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KICK OFF | 

9:00

赤羽スポーツの森公園競技場

SHIBUYA CITY FC

東京ユナイテッドFC

0
2

2026シーズン 関東サッカーリーグ1部

2026年4月4日

GAME RESULT

失点

49

min

選手交代

61

min

YOSEI OZEKI

NAOKI TSUCHIDA

IN

OFF

選手交代

70

min

GENYA HANDA

YUTAKA ITO

IN

OFF

選手交代

70

min

MAO HAMANA

RYO UEMATSU

IN

OFF

選手交代

70

min

YUI SHIKIDA

ASAHI YAMADE

IN

OFF

失点

91

min

​STARTING XI

FW

NAOKI TSUCHIDA

40

YUTAKA ITO

99

RYO UEMATSU

8

MF

HIKARU ISHIGAMI

66

KENYA HONDA

11

HIROTO OKOSHI

23

SHOI YOSHINAGA

36

DF

TOMOYA SUZUKI

12

ASAHI YAMADE

5

SHUSEI YAMAUCHI

30

GK

TAKUYA ATSUMI

1

GAME REPORT

SCFC ZINE


牙を向く王者に、覚悟の“ギラつき”を。支えられた一年を経て、「何か」を起こすために



「#2026 苦しんでいる人を支えられるような人でありたい」


昨年、J2・藤枝MYFCから加入した小関陽星が、昨年末に自身のInstagramの投稿でひっそり添えたこのハッシュタグ。


幼少期は、自らを「メッシより上手い」と本気で信じて疑わなかった。ピッチ上で魅せる巧みなボールタッチ、サイドから局面を切り開く感覚派のドリブラーの姿から「個」として勝負するイメージが強く根付いていたこともあってか、「周囲のために、誰かのために在ろう」とする意思が、その利他的な思いが、表れていたからだ。勝手な解釈かもしれないがそれが少し意外でもあり、何か「変化」があったのだと確信せざるを得なかった。


昨季を振り返っても、「何も考えてなかったなあ」とあっけらかんと言ってのけた選手だ。ハッシュタグの件についても似たような調子で返されることは覚悟していたのだが、反応は少し違った。照れくさそうに「あれは…」と、その真意を教えてくれた。


「それこそ去年は、マスさん(増嶋監督)を含め、コーチ陣、先輩、同期たちに支えられて生活のバランスを見つけられました。(植松)亮くんや(青木)竣くん、トキ(政森)くん、(鈴木)友也くん、ツッチーくん(土田)もそうですし、いろんな人が相談に乗ってくれたし、飯にも連れて行ってもらいました。


自分が苦しんだ時に先輩とかに支えられたからこそ、今年は2年目にもなるし“助ける側の人間”になりたいという思いを込めて、周りも見ながらやりたいなと思います」


チームを助けるプレー、仲間を救う一撃という意味でいえば、これまでも彼に助けられた場面は往々にしてあった。昨季は個人として4得点を挙げ、チーム内2位。関東リーグベストイレブンにも選出され、数字だけ見れば申し分ないシーズンだったと言っていい。


そんな功績を残しつつも、「(後期は)7勝1敗だっけ?8勝1敗だっけ?」とうろ覚えな様子からは、収めた結果にそこまで執着していることはなさそうだ。むしろ、飢えに飢えまくっている。


「正直、戦略的にも圧倒的な力を見せて勝たないといけない状況ではあったと思うので、『本当に成し遂げた』というよりは、『最低限の結果を出せたな』という気持ちの方が大きいですね」


ストイックで、負けず嫌いな小関らしい「最低限」という言い回し。チームとして高みを目指すことを前提に、個人としてもさらにステップアップしてやろう、そんな気概を感じさせるものがあったし、その瞬間を虎視眈々とうかがっているようにも見えた。



それだけに、前期の小関を思い返すと、思うように出場機会を得られず、もがき、苦しんでいた時期があった。まったく出場できなかったとしたら、ある意味では振り切れたのかもしれない。だが実際には、前期の平均出場時間は33分という数値が示すように、短時間での結果を求められる立場だった。


藤枝時代から「長い時間で出場した方が良さが出るタイプ」と語っていただけに、その難しさはなおさら大きかったのだろう。「(サッカーと)仕事をしながらの環境の変化が大きくて、めちゃくちゃ苦しくて、しんどくて。モヤモヤする時間が多かった」と振り返るように、自分の特長をどう出すか、周囲との差をどう埋めるのか。完全にフィットできないもどかしさと、日々格闘していた。


「やっぱり、Jと社会人でサッカーもまるっきり違えば、相手も全然違うので。(昨季は)J から来た選手が多かったけど、だからといって俺らが強いというわけでは全くなかった。まるっきり違うもんだというのは実際にやってみて感じたし、そこのギャップに対してどれだけ早く自分で感じ取れるか。上(のカテゴリー)から加入してきたというプライドとか関係なしに、泥臭く、ひたむきに、ギラついた気持ちを持ってやれるかが大事だなと感じました。


最初は自分の中でそれが少し足りなかったんだと思います。『まあ、俺ら強いっしょ』『勝って当たり前でしょ』みたいな気持ちは多少あったので。特に上から来た選手ほど、環境を含めてギャップは大きいと思います。毎年、新加入は上のカテゴリーから来ることが多いので、相手も含めてサッカーも環境も全部、そのギャップにどれだけ早く適応できるかが本当に大事だなと感じました」


上位カテゴリーから加入してきたという事実自体が武器になることはなく、むしろその経験や自負が「嫌なプライド」として、新しい環境での足かせになることもある。今の小関が口にする「泥臭く、ひたむきに、ギラついた気持ち」は、耳あたりのいい決意表明なんてものではなく、もがき苦しみ、ズレを知り、それでもなお乗り越えようとしたからこそ、出てきた言葉なのだとつくづく思わされる。


そんな「適応」の壁も、ひとたび乗り越えてしまえばなんの苦でもない。どこか放っておけない愛嬌と素直さから仲間の懐に飛び込み、助けを借りながらも自力で突破した先で、後期からは見間違えるような変化を見せた。


相手との間合いを読みながらテクニックでこじ開ける。そして実に、楽しそうに、晴れやかにプレーしていた。そこには「個」としての要素に、より強い「威勢」のようなものが宿っていた。言い換えれば、それこそが彼の言う「ギラつき」だったのだと思う。


こんな時に思い出すのは、昨年12月に増嶋竜也監督が小関についてこう語っていたことだ。


「僕は組織をぶち壊す性格が欲しいんです。組織の大枠は僕が作ります。でもその組織は守るけど、『ここからは俺の好きなようにやらせてくれ』っていうような突っ走る選手が欲しいんです。陽星ぐらいじゃないですか。ちょっとギラギラしていたのは」


組織の規律に従うだけの選手ではなく、その共通理解を踏まえたうえで、セオリーを超えた存在。その文脈で名前が小関の名前が挙がったのは、やはり彼のプレーが持つ鋭さや、あるいは突破力への期待の表れなのだろう。


小関が助けられたという「亮くん」こと先輩である植松亮も、昨季にこんな言葉を残していた。


「陽星は考えちゃうタイプ。考えすぎて(物事を)言えないタイプだから、それに気づかなかったら一生(悩みを)引き出せない。でも陽星は抱え込まないで伸び伸びプレーした方が、あいつの良さだと思っている」


プレースタイルはさることながら、その「前へ、前へ」というマインドを持つ選手に映るだけに、内側で抱え込み、言葉にできず滞る一面もある。だからこそなのか、周囲の支えが必要であったし、支えを受けて実直に変わってきたのだろう。



自身の特徴、そしてアイデンティティを踏まえたうえで、「別に最初(前期)からギラつきがなかったとかもない」とやや強気な前置きして、こう続けた。


「試合に出られなかったら悔しいし、目の前の相手にも負けたくない。そういうのはもう自然と出てくるものだから、それがなくなったら終わりだなと思っています。みんなそういった気持ちはある中で、それをどれだけ表現できるか。そのギラつきを自分はピッチで表現していきたいです」


山場は乗り越え、増嶋竜也監督のもとでの戦いにも順応し、「割とクリアな状態」で挑む今季。チームには新たに10名の選手が加わり、フレッシュな顔ぶれになった。カテゴリーが上がったならば、それに比例してトレーニングの強度も高まっている。だが、そんな理屈さえも吹き飛ばすかのように、仲間さえも食ってやろうとする空気がある。各々が切磋琢磨する環境のなかで、小関も負けじと自分を研ぎ澄ませているはずだ。


そんな彼が今季の大前提として挙げたのは、「チームが同じ方向に向かって戦うこと」、「自分のボールをしっかりとキープして味方にパスをつなげること」、「球際・切り替え・ハードワーク」。それらを「当たり前」と定義し、「その上で戦術がある」と続ける。明日から始まる、JFL昇格を懸けた、狭く険しい関東1部リーグを戦い抜くための必須条件だ。


早速、我々を試すかのごとく、開幕戦の相手は前回リーグ王者の東京ユナイテッドFC。昨季は「あと一歩」でJFLへの切符を逃し、先月末に行われた東京カップ(東京都社会人チャンピオンシップ)で4年ぶりの優勝を果たしただけに、仕上がりはともかく、勢いは十分だろう。そんな相手を凌駕し、自分たちの個性を発揮することは容易ではない。


この舞台に10年立ち続ける相手に対して、小関はひとつのエッセンスを教えてくれた。「チャレンジャー」として、「自分たちからアグレッシブに戦う」ために。


「やっぱり難しい時間も去年と比べたら絶対に増えると思います。そんな中で流れを変えられる、流れはともかく“雰囲気”すら変えられる選手やプレーが絶対に大事になってくると思うので、そのくらい、いい意味で“ぶっ飛んだ”プレーをしていきたいです」


その決意を象徴するように、こちらが問わずとも「最低7得点7アシスト」という具体的な数字を口にした。目標値の理由を聞けば、「何もないです。77番だし、7と7でちょうどいいかなって」と、どうやらそこまで深い理由はないようだが、闘志を見せつけながら、必要以上に自分を飾らない。気負いすぎず、けれど求める基準は下げない。


「良い時間帯は、みんな気持ちよくプレーできると思うんですけど、難しい時間帯でもチームを助けられる選手というか、『こいつは何かやってくれるんじゃないか』『こいつだったらなんとかしてくれるんじゃね?』と思わせる選手は必要だと思いますし、自分がそういった選手になれるようにいい準備をしたいです。


期待感がなくなったらつまらないし、『こいつがなんとかしてくれるんじゃねえか』『最後に点を取ってくれるんじゃねえか』といった期待感を持たれる選手でいたいですし、その期待に応えられるようなプレーをしたいです」



皆が覚悟するように、苦しくなる時間帯、苦しくなる一試合も、目を背けたくなるような瞬間は、きっと幾度も訪れるはずだ。それでも停滞した空気を一瞬で変え、王者の牙城を崩し、強引にでも「何か」を起こさせる選手がここにいる。


チームのため、仲間のため、そして自分自身のために。「陽星」の名の由来のごとく、昼は太陽、夜は星となって、どんな状況でも明るく照らし続ける。苦境に立たされた時にこそ、その輝きが本物であることを証明するはずだ。



取材・文 :西元 舞

写真   :福冨 倖希

編集   :畑間 直英




GAME REPORT


曇天の空の下で幕を開けた、関東サッカーリーグ1部第1節・東京ユナイテッドFC(以下、東京U)戦。会場には、この日を待ち望んでいた大勢のファン・サポーターが詰めかけた。


前回王者相手に、自分たちの力がどこまで通用するのかを測る重要な一戦であり、挑戦者として臆することなくアグレッシブに戦う姿勢も問われる90分でもあった。


注目のスターティングメンバーは、ゴールマウスに渥美拓也。最終ラインは、昨季の4バックから3バックへと布陣を変更し、長期離脱を経て約10カ月ぶりの完全復活を果たした山出旭が右の位置に入り、山内舟征、鈴木友也が並んだ。2ボランチには本田憲弥と石上輝。シャドーには土田直輝と植松亮を配置し、左ウイングに吉永昇偉、右ウイングに大越寛人、そして1トップには伊藤雄教が入った。


前半開始早々、渋谷にフリーキックのチャンスが訪れる。キッカーを務めた石上が精度の高いボールを送り、山出が合わせにいくが、シュートは右へ外れる。直後にも2度のコーナーキックを獲得し、得点にはつながらなかったものの、立ち上がりから相手ゴール前に迫り、幸先の良い入りとなった。


横殴りの雨風が吹きつける難しいコンディションの中、渋谷は風上を味方につけながら相手陣内で試合を進める。8分にはハーフライン付近で得たフリーキックから山出がゴール前に飛び込み、セットプレーから東京Uに圧力をかけていく。


対する東京Uは縦に速い攻撃で押し返し、渋谷は自陣に押し込まれる時間帯もあったが、大越の対人守備や鈴木の粘り強い対応で簡単には前進を許さない。吉永も前線からのプレスバックで強度を示し、守備から流れを引き戻していく。セカンドボールを拾った本田がミドルシュートを放つ場面もあり、徐々に自分たちでボールを動かす時間も増えていく。


前へつなぐ意識は見せながらも、雨足の影響もあってか1トップの伊藤の足元や背後にうまく収まらず。31分には植松がポケットを取ってファーサイドの吉永を狙い、34分には本田のインターセプトから吉永が逆サイドの大越へ大きく展開するなど、狙いのある形は作れているものの、決定機までわずかに届かない。


相手のカウンターやクロスに対しても落ち着いて対応し、致命的な場面は許さなかったが、ボールが滑りやすいコンディションで思うように再三の攻撃を仕掛けられず、スコアレスのまま前半を折り返す。


後半はさらに雨風が強まり、ピッチコンディションは厳しさを増した。渋谷は自陣から前進を試みるものの、向かい風の影響でゴールキックが思うように伸びず、クリアで押し返しても再び自陣にボールが戻ってくる展開が続く。前線の伊藤も複数人にマークをつかれ、簡単には起点を作れない。


そうした中で迎えた49分、渋谷は相手にフリーキックの流れからコーナーキックを与えると、そのボールが直接左隅へ入り、失点。後半の立ち上がりにビハインドを背負う展開となった。


先にスコアを動かされた渋谷だったが、直後には反撃の形を作る。伊藤が相手のポケットを取り、こぼれ球を植松が折り返しそこに吉永が飛び込んだが、あと一歩で合わせられない。59分にはフリーキックから石上が直接ゴールを狙うなど、セットプレーから同点の糸口を探る。


その後は相手の猛攻に渥美が好セーブや安定したキャッチで追加点は許さない。63分には土田に代えて小関陽星を投入し、さらに70分には敷田唯、濱名真央、半田ゲンヤを投入し3枚替えで流れを変えにいく。


時間の経過とともに雨脚はやや弱まり、左サイドでは濱名がドリブルで仕掛けを見せるなど、打開を狙う場面も出てくる。ワントップに吉永が入り、配置にも変化を加えながら前線に圧力をかけようとしたが、東京Uの守備対応を崩し切るまでには至らず、渋谷は思うように攻撃回数を増やせない。


終盤に入っても渋谷は相手のセットプレーをしのぎながら勝機を探ったが、アディショナルタイムに痛恨のPKを献上。これを冷静に決められ、0-2と突き放された。最後まで流れを引き戻したかったものの、後半は要所を締める東京Uに試合をコントロールされ、開幕戦は黒星スタートとなった。


それでも、立ち上がりから見せた形には確かな手応えもあった。セットプレーのキッカーとしてチャンスを演出し、攻守両面で存在感を示した石上は、「(前半は)相手コートではっきりしたプレーができていたし、そこでファウルを受けてセットプレーでチャンスを作れて、コーナーキックの本数も多かった。相手コートに押し込む展開はすごく良かった」と振り返る。


その一方で、「少し落ち着いてきた時間帯のところで一回正確にパスをつないだりとか、何気ないトラップを正確にするとか、個人的にもそうですけど、チームとしてももう少し落ち着いてできる時間帯はあった」と語り、流れを引き寄せるための精度と落ち着きに課題を挙げた。


次節は1週間後、エリース豊島FC戦。昨季の大怪我による離脱を経て、リーグ戦出場は約1年ぶりとなった伊藤も、「自分が点を決めるっていう気持ちを出しながら結果で示せれば次は勝利できるんじゃないかなと思うので、また頑張りたい」と前を向いた。開幕戦で突きつけられた現実をどう次につなげるか。その答えが、次の90分で問われる。

SCFC ZINE


牙を向く王者に、覚悟の“ギラつき”を。支えられた一年を経て、「何か」を起こすために



「#2026 苦しんでいる人を支えられるような人でありたい」


昨年、J2・藤枝MYFCから加入した小関陽星が、昨年末に自身のInstagramの投稿でひっそり添えたこのハッシュタグ。


幼少期は、自らを「メッシより上手い」と本気で信じて疑わなかった。ピッチ上で魅せる巧みなボールタッチ、サイドから局面を切り開く感覚派のドリブラーの姿から「個」として勝負するイメージが強く根付いていたこともあってか、「周囲のために、誰かのために在ろう」とする意思が、その利他的な思いが、表れていたからだ。勝手な解釈かもしれないがそれが少し意外でもあり、何か「変化」があったのだと確信せざるを得なかった。


昨季を振り返っても、「何も考えてなかったなあ」とあっけらかんと言ってのけた選手だ。ハッシュタグの件についても似たような調子で返されることは覚悟していたのだが、反応は少し違った。照れくさそうに「あれは…」と、その真意を教えてくれた。


「それこそ去年は、マスさん(増嶋監督)を含め、コーチ陣、先輩、同期たちに支えられて生活のバランスを見つけられました。(植松)亮くんや(青木)竣くん、トキ(政森)くん、(鈴木)友也くん、ツッチーくん(土田)もそうですし、いろんな人が相談に乗ってくれたし、飯にも連れて行ってもらいました。


自分が苦しんだ時に先輩とかに支えられたからこそ、今年は2年目にもなるし“助ける側の人間”になりたいという思いを込めて、周りも見ながらやりたいなと思います」


チームを助けるプレー、仲間を救う一撃という意味でいえば、これまでも彼に助けられた場面は往々にしてあった。昨季は個人として4得点を挙げ、チーム内2位。関東リーグベストイレブンにも選出され、数字だけ見れば申し分ないシーズンだったと言っていい。


そんな功績を残しつつも、「(後期は)7勝1敗だっけ?8勝1敗だっけ?」とうろ覚えな様子からは、収めた結果にそこまで執着していることはなさそうだ。むしろ、飢えに飢えまくっている。


「正直、戦略的にも圧倒的な力を見せて勝たないといけない状況ではあったと思うので、『本当に成し遂げた』というよりは、『最低限の結果を出せたな』という気持ちの方が大きいですね」


ストイックで、負けず嫌いな小関らしい「最低限」という言い回し。チームとして高みを目指すことを前提に、個人としてもさらにステップアップしてやろう、そんな気概を感じさせるものがあったし、その瞬間を虎視眈々とうかがっているようにも見えた。



それだけに、前期の小関を思い返すと、思うように出場機会を得られず、もがき、苦しんでいた時期があった。まったく出場できなかったとしたら、ある意味では振り切れたのかもしれない。だが実際には、前期の平均出場時間は33分という数値が示すように、短時間での結果を求められる立場だった。


藤枝時代から「長い時間で出場した方が良さが出るタイプ」と語っていただけに、その難しさはなおさら大きかったのだろう。「(サッカーと)仕事をしながらの環境の変化が大きくて、めちゃくちゃ苦しくて、しんどくて。モヤモヤする時間が多かった」と振り返るように、自分の特長をどう出すか、周囲との差をどう埋めるのか。完全にフィットできないもどかしさと、日々格闘していた。


「やっぱり、Jと社会人でサッカーもまるっきり違えば、相手も全然違うので。(昨季は)J から来た選手が多かったけど、だからといって俺らが強いというわけでは全くなかった。まるっきり違うもんだというのは実際にやってみて感じたし、そこのギャップに対してどれだけ早く自分で感じ取れるか。上(のカテゴリー)から加入してきたというプライドとか関係なしに、泥臭く、ひたむきに、ギラついた気持ちを持ってやれるかが大事だなと感じました。


最初は自分の中でそれが少し足りなかったんだと思います。『まあ、俺ら強いっしょ』『勝って当たり前でしょ』みたいな気持ちは多少あったので。特に上から来た選手ほど、環境を含めてギャップは大きいと思います。毎年、新加入は上のカテゴリーから来ることが多いので、相手も含めてサッカーも環境も全部、そのギャップにどれだけ早く適応できるかが本当に大事だなと感じました」


上位カテゴリーから加入してきたという事実自体が武器になることはなく、むしろその経験や自負が「嫌なプライド」として、新しい環境での足かせになることもある。今の小関が口にする「泥臭く、ひたむきに、ギラついた気持ち」は、耳あたりのいい決意表明なんてものではなく、もがき苦しみ、ズレを知り、それでもなお乗り越えようとしたからこそ、出てきた言葉なのだとつくづく思わされる。


そんな「適応」の壁も、ひとたび乗り越えてしまえばなんの苦でもない。どこか放っておけない愛嬌と素直さから仲間の懐に飛び込み、助けを借りながらも自力で突破した先で、後期からは見間違えるような変化を見せた。


相手との間合いを読みながらテクニックでこじ開ける。そして実に、楽しそうに、晴れやかにプレーしていた。そこには「個」としての要素に、より強い「威勢」のようなものが宿っていた。言い換えれば、それこそが彼の言う「ギラつき」だったのだと思う。


こんな時に思い出すのは、昨年12月に増嶋竜也監督が小関についてこう語っていたことだ。


「僕は組織をぶち壊す性格が欲しいんです。組織の大枠は僕が作ります。でもその組織は守るけど、『ここからは俺の好きなようにやらせてくれ』っていうような突っ走る選手が欲しいんです。陽星ぐらいじゃないですか。ちょっとギラギラしていたのは」


組織の規律に従うだけの選手ではなく、その共通理解を踏まえたうえで、セオリーを超えた存在。その文脈で名前が小関の名前が挙がったのは、やはり彼のプレーが持つ鋭さや、あるいは突破力への期待の表れなのだろう。


小関が助けられたという「亮くん」こと先輩である植松亮も、昨季にこんな言葉を残していた。


「陽星は考えちゃうタイプ。考えすぎて(物事を)言えないタイプだから、それに気づかなかったら一生(悩みを)引き出せない。でも陽星は抱え込まないで伸び伸びプレーした方が、あいつの良さだと思っている」


プレースタイルはさることながら、その「前へ、前へ」というマインドを持つ選手に映るだけに、内側で抱え込み、言葉にできず滞る一面もある。だからこそなのか、周囲の支えが必要であったし、支えを受けて実直に変わってきたのだろう。



自身の特徴、そしてアイデンティティを踏まえたうえで、「別に最初(前期)からギラつきがなかったとかもない」とやや強気な前置きして、こう続けた。


「試合に出られなかったら悔しいし、目の前の相手にも負けたくない。そういうのはもう自然と出てくるものだから、それがなくなったら終わりだなと思っています。みんなそういった気持ちはある中で、それをどれだけ表現できるか。そのギラつきを自分はピッチで表現していきたいです」


山場は乗り越え、増嶋竜也監督のもとでの戦いにも順応し、「割とクリアな状態」で挑む今季。チームには新たに10名の選手が加わり、フレッシュな顔ぶれになった。カテゴリーが上がったならば、それに比例してトレーニングの強度も高まっている。だが、そんな理屈さえも吹き飛ばすかのように、仲間さえも食ってやろうとする空気がある。各々が切磋琢磨する環境のなかで、小関も負けじと自分を研ぎ澄ませているはずだ。


そんな彼が今季の大前提として挙げたのは、「チームが同じ方向に向かって戦うこと」、「自分のボールをしっかりとキープして味方にパスをつなげること」、「球際・切り替え・ハードワーク」。それらを「当たり前」と定義し、「その上で戦術がある」と続ける。明日から始まる、JFL昇格を懸けた、狭く険しい関東1部リーグを戦い抜くための必須条件だ。


早速、我々を試すかのごとく、開幕戦の相手は前回リーグ王者の東京ユナイテッドFC。昨季は「あと一歩」でJFLへの切符を逃し、先月末に行われた東京カップ(東京都社会人チャンピオンシップ)で4年ぶりの優勝を果たしただけに、仕上がりはともかく、勢いは十分だろう。そんな相手を凌駕し、自分たちの個性を発揮することは容易ではない。


この舞台に10年立ち続ける相手に対して、小関はひとつのエッセンスを教えてくれた。「チャレンジャー」として、「自分たちからアグレッシブに戦う」ために。


「やっぱり難しい時間も去年と比べたら絶対に増えると思います。そんな中で流れを変えられる、流れはともかく“雰囲気”すら変えられる選手やプレーが絶対に大事になってくると思うので、そのくらい、いい意味で“ぶっ飛んだ”プレーをしていきたいです」


その決意を象徴するように、こちらが問わずとも「最低7得点7アシスト」という具体的な数字を口にした。目標値の理由を聞けば、「何もないです。77番だし、7と7でちょうどいいかなって」と、どうやらそこまで深い理由はないようだが、闘志を見せつけながら、必要以上に自分を飾らない。気負いすぎず、けれど求める基準は下げない。


「良い時間帯は、みんな気持ちよくプレーできると思うんですけど、難しい時間帯でもチームを助けられる選手というか、『こいつは何かやってくれるんじゃないか』『こいつだったらなんとかしてくれるんじゃね?』と思わせる選手は必要だと思いますし、自分がそういった選手になれるようにいい準備をしたいです。


期待感がなくなったらつまらないし、『こいつがなんとかしてくれるんじゃねえか』『最後に点を取ってくれるんじゃねえか』といった期待感を持たれる選手でいたいですし、その期待に応えられるようなプレーをしたいです」



皆が覚悟するように、苦しくなる時間帯、苦しくなる一試合も、目を背けたくなるような瞬間は、きっと幾度も訪れるはずだ。それでも停滞した空気を一瞬で変え、王者の牙城を崩し、強引にでも「何か」を起こさせる選手がここにいる。


チームのため、仲間のため、そして自分自身のために。「陽星」の名の由来のごとく、昼は太陽、夜は星となって、どんな状況でも明るく照らし続ける。苦境に立たされた時にこそ、その輝きが本物であることを証明するはずだ。



取材・文 :西元 舞

写真   :福冨 倖希

編集   :畑間 直英




GAME REPORT


曇天の空の下で幕を開けた、関東サッカーリーグ1部第1節・東京ユナイテッドFC(以下、東京U)戦。会場には、この日を待ち望んでいた大勢のファン・サポーターが詰めかけた。


前回王者相手に、自分たちの力がどこまで通用するのかを測る重要な一戦であり、挑戦者として臆することなくアグレッシブに戦う姿勢も問われる90分でもあった。


注目のスターティングメンバーは、ゴールマウスに渥美拓也。最終ラインは、昨季の4バックから3バックへと布陣を変更し、長期離脱を経て約10カ月ぶりの完全復活を果たした山出旭が右の位置に入り、山内舟征、鈴木友也が並んだ。2ボランチには本田憲弥と石上輝。シャドーには土田直輝と植松亮を配置し、左ウイングに吉永昇偉、右ウイングに大越寛人、そして1トップには伊藤雄教が入った。


前半開始早々、渋谷にフリーキックのチャンスが訪れる。キッカーを務めた石上が精度の高いボールを送り、山出が合わせにいくが、シュートは右へ外れる。直後にも2度のコーナーキックを獲得し、得点にはつながらなかったものの、立ち上がりから相手ゴール前に迫り、幸先の良い入りとなった。


横殴りの雨風が吹きつける難しいコンディションの中、渋谷は風上を味方につけながら相手陣内で試合を進める。8分にはハーフライン付近で得たフリーキックから山出がゴール前に飛び込み、セットプレーから東京Uに圧力をかけていく。


対する東京Uは縦に速い攻撃で押し返し、渋谷は自陣に押し込まれる時間帯もあったが、大越の対人守備や鈴木の粘り強い対応で簡単には前進を許さない。吉永も前線からのプレスバックで強度を示し、守備から流れを引き戻していく。セカンドボールを拾った本田がミドルシュートを放つ場面もあり、徐々に自分たちでボールを動かす時間も増えていく。


前へつなぐ意識は見せながらも、雨足の影響もあってか1トップの伊藤の足元や背後にうまく収まらず。31分には植松がポケットを取ってファーサイドの吉永を狙い、34分には本田のインターセプトから吉永が逆サイドの大越へ大きく展開するなど、狙いのある形は作れているものの、決定機までわずかに届かない。


相手のカウンターやクロスに対しても落ち着いて対応し、致命的な場面は許さなかったが、ボールが滑りやすいコンディションで思うように再三の攻撃を仕掛けられず、スコアレスのまま前半を折り返す。


後半はさらに雨風が強まり、ピッチコンディションは厳しさを増した。渋谷は自陣から前進を試みるものの、向かい風の影響でゴールキックが思うように伸びず、クリアで押し返しても再び自陣にボールが戻ってくる展開が続く。前線の伊藤も複数人にマークをつかれ、簡単には起点を作れない。


そうした中で迎えた49分、渋谷は相手にフリーキックの流れからコーナーキックを与えると、そのボールが直接左隅へ入り、失点。後半の立ち上がりにビハインドを背負う展開となった。


先にスコアを動かされた渋谷だったが、直後には反撃の形を作る。伊藤が相手のポケットを取り、こぼれ球を植松が折り返しそこに吉永が飛び込んだが、あと一歩で合わせられない。59分にはフリーキックから石上が直接ゴールを狙うなど、セットプレーから同点の糸口を探る。


その後は相手の猛攻に渥美が好セーブや安定したキャッチで追加点は許さない。63分には土田に代えて小関陽星を投入し、さらに70分には敷田唯、濱名真央、半田ゲンヤを投入し3枚替えで流れを変えにいく。


時間の経過とともに雨脚はやや弱まり、左サイドでは濱名がドリブルで仕掛けを見せるなど、打開を狙う場面も出てくる。ワントップに吉永が入り、配置にも変化を加えながら前線に圧力をかけようとしたが、東京Uの守備対応を崩し切るまでには至らず、渋谷は思うように攻撃回数を増やせない。


終盤に入っても渋谷は相手のセットプレーをしのぎながら勝機を探ったが、アディショナルタイムに痛恨のPKを献上。これを冷静に決められ、0-2と突き放された。最後まで流れを引き戻したかったものの、後半は要所を締める東京Uに試合をコントロールされ、開幕戦は黒星スタートとなった。


それでも、立ち上がりから見せた形には確かな手応えもあった。セットプレーのキッカーとしてチャンスを演出し、攻守両面で存在感を示した石上は、「(前半は)相手コートではっきりしたプレーができていたし、そこでファウルを受けてセットプレーでチャンスを作れて、コーナーキックの本数も多かった。相手コートに押し込む展開はすごく良かった」と振り返る。


その一方で、「少し落ち着いてきた時間帯のところで一回正確にパスをつないだりとか、何気ないトラップを正確にするとか、個人的にもそうですけど、チームとしてももう少し落ち着いてできる時間帯はあった」と語り、流れを引き寄せるための精度と落ち着きに課題を挙げた。


次節は1週間後、エリース豊島FC戦。昨季の大怪我による離脱を経て、リーグ戦出場は約1年ぶりとなった伊藤も、「自分が点を決めるっていう気持ちを出しながら結果で示せれば次は勝利できるんじゃないかなと思うので、また頑張りたい」と前を向いた。開幕戦で突きつけられた現実をどう次につなげるか。その答えが、次の90分で問われる。

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