
KICK OFF |
2:00
つくばFC万博グラウンド


SHIBUYA CITY FC

日立ビルシステム
2
0
2025シーズン 関東サッカーリーグ2部
2025年9月28日
GAME RESULT
GAME REPORT
GAME PREVIEW - 試合前情報 -
ラストゲーム
総力戦の末につかみ取った勝利。背番号29の待望弾
リーグ優勝の可能性は消えたなかで迎えた、第17節・厚木はやぶさFC戦。渋谷はアウェイの地で、2-1の勝利を収めた。
渋谷は前半開始直後に、守備の隙を突かれ失点を許す苦しい展開に。それでも29分、政森宗治がPKを沈め、試合を振り出しに戻した。
そして試合を決定づけたのが、後半33分だった。相手GKの縦パスを植松亮がカットし、そのこぼれ球に反応したのは途中出場の青木友佑。ペナルティエリア外から迷わず右足一閃。鋭い弾道がゴール左隅に突き刺さり、チームを勝利へと導いた。
この逆転弾について青木は、「前回の試合では交代選手が試合の流れを変えきれなかったので、今回は絶対に変えてやるという強い思いで臨んだ。常にゴールは狙っていたし、(渡邉)千真さんからボールを奪った形にはなってしまったけど、自然に体が動いた。めちゃくちゃ気持ち良かったし、家族や支えてくれた人たちの思いも乗ったシュートだった」と笑みを浮かべた。
今季、新潟医療福祉大学から加入した期待のルーキーは、これがシーズン2ゴール目。第7節・エスペランサSC戦を最後に得点から遠ざかり、後期は出場機会も減少。後期の総出場時間はわずか21分にとどまり、前線に揃う実力者の中で存在感を示しきれないでいた。
それでも限られた時間で結果を残してみせた背番号29が、ようやく自らの価値をピッチで証明した。まさにこれまでの鬱陶を晴らすかのような一撃だった。
「練習からときくん(政森)や(渡邉)千真さんよりゴールを決めることは意識していたし、絶対に負けたくない思いがあった。試合に出れないときも周りの選手が声をかけてくれたり、(山出)旭くんが一番気を遣ってくれてご飯に連れていってくれたこともあって、そういうのが力になったと思う」
仲間に支えられ、必死に食らいついてきたルーキー。待望のゴールは、悔しさを晴らすと同時に、仲間への恩返し弾ともなった。
だが、青木の意欲はここで終わらない。「今回はゴールを決めれたけど、自分が次の試合でスタメンで出るというのは難しいかもしれない。それでも与えられた時間で結果を残して、チームのために走る・戦う、そして熱いプレーを見せれるようにしたい」
苦しい展開の中でベンチメンバーが役割を果たし、采配も的中。この一戦で示した総合力は、チームが積み上げてきた成長そのものだった。
17試合の集大成へ。渡邉千真、キャリア最後の舞台へ
ついに迎える最終節・日立ビルシステム戦。渋谷はすでに2位を確定させており、対する4位の相手とは勝ち点7差をつけている。
7月初旬に味の素フィールド西が丘で行われた前期の対戦では、逆転のチャンスを生かしきれず1-1のドロー。それだけに油断はできない一戦だ。加えて、ここ数試合は好調な戦いぶりを見せる渋谷だが、決定力不足が課題として残っている。これは突発的な話ではなく、今シーズンを通してのテーマでもあり、この点について副キャプテンの楠美圭史はこう語る。
「自分自身も含めてもう一個落ち着いてプレーしてほしいし、ゴール前でもっとボールを持てれば問題ない。相手の守備が良かったというより、自分たちのミスで合わないシーンが多い。これだけ点を取れているチームだからこそ、もっとみんなが自信と余裕を持って、それぞれがゴール前で時間を作れれば入ると思う。そこは練習からもっと伝えていきたいし、もうやり続けるしかない」
前期では苦しい展開を強いられただけに、順位上の差がそのまま勝利という結果を保証するわけではない。それでも、シーズンを通して成長を遂げた今の渋谷であれば、明日の最終節で攻撃陣が爆発し、大量得点を挙げる可能性も十分にある。
そして今節は、一人のベテランにとっても特別な意味を持つ。26日、FW渡邉千真がリーグ最終節をもって現役引退することを発表した。横浜F・マリノスをはじめ数々のクラブでゴールを記録し、日本サッカー界をけん引してきたストライカー。そのキャリアのラストゲームが、渋谷で迎える明日の一戦となる。
リーグ最後の90分。苦難を乗り越え、プライドを背負って戦い抜いてきた17試合の成果を、そして渡邉千真の歩んできたキャリアを、勝利という形で締めくくれるか。クラブにとっても、サポーターにとっても、記憶に刻まれる歴史的一日になるだろう。

PLAYER'S COMMENTS - 試合前 選手コメント -
14 青木竣 / MF
ーー前節は後半途中からの出場。久々に公式戦のピッチに立った感触はどうだったか
土曜日(試合前日)の時点で優勝の可能性がなくなって1週間準備してきたなかで、久々に自分にチャンスがありそうだなと思っていた。ずっと優勝を目指して公式戦のピッチで戦ってきたメンバーは、モチベーションを保つのが難しかったと思うけど、自分にとっては前日に優勝の可能性がなくなったとしてもモチベーションが変わることなく、久々とはいえしっかりアピールしないと後がないと思っていた。やるべきことはずっとやってこれた自信はあったので高いモチベーションで試合に挑めた。
ーー第7節・エスペランサSC戦以降出番がない期間が続いたが、心境はどうだったか
毎週試合があってメンバーに入る・入らないというところで一喜一憂することもあったけど、すぐ立ち直るというか、切り替えるメンタルを持てていたし、やるべきことは明確だった。どんな状況でも、落ち込んでそれをやれないのが一番もったいないっていうのは考えていた。もちろんチャンスがあれば、いつでも試合に出てチームに貢献できるように、練習から落ちることなく、自分のやるべきこと、やれることを増やすことにフォーカスして取り組めた。
ーー選手記事のインタビューでも「自分にベクトルを」と話していたが、そのような一貫した姿勢に救われた選手も多いと思う。それは自分のなかで意識していた部分でもあったのか
今年大学を卒業して5年目というところで、やっぱり1、2年目は試合に出れなくて、不貞腐れた時期があった。そのときの今の自分くらいの年齢や自分より上の年齢の選手を見て、反面教師の部分もあっし、見習らわなきゃいけない選手もいたなかで、20代後半で試合に出れなくて不貞腐れる選手よりも、チームのために、そして自分のために黙々とやっている選手のほうがかっこいいなと思った。試合に絡めていない選手がそうやって取り組むことで、チームに良い影響を与えられるので、そういう振る舞いができた。
試合に出れないというのは誰のせいでもなく、単に自分のせいでしかない。試合に出るために、出て活躍してチームに貢献するために、毎日自分にできること、やるべきことをやり続けることをひたすら意識して、マインドセットしてきた。
ーー先日、FW渡邉千真選手が明日の試合をもって現役引退を発表したが、彼への思いや、印象的なエピソードは
自分がヴィアティンのときからいろんなベテランの選手と一緒にプレーする機会があったなかで、(渡邉は)Jリーグでいっぱい点を取っているストライカーというところで、(自分が)渋谷に来る前は、『「俺が、俺が」みたいな少しストライカーっぽい性格があるのかな?』と思っていたけれど、すごく温厚で優しかった。おそらく千真さんも今シーズン、試合に絡めていない時期や上手くいかない時期もあったなかでも、波なくみんなと接してくれていた。シーズンを通してあの年齢でキレを出せるコンディションや、ゴール前の決定力、人柄、そして人間性は、長くキャリアを積んできた選手なだけあるし、自分の目指すべきところにいる選手だなと思う。
昨日の引退リリースを見ても、本当にいろんなチームのサポーターに愛されているなって思って、(その反応を見て)感動したというか、寂しいなと。(一緒にプレーした期間は)1年しかなかったけど、今年もすごく身体がキレていて、点も取れていて「来年もやるだろうな」と勝手に思っていたので、昨日のリリースを見て実感が湧いてきて、すごく寂しい気持ちが強くなってきたというか、もっとやりたかったなというのが率直な気持ち。キャリアは区切りなく続いていくので、セカンドキャリアというのは違うかもしれないけれど、次にやることも応援したい。
ーー明日への意気込みを
もうリーグ優勝の可能性はないけれど、重要な一戦というのには変わりはない。このままいけば入れ替え戦になる可能性が高いなかで、チームとしてやれることを再現性をもってできるようにするためにもすごく貴重な一試合。あとは(渡邉)千真さんの最後の試合ということで、有終の美じゃないけれど、みんなで良い形で送り出せるように絶対に勝ちたい試合だと思っている。
個人的にいうと、会場がつくばFC万博グラウンドなので、そこにもすごく思い入れがある(2021〜2024年までジョイフル本田つくばFCに所属)。久々に長い時間(試合に)出れると思うし、千真さんの最後のピッチに一緒に立てるのはすごく光栄なこと。お世話になったクラブのグラウンドで公式戦を戦えることも楽しみなので、自分にとっては大きな一戦というか、いろんな意味で楽しみな一試合。勝利や結果、そして自分も点を取る、アシストをすることにこだわって、チームとして良い結果を得られたらいいなと思う。

3 渡邉尚樹 / DF
ーー前節は後半頭からの出場。久々に公式戦のピッチに立ったが、どんな思いで臨んだか
自分にとっては久々のゲームというのもあって、良い緊張感だった。試合に出るときもみんなから「自分らしくやっていいよ」と声をかけてもらったし、前半はベンチから見ていてチームとしてやるべきことを認識して後半に臨めた。ファーストプレーが少し微妙だったけれど、それ以外のところは割とすんなり入れた。
ーー試合後のインタビューで増嶋監督からは「練習からすごく良いプレーを見せてくれていた」と話していたが、やはりいつも以上に気合いが入っていたのか
リーグ戦が残り2試合になったということ、そして怪我人も増えていたなかで、絶対に自分にはチャンスが回ってくると思っていた。それはスタメンで出れない週でも常日頃から、そういう心持ちでプレーしていたので、試合出場ということで形になって良かった。
ーー第4節・COEDO KAWAGOE F.C戦での先発以降出番がない期間が続いたが、どのような心境だったのか
サッカー選手である以上試合に出場しないと意味がないので、やっぱり出れなかったことはすごく悔しかった。でもその悔しさを押し殺したわけじゃないけれど、全員が同じ方向を向いてプレーしなくてはいけないので、僕以外にも出れていない選手はいて、そこでもみんなチームとしてやるべきことをちゃんとやっていたので、すごく良かったかなと思う。
ーー最終節はまだ終わっていないが、今シーズンを振り返ってみたときに自分のなかで成長したところや伸びしろはどこにあると思うか
試合に絡めない時間が多かったので、メンタルのコントロールや保ち方はすごく自分のなかで成長できたと思う。やっぱり試合に出てなんぼだと思うけれど、試合に出れていないときこそそれが試されるというか、そこは今シーズンを通して何度もあったのですごく良かった。
プレー面でいえば、去年からの課題でもあった「潰す」ことは自分でも感じていたし、去年のシーズン終わりに裕介さん(田中裕介スポーツダイレクター)にも同じことを言われていたので、今年の課題でもあるなと感じていたけれど、実際にトレーニングマッチでも自分がボールを奪うところはしっかり体現できていたと思う。そこは自分のなかでは武器ではないけど、すごくポジティブな材料になった。
ーー明日は最終節・日立ビルシステム戦。前期は悔しいドローゲームで終わったが、明日はどんな展開になると予想しているか
最終戦って堅くなりやすいとは思うけれど、今週の練習を見てもすごく雰囲気は良いし、自分たちのやっていることは間違いないという自信みたいなものは、どのゲームをやっても思うので、そこをしっかり全員で同じ方向を向けば問題ないと思う。
ーー先日、FW渡邉千真選手が明日の試合をもって現役引退を発表したが、彼への思いや、印象的なエピソードは
「サッカー選手とはどういうものなのか」「どういう存在なのか」ということを教えてもらったというよりも、すごく体現していた。試合前や練習前の準備だったり練習後のケア、佇まいというものは千真さんから学んだこと。もちろんピッチ内でもサッカーに対する姿勢もすごく学ばせていただいた。
初期のクラブのYouTubeにも映像が残っていると思うけれど、千真さんが渋谷に練習生として参加していた頃の練習の2人組や、ジョギングは一緒にやっていたと思う。ロッカールームや荷物を置く控室でも千真さんとは近かったので、サッカーも含めて私生活の話をする機会も結構多かった。それはたまたまだし、自分も千真さんにひょいひょいついていくみたいな感じだったけれど、今思えばそれが良いきっかけになったと思う。
ーー明日の試合への意気込みを
千真さんの引退試合だったり、最終節ということもあっていろんな意味がある試合だけれど、やっぱり勝つことが一番大事。勝って終わることが、ファン・サポーターの方たち、そしてスポンサーの方たちへの一番良い報告になると思うので、そこは変えずに、勝ちにこだわりたい。

BOSS'S COMMENTS - 試合前 監督コメント -
増嶋竜也 監督
ーー優勝の可能性がなくなったうえで前節を迎え、選手たちには主にメンタル面の話をしたということだったが、今節もいわゆる「消化試合」となるなかで、どんなことを選手たちに伝えたのか
今回の試合は(渡邉)千真が最後ということを大きなトピックとして、「勝って送り出してあげよう」という話をミーティングで話した。単に最後の試合というよりは千真のためのゲームにしたいなと僕自身も思っているので、大きなイベントではないけれど、千真を見にいろんな人が来るはず。サッカー界にとっても大きな貢献をしてくれたと思うので、そういう感謝の気持ちを込めて、応援に来てくれる人、我々みんなで試合をつくり上げていきたい。
ーー指導者として渡邉千真選手のキャリアや人柄から学んだこと、長くサッカー界をけん引してきた彼をどう評価するか
(渡邉は)今39歳で自分と一歳しか変わらないなかで、彼のために一回もトレーニングの強度を考慮したことがなかったので、22歳、23歳の若手の選手と同じメニューをフルで1年間やってきてくれた。「調整したい」「コントロールしてくれ」ということは一回も言われなかったので、僕自身もビックリしたし周りの選手も「千真さんがこれだけやっているなら」という気持ちには間違いなくなったはず。そういった部分では、監督としてもすごくお手本になる姿を見せてくれたので感謝している。
ーーここ数試合だけでなく、今シーズンを通して決定力不足が課題として残っていると思うが、明日はその不安を解消できそうな期待や見込みがあるか
後半戦はむしろたくさん点を取れているし、チームの形というのは確立というか、完成しつつある。最後の試合も、後半戦の勢いとこれまでやってきたことを最大限出せれば複数得点を取れるはず。あとは誰が出ても同じサッカーをしたい思いで1年間チームをつくり上げてきたので、いろんな選手のパワーに期待したい。
ーー明日の試合への意気込みを
入れ替え戦があるかもしれないし、明日はリーグ戦最後の試合ということでたくさんの人が応援に来てくれると思う。勝って次につなげられるように、そして千真を気持ちよく送り出せるように、2つの意味を込めたゲームにしたい。

GAME REVIEW - 試合記録 -
関東社会人サッカーリーグ2部最終節。2位の渋谷は4位の日立ビルシステムを相手に、つくばFC万博グラウンドに乗り込んだ。互いにいわゆる“消化試合”だが、渋谷にとっては大きな意味を持つ一戦であった。26日、FW渡邉千真が今節限りで現役引退を発表。かつて日本代表にも名を連ねたレジェンドの最後の試合を勝利で飾れるか、そしてリーグ17試合を戦い抜いてきた成果を示せるか。2つの意味を持つ“ラストゲーム”となった。
渋谷は前節からスタメンを大きく入れ替え。ゴールキーパーには木村壮宏、右CBには志村滉、アンカーに累積警告で出場停止となっていた本田憲弥が復帰。両ウイングには青木竣と水野智大、そしてワントップにはキャプテンマークを巻いた渡邉千真が起用された。

前半が始まり、最終ラインの鈴木友也、坪川潤之から前線へボールが入り、ワントップに構えた渡邉千真が幾度も裏抜けするシーンが目立つ。両サイドからも積極的に仕掛け、9分には左サイドの青木がゴール前の渡邉へ、速いクロスを送り早々にゴールへ迫った。
試合が動いたのは前半19分。右サイドを崩した渋谷は、渡邉千真が落としたボールを受けた水野が逆サイドへクロス。最後はゴール前で待ち構えていた青木が右足一閃。冷静に放たれたシュートはゴール右上に突き刺さり、先制点を奪った。かつて3年半所属したジョイフル本田つくばFCのグラウンドで、今季待望の初ゴールを記録した。

1点をリードし、余裕を持ちながらパスワークで相手を揺さぶる渋谷。23分には坪川が球際の競り合いでイエローカードをもらい、相手にFKのチャンスを与えてしまうが、ここは木村が落ち着いて防ぐ。
追加点がほしい渋谷は33分、またしてもチャンスが訪れる。中盤での渡邉千真の落としを受けた土田が絶妙なスルーパスを通すと、青木が左サイドを突破。今度は左足でゴールネットを揺らし、この日2点目をマークした。

前半も残り5分となり、渋谷は得意のパスワークで試合を進める。46分には青木がファーサイドにいた渡邉千真へクロスを送り込むと、渡邉は得意のポストプレーで魅了する。3点目を狙いにいったが、追加点は奪えず前半終了。青木の2ゴールでリードを広げ、後半に折り返す。
後半が始まり、立ち上がりから追加点を狙いにいく渋谷。47分には、青木からのクロスに渡邉が華麗なトラップから左足でゴールを狙ったが、ここはキーパーに阻まれゴールにならず。渋谷はその直後にCKを獲得し、鈴木がミドルシュートで狙うも大きく枠を外れてしまうが、次々とチャンスを作り続ける。
51分には相手のカウンターからCKを与える場面もあったが、ここは集中した守備で跳ね返す。さらに53分にはドリブルで仕掛けた渡邉が中央でFKを獲得。キッカーの青木のボールに渡邉が合わせたが、惜しくも決めきれない。するとその直後、またしても相手のカウンターを浴びるも、ゴール前の1対1で木村が好セーブし、チームを救う。
58分、ここで渋谷は最初の交代カードを切る。青木に代わって吉永昇偉、水野に代えて小関陽星を投入し、両サイドのウイングを入れ替える。だが直後の60分には左サイドの低い位置で相手にFKのチャンスを与えてしまう。ゴール前に放たれたボールは相手のヘディングで流れ、なんとかピンチを逃れる。
試合は時間の経過とともにオープンな展開に。徐々にアグレッシブに攻め込む相手に対し、渋谷もスタイルを崩さずパスをつなぎ、素早いプレスバックで応戦する。すると渋谷は土田の縦パスから左サイドへ展開。ゴール前にいた渡邉がポストプレーで3点目を狙ったが、枠を捉えきれない。
そして78分、ここで渋谷は2枚替え。坪川に代わり河波櫻士、渡邉に代わり政森宗治を投入。現役ラストマッチを戦い抜いた渡邉がピッチを後にすると、両チーム、そして駆けつけた観客から祝福の拍手が送られた。
後半も終盤に差し掛かる渋谷は81分、再び交代カードを切る。土田に代わって楠美圭史を投入し、試合の流れを見極めながら最後の一手を打つ。
残り5分になり、試合を締めにかかる渋谷となんとか追いつきたい日立の攻防はさらに激しさを増す。88分にはペナルティエリア外の嫌な位置でFKを与えてしまうが、ここは志村の空中戦で跳ね返す。その直後にはカウンターから河波が鋭いミドルシュートを放つが、ゴールポストに跳ね返り追加点には至らず。
アディショナルタイムは4分。最後までチャンスを作り続け、右サイドで小関が相手を剥がしながらドリブルを仕掛け、植松がゴール前でフィニッシュまで持ち込もうとするが、スコアは動かない。
追加点を奪いたかったが、ここで試合終了のホイッスル。渋谷が2-0で勝利を収めた。
最終節の舞台で勝ち点3をもぎ取った渋谷。この勝利は確実にこれまでのリーグ戦の歩みを示す、大きな財産となった。そして現役最後の渡邉へ送られた、何よりもふさわしい花道となった。

GAME HIGHLIGHTS - 試合ハイライト -
PLAYER'S INTERVIEWS - 試合後 選手インタビュー -
GAME PREVIEW - 試合前情報 -
ラストゲーム
総力戦の末につかみ取った勝利。背番号29の待望弾
リーグ優勝の可能性は消えたなかで迎えた、第17節・厚木はやぶさFC戦。渋谷はアウェイの地で、2-1の勝利を収めた。
渋谷は前半開始直後に、守備の隙を突かれ失点を許す苦しい展開に。それでも29分、政森宗治がPKを沈め、試合を振り出しに戻した。
そして試合を決定づけたのが、後半33分だった。相手GKの縦パスを植松亮がカットし、そのこぼれ球に反応したのは途中出場の青木友佑。ペナルティエリア外から迷わず右足一閃。鋭い弾道がゴール左隅に突き刺さり、チームを勝利へと導いた。
この逆転弾について青木は、「前回の試合では交代選手が試合の流れを変えきれなかったので、今回は絶対に変えてやるという強い思いで臨んだ。常にゴールは狙っていたし、(渡邉)千真さんからボールを奪った形にはなってしまったけど、自然に体が動いた。めちゃくちゃ気持ち良かったし、家族や支えてくれた人たちの思いも乗ったシュートだった」と笑みを浮かべた。
今季、新潟医療福祉大学から加入した期待のルーキーは、これがシーズン2ゴール目。第7節・エスペランサSC戦を最後に得点から遠ざかり、後期は出場機会も減少。後期の総出場時間はわずか21分にとどまり、前線に揃う実力者の中で存在感を示しきれないでいた。
それでも限られた時間で結果を残してみせた背番号29が、ようやく自らの価値をピッチで証明した。まさにこれまでの鬱陶を晴らすかのような一撃だった。
「練習からときくん(政森)や(渡邉)千真さんよりゴールを決めることは意識していたし、絶対に負けたくない思いがあった。試合に出れないときも周りの選手が声をかけてくれたり、(山出)旭くんが一番気を遣ってくれてご飯に連れていってくれたこともあって、そういうのが力になったと思う」
仲間に支えられ、必死に食らいついてきたルーキー。待望のゴールは、悔しさを晴らすと同時に、仲間への恩返し弾ともなった。
だが、青木の意欲はここで終わらない。「今回はゴールを決めれたけど、自分が次の試合でスタメンで出るというのは難しいかもしれない。それでも与えられた時間で結果を残して、チームのために走る・戦う、そして熱いプレーを見せれるようにしたい」
苦しい展開の中でベンチメンバーが役割を果たし、采配も的中。この一戦で示した総合力は、チームが積み上げてきた成長そのものだった。
17試合の集大成へ。渡邉千真、キャリア最後の舞台へ
ついに迎える最終節・日立ビルシステム戦。渋谷はすでに2位を確定させており、対する4位の相手とは勝ち点7差をつけている。
7月初旬に味の素フィールド西が丘で行われた前期の対戦では、逆転のチャンスを生かしきれず1-1のドロー。それだけに油断はできない一戦だ。加えて、ここ数試合は好調な戦いぶりを見せる渋谷だが、決定力不足が課題として残っている。これは突発的な話ではなく、今シーズンを通してのテーマでもあり、この点について副キャプテンの楠美圭史はこう語る。
「自分自身も含めてもう一個落ち着いてプレーしてほしいし、ゴール前でもっとボールを持てれば問題ない。相手の守備が良かったというより、自分たちのミスで合わないシーンが多い。これだけ点を取れているチームだからこそ、もっとみんなが自信と余裕を持って、それぞれがゴール前で時間を作れれば入ると思う。そこは練習からもっと伝えていきたいし、もうやり続けるしかない」
前期では苦しい展開を強いられただけに、順位上の差がそのまま勝利という結果を保証するわけではない。それでも、シーズンを通して成長を遂げた今の渋谷であれば、明日の最終節で攻撃陣が爆発し、大量得点を挙げる可能性も十分にある。
そして今節は、一人のベテランにとっても特別な意味を持つ。26日、FW渡邉千真がリーグ最終節をもって現役引退することを発表した。横浜F・マリノスをはじめ数々のクラブでゴールを記録し、日本サッカー界をけん引してきたストライカー。そのキャリアのラストゲームが、渋谷で迎える明日の一戦となる。
リーグ最後の90分。苦難を乗り越え、プライドを背負って戦い抜いてきた17試合の成果を、そして渡邉千真の歩んできたキャリアを、勝利という形で締めくくれるか。クラブにとっても、サポーターにとっても、記憶に刻まれる歴史的一日になるだろう。

PLAYER'S COMMENTS - 試合前 選手コメント -
14 青木竣 / MF
ーー前節は後半途中からの出場。久々に公式戦のピッチに立った感触はどうだったか
土曜日(試合前日)の時点で優勝の可能性がなくなって1週間準備してきたなかで、久々に自分にチャンスがありそうだなと思っていた。ずっと優勝を目指して公式戦のピッチで戦ってきたメンバーは、モチベーションを保つのが難しかったと思うけど、自分にとっては前日に優勝の可能性がなくなったとしてもモチベーションが変わることなく、久々とはいえしっかりアピールしないと後がないと思っていた。やるべきことはずっとやってこれた自信はあったので高いモチベーションで試合に挑めた。
ーー第7節・エスペランサSC戦以降出番がない期間が続いたが、心境はどうだったか
毎週試合があってメンバーに入る・入らないというところで一喜一憂することもあったけど、すぐ立ち直るというか、切り替えるメンタルを持てていたし、やるべきことは明確だった。どんな状況でも、落ち込んでそれをやれないのが一番もったいないっていうのは考えていた。もちろんチャンスがあれば、いつでも試合に出てチームに貢献できるように、練習から落ちることなく、自分のやるべきこと、やれることを増やすことにフォーカスして取り組めた。
ーー選手記事のインタビューでも「自分にベクトルを」と話していたが、そのような一貫した姿勢に救われた選手も多いと思う。それは自分のなかで意識していた部分でもあったのか
今年大学を卒業して5年目というところで、やっぱり1、2年目は試合に出れなくて、不貞腐れた時期があった。そのときの今の自分くらいの年齢や自分より上の年齢の選手を見て、反面教師の部分もあっし、見習らわなきゃいけない選手もいたなかで、20代後半で試合に出れなくて不貞腐れる選手よりも、チームのために、そして自分のために黙々とやっている選手のほうがかっこいいなと思った。試合に絡めていない選手がそうやって取り組むことで、チームに良い影響を与えられるので、そういう振る舞いができた。
試合に出れないというのは誰のせいでもなく、単に自分のせいでしかない。試合に出るために、出て活躍してチームに貢献するために、毎日自分にできること、やるべきことをやり続けることをひたすら意識して、マインドセットしてきた。
ーー先日、FW渡邉千真選手が明日の試合をもって現役引退を発表したが、彼への思いや、印象的なエピソードは
自分がヴィアティンのときからいろんなベテランの選手と一緒にプレーする機会があったなかで、(渡邉は)Jリーグでいっぱい点を取っているストライカーというところで、(自分が)渋谷に来る前は、『「俺が、俺が」みたいな少しストライカーっぽい性格があるのかな?』と思っていたけれど、すごく温厚で優しかった。おそらく千真さんも今シーズン、試合に絡めていない時期や上手くいかない時期もあったなかでも、波なくみんなと接してくれていた。シーズンを通してあの年齢でキレを出せるコンディションや、ゴール前の決定力、人柄、そして人間性は、長くキャリアを積んできた選手なだけあるし、自分の目指すべきところにいる選手だなと思う。
昨日の引退リリースを見ても、本当にいろんなチームのサポーターに愛されているなって思って、(その反応を見て)感動したというか、寂しいなと。(一緒にプレーした期間は)1年しかなかったけど、今年もすごく身体がキレていて、点も取れていて「来年もやるだろうな」と勝手に思っていたので、昨日のリリースを見て実感が湧いてきて、すごく寂しい気持ちが強くなってきたというか、もっとやりたかったなというのが率直な気持ち。キャリアは区切りなく続いていくので、セカンドキャリアというのは違うかもしれないけれど、次にやることも応援したい。
ーー明日への意気込みを
もうリーグ優勝の可能性はないけれど、重要な一戦というのには変わりはない。このままいけば入れ替え戦になる可能性が高いなかで、チームとしてやれることを再現性をもってできるようにするためにもすごく貴重な一試合。あとは(渡邉)千真さんの最後の試合ということで、有終の美じゃないけれど、みんなで良い形で送り出せるように絶対に勝ちたい試合だと思っている。
個人的にいうと、会場がつくばFC万博グラウンドなので、そこにもすごく思い入れがある(2021〜2024年までジョイフル本田つくばFCに所属)。久々に長い時間(試合に)出れると思うし、千真さんの最後のピッチに一緒に立てるのはすごく光栄なこと。お世話になったクラブのグラウンドで公式戦を戦えることも楽しみなので、自分にとっては大きな一戦というか、いろんな意味で楽しみな一試合。勝利や結果、そして自分も点を取る、アシストをすることにこだわって、チームとして良い結果を得られたらいいなと思う。

3 渡邉尚樹 / DF
ーー前節は後半頭からの出場。久々に公式戦のピッチに立ったが、どんな思いで臨んだか
自分にとっては久々のゲームというのもあって、良い緊張感だった。試合に出るときもみんなから「自分らしくやっていいよ」と声をかけてもらったし、前半はベンチから見ていてチームとしてやるべきことを認識して後半に臨めた。ファーストプレーが少し微妙だったけれど、それ以外のところは割とすんなり入れた。
ーー試合後のインタビューで増嶋監督からは「練習からすごく良いプレーを見せてくれていた」と話していたが、やはりいつも以上に気合いが入っていたのか
リーグ戦が残り2試合になったということ、そして怪我人も増えていたなかで、絶対に自分にはチャンスが回ってくると思っていた。それはスタメンで出れない週でも常日頃から、そういう心持ちでプレーしていたので、試合出場ということで形になって良かった。
ーー第4節・COEDO KAWAGOE F.C戦での先発以降出番がない期間が続いたが、どのような心境だったのか
サッカー選手である以上試合に出場しないと意味がないので、やっぱり出れなかったことはすごく悔しかった。でもその悔しさを押し殺したわけじゃないけれど、全員が同じ方向を向いてプレーしなくてはいけないので、僕以外にも出れていない選手はいて、そこでもみんなチームとしてやるべきことをちゃんとやっていたので、すごく良かったかなと思う。
ーー最終節はまだ終わっていないが、今シーズンを振り返ってみたときに自分のなかで成長したところや伸びしろはどこにあると思うか
試合に絡めない時間が多かったので、メンタルのコントロールや保ち方はすごく自分のなかで成長できたと思う。やっぱり試合に出てなんぼだと思うけれど、試合に出れていないときこそそれが試されるというか、そこは今シーズンを通して何度もあったのですごく良かった。
プレー面でいえば、去年からの課題でもあった「潰す」ことは自分でも感じていたし、去年のシーズン終わりに裕介さん(田中裕介スポーツダイレクター)にも同じことを言われていたので、今年の課題でもあるなと感じていたけれど、実際にトレーニングマッチでも自分がボールを奪うところはしっかり体現できていたと思う。そこは自分のなかでは武器ではないけど、すごくポジティブな材料になった。
ーー明日は最終節・日立ビルシステム戦。前期は悔しいドローゲームで終わったが、明日はどんな展開になると予想しているか
最終戦って堅くなりやすいとは思うけれど、今週の練習を見てもすごく雰囲気は良いし、自分たちのやっていることは間違いないという自信みたいなものは、どのゲームをやっても思うので、そこをしっかり全員で同じ方向を向けば問題ないと思う。
ーー先日、FW渡邉千真選手が明日の試合をもって現役引退を発表したが、彼への思いや、印象的なエピソードは
「サッカー選手とはどういうものなのか」「どういう存在なのか」ということを教えてもらったというよりも、すごく体現していた。試合前や練習前の準備だったり練習後のケア、佇まいというものは千真さんから学んだこと。もちろんピッチ内でもサッカーに対する姿勢もすごく学ばせていただいた。
初期のクラブのYouTubeにも映像が残っていると思うけれど、千真さんが渋谷に練習生として参加していた頃の練習の2人組や、ジョギングは一緒にやっていたと思う。ロッカールームや荷物を置く控室でも千真さんとは近かったので、サッカーも含めて私生活の話をする機会も結構多かった。それはたまたまだし、自分も千真さんにひょいひょいついていくみたいな感じだったけれど、今思えばそれが良いきっかけになったと思う。
ーー明日の試合への意気込みを
千真さんの引退試合だったり、最終節ということもあっていろんな意味がある試合だけれど、やっぱり勝つことが一番大事。勝って終わることが、ファン・サポーターの方たち、そしてスポンサーの方たちへの一番良い報告になると思うので、そこは変えずに、勝ちにこだわりたい。

BOSS'S COMMENTS - 試合前 監督コメント -
増嶋竜也 監督
ーー優勝の可能性がなくなったうえで前節を迎え、選手たちには主にメンタル面の話をしたということだったが、今節もいわゆる「消化試合」となるなかで、どんなことを選手たちに伝えたのか
今回の試合は(渡邉)千真が最後ということを大きなトピックとして、「勝って送り出してあげよう」という話をミーティングで話した。単に最後の試合というよりは千真のためのゲームにしたいなと僕自身も思っているので、大きなイベントではないけれど、千真を見にいろんな人が来るはず。サッカー界にとっても大きな貢献をしてくれたと思うので、そういう感謝の気持ちを込めて、応援に来てくれる人、我々みんなで試合をつくり上げていきたい。
ーー指導者として渡邉千真選手のキャリアや人柄から学んだこと、長くサッカー界をけん引してきた彼をどう評価するか
(渡邉は)今39歳で自分と一歳しか変わらないなかで、彼のために一回もトレーニングの強度を考慮したことがなかったので、22歳、23歳の若手の選手と同じメニューをフルで1年間やってきてくれた。「調整したい」「コントロールしてくれ」ということは一回も言われなかったので、僕自身もビックリしたし周りの選手も「千真さんがこれだけやっているなら」という気持ちには間違いなくなったはず。そういった部分では、監督としてもすごくお手本になる姿を見せてくれたので感謝している。
ーーここ数試合だけでなく、今シーズンを通して決定力不足が課題として残っていると思うが、明日はその不安を解消できそうな期待や見込みがあるか
後半戦はむしろたくさん点を取れているし、チームの形というのは確立というか、完成しつつある。最後の試合も、後半戦の勢いとこれまでやってきたことを最大限出せれば複数得点を取れるはず。あとは誰が出ても同じサッカーをしたい思いで1年間チームをつくり上げてきたので、いろんな選手のパワーに期待したい。
ーー明日の試合への意気込みを
入れ替え戦があるかもしれないし、明日はリーグ戦最後の試合ということでたくさんの人が応援に来てくれると思う。勝って次につなげられるように、そして千真を気持ちよく送り出せるように、2つの意味を込めたゲームにしたい。

GAME REVIEW - 試合記録 -
関東社会人サッカーリーグ2部最終節。2位の渋谷は4位の日立ビルシステムを相手に、つくばFC万博グラウンドに乗り込んだ。互いにいわゆる“消化試合”だが、渋谷にとっては大きな意味を持つ一戦であった。26日、FW渡邉千真が今節限りで現役引退を発表。かつて日本代表にも名を連ねたレジェンドの最後の試合を勝利で飾れるか、そしてリーグ17試合を戦い抜いてきた成果を示せるか。2つの意味を持つ“ラストゲーム”となった。
渋谷は前節からスタメンを大きく入れ替え。ゴールキーパーには木村壮宏、右CBには志村滉、アンカーに累積警告で出場停止となっていた本田憲弥が復帰。両ウイングには青木竣と水野智大、そしてワントップにはキャプテンマークを巻いた渡邉千真が起用された。

前半が始まり、最終ラインの鈴木友也、坪川潤之から前線へボールが入り、ワントップに構えた渡邉千真が幾度も裏抜けするシーンが目立つ。両サイドからも積極的に仕掛け、9分には左サイドの青木がゴール前の渡邉へ、速いクロスを送り早々にゴールへ迫った。
試合が動いたのは前半19分。右サイドを崩した渋谷は、渡邉千真が落としたボールを受けた水野が逆サイドへクロス。最後はゴール前で待ち構えていた青木が右足一閃。冷静に放たれたシュートはゴール右上に突き刺さり、先制点を奪った。かつて3年半所属したジョイフル本田つくばFCのグラウンドで、今季待望の初ゴールを記録した。

1点をリードし、余裕を持ちながらパスワークで相手を揺さぶる渋谷。23分には坪川が球際の競り合いでイエローカードをもらい、相手にFKのチャンスを与えてしまうが、ここは木村が落ち着いて防ぐ。
追加点がほしい渋谷は33分、またしてもチャンスが訪れる。中盤での渡邉千真の落としを受けた土田が絶妙なスルーパスを通すと、青木が左サイドを突破。今度は左足でゴールネットを揺らし、この日2点目をマークした。

前半も残り5分となり、渋谷は得意のパスワークで試合を進める。46分には青木がファーサイドにいた渡邉千真へクロスを送り込むと、渡邉は得意のポストプレーで魅了する。3点目を狙いにいったが、追加点は奪えず前半終了。青木の2ゴールでリードを広げ、後半に折り返す。
後半が始まり、立ち上がりから追加点を狙いにいく渋谷。47分には、青木からのクロスに渡邉が華麗なトラップから左足でゴールを狙ったが、ここはキーパーに阻まれゴールにならず。渋谷はその直後にCKを獲得し、鈴木がミドルシュートで狙うも大きく枠を外れてしまうが、次々とチャンスを作り続ける。
51分には相手のカウンターからCKを与える場面もあったが、ここは集中した守備で跳ね返す。さらに53分にはドリブルで仕掛けた渡邉が中央でFKを獲得。キッカーの青木のボールに渡邉が合わせたが、惜しくも決めきれない。するとその直後、またしても相手のカウンターを浴びるも、ゴール前の1対1で木村が好セーブし、チームを救う。
58分、ここで渋谷は最初の交代カードを切る。青木に代わって吉永昇偉、水野に代えて小関陽星を投入し、両サイドのウイングを入れ替える。だが直後の60分には左サイドの低い位置で相手にFKのチャンスを与えてしまう。ゴール前に放たれたボールは相手のヘディングで流れ、なんとかピンチを逃れる。
試合は時間の経過とともにオープンな展開に。徐々にアグレッシブに攻め込む相手に対し、渋谷もスタイルを崩さずパスをつなぎ、素早いプレスバックで応戦する。すると渋谷は土田の縦パスから左サイドへ展開。ゴール前にいた渡邉がポストプレーで3点目を狙ったが、枠を捉えきれない。
そして78分、ここで渋谷は2枚替え。坪川に代わり河波櫻士、渡邉に代わり政森宗治を投入。現役ラストマッチを戦い抜いた渡邉がピッチを後にすると、両チーム、そして駆けつけた観客から祝福の拍手が送られた。
後半も終盤に差し掛かる渋谷は81分、再び交代カードを切る。土田に代わって楠美圭史を投入し、試合の流れを見極めながら最後の一手を打つ。
残り5分になり、試合を締めにかかる渋谷となんとか追いつきたい日立の攻防はさらに激しさを増す。88分にはペナルティエリア外の嫌な位置でFKを与えてしまうが、ここは志村の空中戦で跳ね返す。その直後にはカウンターから河波が鋭いミドルシュートを放つが、ゴールポストに跳ね返り追加点には至らず。
アディショナルタイムは4分。最後までチャンスを作り続け、右サイドで小関が相手を剥がしながらドリブルを仕掛け、植松がゴール前でフィニッシュまで持ち込もうとするが、スコアは動かない。
追加点を奪いたかったが、ここで試合終了のホイッスル。渋谷が2-0で勝利を収めた。
最終節の舞台で勝ち点3をもぎ取った渋谷。この勝利は確実にこれまでのリーグ戦の歩みを示す、大きな財産となった。そして現役最後の渡邉へ送られた、何よりもふさわしい花道となった。




















