいサッカーを目指すのであればクラブとしても成長できますし、とても嬉しいです」



――選手としては今年から背番号を「6」に変更しました。この決断に込めた思いを教えてください。

「『21』は自分が小学生の時に着けた最初の背番号で、CITYに加入した時に初心に帰ってやっていこうという所信表明的な意味を込めていました。それから3年間プレーさせてもらい、今年から選手兼任監督としてチームの中心を担うことになって、責任はより大きくなります。なので、背番号変更は新たな決意表明なんです。

背番号が一桁ということは、チームの中心選手の証明でもあります。おこがましいかもしれないですけど、自分がかつて『6』を背負って名古屋グランパスの一時代を作ってきた自負もあります。そういう歴史を、CITYにもつなげていきたいという思いもありました」



――「6」はただの馴染みのある背番号ではない、と。

「名古屋で『31』から『6』に変更した時、J1クラブで一桁背番号を着けさせてもらえる選手はそういないと思いましたし、より多くの人に認められたとも感じていました。フロントスタッフやファン・サポーターをはじめとした多くの方々に『6番といえば…』と認めてもらえたのは、自分の中ですごく大きな変化でした」



――阿部さんが「6」を背負ってリーグ優勝することで、この背番号がさらに特別な意味を持ち、価値も高まっていくのではないでしょうか。

「優勝したいですね。クラブの歴史に名を残すならリーグ優勝して関東リーグに昇格するしかないですし、自分の名前を残せるなら特別な背番号『6』で残したい。監督という初めての役職で、多少の不安や緊張もありますけど、『6』という数字でそれらを払拭して、自分を奮い立たせることができるのではないかとも感じています。自分の決意を見える形で表現できたのが『6』への背番号変更だったんだと思います」



――リーグ優勝を達成するには、まず全勝を狙わなければなりません。その意味でも開幕戦は非常に大きな意味を持ちます。三菱UFJ銀行戦の重要性をどう捉え、どのように選手たちへ伝えていきたいですか?

「非常に重要ですけど、選手たちに対してはそこまで強調しなくてもいいのかなと思っています。気持ちが入りすぎると、トレーニングでやってきたこと以上のことをやろうとしてしまうかもしれない。

開幕戦でも最終節でも、シーズン中盤の試合でも、メンタルを安定させていつも通りにプレーすることが大事です。ちゃんとトレーニングができているからこそ、そう言えるとも思っています。もし準備が少し足りないなと思ったら、無理矢理にでもモチベーションを上げようとするかもしれない。でも、無理をしてもいつも通り以上のことはできないし、開幕戦では自分たちがプレシーズンにやってきたこと、作ってきたベースを表現しつつ、個人としてはそれぞれが自分の特徴は一体何だったのかを思い出しながらプレーして欲しい。

気持ちが入りすぎてテンションが上がると、何でもできるんじゃないかと思って、普段しないことを始めてしまう選手もいます。なので、選手たちにはできるだけいつも通りの精神状態で開幕を迎えて欲しいと思います」



――開幕戦勝利のポイントを教えてください。

「やはり先制点になってしまいますよね。『結局、1点目は何でもいい』という言い方はちょっと投げやりすぎるかもしないですけど、気持ちが乗っていればどういう形の得点でもいいと思っています」



――きれいに崩さなくても、泥臭くても、どんな形でも先に1点決めることが、開幕戦ならではの高揚感からくる不安定さを解消してくれますよね。

「まさにその通りだと思います。ディフェンスラインからしっかり組み立てていくことも大事ですけど、結局は裏が空いていればシンプルにロングボールを蹴ってもいいと思いますし、プレー選択をなるべく間違えずにゴールに迫れたらいいと思います。もちろんボールを失った後の切り替えで、すぐに奪い返して、そのままゴールに向かっていってもいい。どういう形であれ、ゴールの可能性が高まるようにプレーすることを強く心がけてもらいたいと思います」



――ここから長い戦いが始まります。高い目標を掲げている中で、昨年よりもプレッシャーのかかるシーズンになると思います。どんな1年にしたいですか?

「一言、楽しみたい。緊張しながらサッカーをして、うまくいくことはあまりないと思うんですよね。緊張をモチベーションに変えられる選手はそれでいいと思いますけど、そういう選手ばかりではない。それにトップに立っている人間がガチガチに固まっていて楽しそうではなかったら、選手たちも楽しめないと思いますし。僕が率先してサッカーを楽しむ1年にしていきたいと思っています」


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