
KICK OFF |
5:00
アミノバイタルフィールド


SHIBUYA CITY FC

東京23FC
0
0
2026シーズン 関東サッカーリーグ1部
2026年4月18日
GAME RESULT
GAME REPORT
SCFC ZINE
「上手くなった」自分を見てほしい。ホームで食らわせる、最大のリスペクト
まぐれだったとは言わせたくない。守備から攻撃へ、前へ前へとつないでくる攻撃の芽を完全に摘んでみせたエリース豊島FC戦。現実を突きつけられた開幕戦を経ただけにこの勝利は格別に嬉しく、渋谷がこの関東1部の舞台でも十分に戦えることを、今一度証明したい一戦がやってくる。
「チームのために」をモットーとする東京23FC(以下、東京23)を招き入れるわけだが、またしてもなんだか似たような相手との対戦である。球際の強さだとか、攻守の切り替えを重視するだとかそんなのは言うまでもなくて、そのうえで問われるのはどちらが高い水準で体現できるのか。ホームゲーム開幕戦にふさわしい熱量のぶつかり合いは皆が見たい光景であるし、そうなるに決まっている。
だからこそ、もうひとつ今一度強調しておきたいことがある。明日、半田ゲンヤが先陣を切って体現してくれるだろう。最後に差がつくのはやはり、「技術」だということを。
もう少しクリアに説明するために、半田の言葉を借りれば「技術的なところがプラスアルファで必要」なわけだ。たった2年、されど2年。「すごく成長させてもらったし、思い入れのあるチーム」でありながら、「あとは結果だけでした」と去った彼が言うのだから、きっと間違いない。

約4ヶ月前の未だ鮮度の落ちていない日々を懐かしむように「(渋谷と)比べるわけじゃないけど、(東京23は)もっと家族感があるというか、あたたかかった。町の人も、近くのパン屋さんのおばちゃんも仲良くて、サポーターの人たちもすごく熱い人が多くて。下町ならではのあたたかさがすごくあるチームだった」と優しい眼差しで「チームのために」戦っていたときのことを思い出してくれた。なくても成立するはずの「比べるわけじゃないけど」の一言があることによって妙な説得力があるが、そこに待ったをかけるように出てきた次の二文字が印象的だった。
「でもそこが自分自身には逆に“甘え”になっていたのかなって。気持ちでプレーすることはすごく大事やけど、結局そこだけでは乗り越えられなかった二年間だったから。『チームのために戦うこと』だけでは突破できないのが、関東リーグと全社(全国社会人サッカー大会)だったかなって思う。やっぱり最後は技術のところで、VONDS(市原FC)や(東京)ユナイテッド、南葛SCとかの上位陣には一個引けをとったというか、届かなかった。個人としても全体としても『気持ちで戦う』部分が全面に出ていて、それはチームカラーとしてはすごく良かったけど、技術的なところで何か一個足りなかった気がした。自分自身も結果として残る『数字』が出なくて、そこも気持ちだけじゃどうにもならなかったかな」
ことあるごとに、我々は「最後は気持ちだ」「みんなで一つになって」などのフレーズを使うし、実際それがあってこその勝利があるが、そこで立ち止まってはいけないということだろう。いくら「勝負を決定づける」ことが重要視されている渋谷であっても、肝に銘じておくべき話ではないか。この推測に半田も「そうだね」と頷きつつも、「渋谷は上手い選手が多いかな。東京23の時も上手い選手は何人かいたけど、渋谷の方が…いや、比べちゃあかんあかん(笑)けど、技術のある選手、それこそ選手層も厚いのかなって思う」と、関西人らしく自分ツッコミを入れながら教えてくれた。どうやら、必要以上に心配する段階ではなさそうだ。
だからこそなのか、渋谷に加入してますます強くなっている思いがある。ごくごくシンプルな欲求だが、二度や三度ではなく、今の今まで優先順位が確実に上がっているものがある。
「上手くなりたい」と。
東京23に加入して1年目。東京カップ準々決勝で奇しくも渋谷との一戦でデビューを飾り、ゴールまで奪ってみせた。しかし、シーズン半ば以降は同じポジションを争うライバルの台頭もあり、大学卒業後に加入した飛鳥FC時代と同じように、またもや定位置を失う苦境に立たされた。もっといえば、その現実は開幕戦の2日前にも突きつけられていた。
プレシーズンの練習試合で主力組としてプレーしていた半田が、開幕を前にしてその枠から突如として外れたのだ。スタメンの座をほぼ手中に収めていたはずだっただけに、「なんで俺じゃないねん」と反発したくなる気持ちを抑えながら、「うわ、俺開幕(先発で)出れへんのか」と動揺を悟られまいと平然を装ったが、心底悔しかった。もっとも、反対に湧き上がる感情があったのもまた事実だった。

「それがあったからこそ、在り方というか、渋谷に来た理由を思い出せた。『選手として上手くなりたい』というのが第一にあったけど、気持ちのどこかで『スタートで出たい』という思いが出てきてしまっていて。もちろん評価されるのも、監督が求めていることを体現するのも大事なことやけど、新加入で入ってきてフィットすることに必死になっていて、『求められていることを求められている通りにやる。そうしたら試合に出れる』という考え方にどこかでなっていた。『上手くなりたい』っていう、そもそもの根本的なところをすっ飛ばしていたのかなって思う。
…だから渋谷に来て『上手くなりたい』が強くなったかも。渋谷を選ぶ前に上のカテゴリーのチームの練習参加にも行ったけどなかなか(レベルが)届かなくて、『何か足りひん』って考えたら、やっぱり『上手さ』が足りひんかった。『じゃあ上手くならないといけない』と思って渋谷に入ったけど、それが2ヶ月できていなかったんやなっていうのが、開幕戦のタイミングで感じれたのがすごく良かった。(開幕戦で)なんとなくスタメンで出ていたら気づけへんことだったし、なんとなく試合に出ているだけで終わってたと思うから。『適応しなあかん』、『求められていることを求められている通りにやらなあかん』って思うのが、逆に上手くいっていかなかった気がする…(想像を)超えないと」
東京23時代にはつかみ切れなかった「結果」に今度こそ貪欲に手を伸ばすべく、「及第点を目指すんじゃなくて、『こんなこともできるんだ』のは『あんなこともできるんだ』って想像を超えるくらい」創造性に富んだプレーを追求している。「増嶋監督が求める右シャドーの選手像を目指していた自分」とは、決別しようとしているそのためでもある。
前節の半田が挙げた追加点に触れるならば、あれは「想像を超える」プレーの萌芽であり、ここまでの葛藤を踏まえればただの一得点ではないはず。主戦場とする右サイドでは非常に好感触だったようで、「“選び放題”だった」と表現した。その直後には「正直、調子良かった!」と飾らない本音ものぞかせたが、「でも『調子良かった』で止めたらあかんか。再現しないといけないから」と手応えに酔わないその姿勢は、実に頼もしい限りだ。

日に日に向上していく半田や用意周到なチームを見ていると、明日の勝率は高いと言い切れる。それだけの自信がある。開幕2連戦で白星を模索中の東京23と比べても、勢いは間違いなく渋谷のほうにあるだろう。しかし、その勢いに甘えて過信や油断をしていないのも、今の渋谷である。東京23には、昨季出場機会の少なかった選手たちが残っており、年齢層も若い。そうした選手たちの存在を、半田は注意すべきだと見ている。
「(残った選手たちは)『自分たちでやらなあかん』『俺が、俺が』ってなっているとは思うけど、大前提『チームのために』っていうのがサポーターも含めて絶対にある。だから強度も高くて、泥臭くて、俺は大好きやけど、それに対して負けるわけにはいかん。強度で圧倒するのはもちろん、そのうえで技術的なところがプラスアルファで必要だということを体現できたら一番良いかな。
お世話になった人たちには『頑張っていないな』『ちょっと変わったな』『なんかあいつ頑張らなくなったな』って思われるんじゃなくて、頑張るのはもちろん、『上手くなったな』って思われるようなプレーをしたい。今でも共通して言えることやけど、サポーターにも『もっと足振ってけよ!』って結構言われてたから(笑)どれだけ伸びたかわからんけど、そこの違いを見せたい」

今季、東京23の安田好隆監督が掲げる「勇敢でチャレンジに溢れるサッカー」は今に始まったものではなく、「『チームのために頑張ること、規律を守ること、走ること』。そういうところはやっぱり去年から全員で徹底していたから、そのメンバーが残っているのはすごく泥臭く戦えるチーム」だと相手のストロングに警戒を強める。
古巣の強みも、現状も誰よりも理解しているからこそ、自身がマークされる立場になることも当然想定のうちだ。「多分削られるやろうなあ。そこはガッツリ来ると思う。レガース4枚とアンクルガードつけていこうかなあ」と冗談かつ、半分本気で守りに入るのではなく、「上手くなった」自分を見せつけてやりたいと言わんばかりに、技巧的かつ大胆なサッカーを体現してほしい。
「みんなめっちゃ良いやつだから、思いっきり削ってくるとかはないと思うけど、だからこそ俺は結構来るだろうし、すごく楽しみかな。早くやりたいな。何が楽しみかって、人と会うのも楽しみやけど、古巣と対戦するのが人生で初。しかもめちゃくちゃお世話になってるチームだし、結果で恩返ししたいかな。かっこよく言えば(笑)」
「何回も言うように、めっちゃ大好きなチーム」と相まみえる喜びは、何物にも代えがたい。自分を育ててくれた場所だからこそ、「相手以上の熱量と運動量、球際とかの相手がストロングとしているところを、上から潰しにいくこと。ストロング以上のものをストロングとして体現したい」という思いこそが、最大の敬意なのだろう。
「敵になったからには100%以上の力を出せるように準備していかないといけないし、まずはやっぱり点を取りたいね。点を取って、ブーイングされたい。サポーターのこともめっちゃ好きだったし、熱いから、そのぶん当たりも強くなるかもしれないけど、それが一番かなって思います」

古巣のサポーターから浴びるざわめきは、半田がそれだけ厄介で脅威になった何よりの証しだ。明日の試合でスタジアムに響くのは、敵意を帯びたどよめきか、再会を喜ぶ歓声か、それとも新たな歓喜か。いずれにせよ、想像を超えるゴールで古巣をも沸かせてみせる。
取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希
編集 :畑間 直英
GAME REPORT
連勝を狙う渋谷と、今季初勝利を目指す東京23FC(以下、東京23)が激突した関東社会人リーグ第3節。日差しもあるなか曇天の空模様であったが、会場の熱量は十分で、関東リーグ1部での初ホームゲームにふさわしい空気がピッチを包んでいた。渋谷は前節と同じ11人を先発に送り込み、リザーブメンバーには青木竣が今季初めて名を連ねた。
立ち上がりから、東京23はハードワークと球際の強さを前面に押し出し、ロングスローを積極的に入れながらゴール前へ圧力をかけてくる。渋谷もそれに対して慌てることなく対応し、相手に流れを渡し切らない。6分にはこの日最初の決定機が早々に訪れる。吉永昇偉のサイドチェンジを受けた大越寛人が巧みに収めると、すかさずゴール前へクロス。これに伊藤雄教がヘディングで合わせたが、シュートはGKのセーブに阻まれた。
さらに22分には伊藤雄教が競り合いのなかでFKを獲得し、石上輝のキックにファーサイドで合わせたのは吉永。狙い通りの形でフリーになったが、ヘディングシュートはわずかにゴール右へ外れた。「あれを決めていれば本当に楽なゲームになって勝てたと思う」と振り返ったが、まさに拮抗した展開のなかで、この一撃が入っていれば、渋谷はかなり優位に試合を進められただろう。
前半は大きく蹴ってくる相手に少々翻弄されながらも、内容自体を大きく崩したわけではなく、ディフェンスラインは冷静に対応。渋谷はCKを4本獲得し、セットプレーの数では上回ったが、仕留め切れずスコアレスで前半を折り返した。
後半序盤には相手が2枚の交代を切るなかで、対する渋谷も62分にシャドーの植松亮と半田ゲンヤを下げて濱名真央、小関陽星を投入。さらに69分には伊藤、大越に代えて政森宗治、宮川瑞希を送り込み、先制点をモノにしようとする。
サイドから何本も精度の高いクロスを送り込む渋谷だが、東京23の高さのあるセンターバック陣にはね返される。73分には、相手のロングスローの攻撃からピンチを迎えたが、渥美拓也の間一髪のセーブで防ぐ。さらにそのこぼれ球をゴール前で石上が決死のクリアを見せ、あわや失点という場面を防いだ。
終盤に差し掛かり、試合を決定づけようと勝負に出る渋谷。81分には宮川の得意なカットインから強烈なミドルシュートを放つと、これは相手GKの好セーブに阻まれながらも、この日もっともゴールの気配を漂わせる場面となった。続けて3分後にも宮川のドリブル突破からファーサイドの吉永へボールが届くが、ここもあと一歩で合わせ切れない。
87分には吉永に代えて青木を投入し、渋谷は最後の交代カードを切る。アディショナルタイムに入ってからも攻勢は続き、45+2分にも宮川が再びカットインシュートまで持ち込んだが、これも左へ外れる。今季初出場でチャンスを幾度も創出したがゴールをこじ開けられず、試合は0-0でタイムアップ。
東京23の粘り強さやタフさに苦しめられながらも、試合全体を通して崩れることはなく、内容面では上回ったと言っていい。ただ、連勝を狙ったホームゲーム開幕戦だったことを思えば、勝利をサポーターに届けられなかったことへの悔しさが大いに残った。セットプレーの数も、押し込んだ時間も、決定機の質も、勝つための材料はそろっていたはず。
吉永は試合後、「攻めている中で一点を早めに取らないといけないチームにならないといけない。先制点を取れれば、相手が前がかりになったらうちは背後を狙ったりボールを握れると思う。やっぱり得点のところを、みんなで前半のコーナーキックで一点を取れるチームにならないといけない」と語り、勝ち切るための一点をどう奪うか、渋谷の完成度が試される。
次節は2週間後、5月2日に行われる流通経済大学ドラゴンズ龍ヶ崎戦。昨季の全国社会人サッカー大会準々決勝で対戦した相手とのリベンジマッチであり、吉永は「勢いを持つ学生に対して先制点を先に取れれば流れを持っていけると思う。絶対に勝たなければいけない試合になると思うし、勝利にこだわってやっていかないといけない」と表情を引き締めた。
ホーム開幕戦で勝ち切れなかったが、内容では相手を上回っていたと言っていいだろう。だからこそ、次に必要なものは言わずもがな、結果である。2週間と時間が空くなかで、どこまで修正を施し、それを次戦で発揮できるかが重要になる。
SCFC ZINE
「上手くなった」自分を見てほしい。ホームで食らわせる、最大のリスペクト
まぐれだったとは言わせたくない。守備から攻撃へ、前へ前へとつないでくる攻撃の芽を完全に摘んでみせたエリース豊島FC戦。現実を突きつけられた開幕戦を経ただけにこの勝利は格別に嬉しく、渋谷がこの関東1部の舞台でも十分に戦えることを、今一度証明したい一戦がやってくる。
「チームのために」をモットーとする東京23FC(以下、東京23)を招き入れるわけだが、またしてもなんだか似たような相手との対戦である。球際の強さだとか、攻守の切り替えを重視するだとかそんなのは言うまでもなくて、そのうえで問われるのはどちらが高い水準で体現できるのか。ホームゲーム開幕戦にふさわしい熱量のぶつかり合いは皆が見たい光景であるし、そうなるに決まっている。
だからこそ、もうひとつ今一度強調しておきたいことがある。明日、半田ゲンヤが先陣を切って体現してくれるだろう。最後に差がつくのはやはり、「技術」だということを。
もう少しクリアに説明するために、半田の言葉を借りれば「技術的なところがプラスアルファで必要」なわけだ。たった2年、されど2年。「すごく成長させてもらったし、思い入れのあるチーム」でありながら、「あとは結果だけでした」と去った彼が言うのだから、きっと間違いない。

約4ヶ月前の未だ鮮度の落ちていない日々を懐かしむように「(渋谷と)比べるわけじゃないけど、(東京23は)もっと家族感があるというか、あたたかかった。町の人も、近くのパン屋さんのおばちゃんも仲良くて、サポーターの人たちもすごく熱い人が多くて。下町ならではのあたたかさがすごくあるチームだった」と優しい眼差しで「チームのために」戦っていたときのことを思い出してくれた。なくても成立するはずの「比べるわけじゃないけど」の一言があることによって妙な説得力があるが、そこに待ったをかけるように出てきた次の二文字が印象的だった。
「でもそこが自分自身には逆に“甘え”になっていたのかなって。気持ちでプレーすることはすごく大事やけど、結局そこだけでは乗り越えられなかった二年間だったから。『チームのために戦うこと』だけでは突破できないのが、関東リーグと全社(全国社会人サッカー大会)だったかなって思う。やっぱり最後は技術のところで、VONDS(市原FC)や(東京)ユナイテッド、南葛SCとかの上位陣には一個引けをとったというか、届かなかった。個人としても全体としても『気持ちで戦う』部分が全面に出ていて、それはチームカラーとしてはすごく良かったけど、技術的なところで何か一個足りなかった気がした。自分自身も結果として残る『数字』が出なくて、そこも気持ちだけじゃどうにもならなかったかな」
ことあるごとに、我々は「最後は気持ちだ」「みんなで一つになって」などのフレーズを使うし、実際それがあってこその勝利があるが、そこで立ち止まってはいけないということだろう。いくら「勝負を決定づける」ことが重要視されている渋谷であっても、肝に銘じておくべき話ではないか。この推測に半田も「そうだね」と頷きつつも、「渋谷は上手い選手が多いかな。東京23の時も上手い選手は何人かいたけど、渋谷の方が…いや、比べちゃあかんあかん(笑)けど、技術のある選手、それこそ選手層も厚いのかなって思う」と、関西人らしく自分ツッコミを入れながら教えてくれた。どうやら、必要以上に心配する段階ではなさそうだ。
だからこそなのか、渋谷に加入してますます強くなっている思いがある。ごくごくシンプルな欲求だが、二度や三度ではなく、今の今まで優先順位が確実に上がっているものがある。
「上手くなりたい」と。
東京23に加入して1年目。東京カップ準々決勝で奇しくも渋谷との一戦でデビューを飾り、ゴールまで奪ってみせた。しかし、シーズン半ば以降は同じポジションを争うライバルの台頭もあり、大学卒業後に加入した飛鳥FC時代と同じように、またもや定位置を失う苦境に立たされた。もっといえば、その現実は開幕戦の2日前にも突きつけられていた。
プレシーズンの練習試合で主力組としてプレーしていた半田が、開幕を前にしてその枠から突如として外れたのだ。スタメンの座をほぼ手中に収めていたはずだっただけに、「なんで俺じゃないねん」と反発したくなる気持ちを抑えながら、「うわ、俺開幕(先発で)出れへんのか」と動揺を悟られまいと平然を装ったが、心底悔しかった。もっとも、反対に湧き上がる感情があったのもまた事実だった。

「それがあったからこそ、在り方というか、渋谷に来た理由を思い出せた。『選手として上手くなりたい』というのが第一にあったけど、気持ちのどこかで『スタートで出たい』という思いが出てきてしまっていて。もちろん評価されるのも、監督が求めていることを体現するのも大事なことやけど、新加入で入ってきてフィットすることに必死になっていて、『求められていることを求められている通りにやる。そうしたら試合に出れる』という考え方にどこかでなっていた。『上手くなりたい』っていう、そもそもの根本的なところをすっ飛ばしていたのかなって思う。
…だから渋谷に来て『上手くなりたい』が強くなったかも。渋谷を選ぶ前に上のカテゴリーのチームの練習参加にも行ったけどなかなか(レベルが)届かなくて、『何か足りひん』って考えたら、やっぱり『上手さ』が足りひんかった。『じゃあ上手くならないといけない』と思って渋谷に入ったけど、それが2ヶ月できていなかったんやなっていうのが、開幕戦のタイミングで感じれたのがすごく良かった。(開幕戦で)なんとなくスタメンで出ていたら気づけへんことだったし、なんとなく試合に出ているだけで終わってたと思うから。『適応しなあかん』、『求められていることを求められている通りにやらなあかん』って思うのが、逆に上手くいっていかなかった気がする…(想像を)超えないと」
東京23時代にはつかみ切れなかった「結果」に今度こそ貪欲に手を伸ばすべく、「及第点を目指すんじゃなくて、『こんなこともできるんだ』のは『あんなこともできるんだ』って想像を超えるくらい」創造性に富んだプレーを追求している。「増嶋監督が求める右シャドーの選手像を目指していた自分」とは、決別しようとしているそのためでもある。
前節の半田が挙げた追加点に触れるならば、あれは「想像を超える」プレーの萌芽であり、ここまでの葛藤を踏まえればただの一得点ではないはず。主戦場とする右サイドでは非常に好感触だったようで、「“選び放題”だった」と表現した。その直後には「正直、調子良かった!」と飾らない本音ものぞかせたが、「でも『調子良かった』で止めたらあかんか。再現しないといけないから」と手応えに酔わないその姿勢は、実に頼もしい限りだ。

日に日に向上していく半田や用意周到なチームを見ていると、明日の勝率は高いと言い切れる。それだけの自信がある。開幕2連戦で白星を模索中の東京23と比べても、勢いは間違いなく渋谷のほうにあるだろう。しかし、その勢いに甘えて過信や油断をしていないのも、今の渋谷である。東京23には、昨季出場機会の少なかった選手たちが残っており、年齢層も若い。そうした選手たちの存在を、半田は注意すべきだと見ている。
「(残った選手たちは)『自分たちでやらなあかん』『俺が、俺が』ってなっているとは思うけど、大前提『チームのために』っていうのがサポーターも含めて絶対にある。だから強度も高くて、泥臭くて、俺は大好きやけど、それに対して負けるわけにはいかん。強度で圧倒するのはもちろん、そのうえで技術的なところがプラスアルファで必要だということを体現できたら一番良いかな。
お世話になった人たちには『頑張っていないな』『ちょっと変わったな』『なんかあいつ頑張らなくなったな』って思われるんじゃなくて、頑張るのはもちろん、『上手くなったな』って思われるようなプレーをしたい。今でも共通して言えることやけど、サポーターにも『もっと足振ってけよ!』って結構言われてたから(笑)どれだけ伸びたかわからんけど、そこの違いを見せたい」

今季、東京23の安田好隆監督が掲げる「勇敢でチャレンジに溢れるサッカー」は今に始まったものではなく、「『チームのために頑張ること、規律を守ること、走ること』。そういうところはやっぱり去年から全員で徹底していたから、そのメンバーが残っているのはすごく泥臭く戦えるチーム」だと相手のストロングに警戒を強める。
古巣の強みも、現状も誰よりも理解しているからこそ、自身がマークされる立場になることも当然想定のうちだ。「多分削られるやろうなあ。そこはガッツリ来ると思う。レガース4枚とアンクルガードつけていこうかなあ」と冗談かつ、半分本気で守りに入るのではなく、「上手くなった」自分を見せつけてやりたいと言わんばかりに、技巧的かつ大胆なサッカーを体現してほしい。
「みんなめっちゃ良いやつだから、思いっきり削ってくるとかはないと思うけど、だからこそ俺は結構来るだろうし、すごく楽しみかな。早くやりたいな。何が楽しみかって、人と会うのも楽しみやけど、古巣と対戦するのが人生で初。しかもめちゃくちゃお世話になってるチームだし、結果で恩返ししたいかな。かっこよく言えば(笑)」
「何回も言うように、めっちゃ大好きなチーム」と相まみえる喜びは、何物にも代えがたい。自分を育ててくれた場所だからこそ、「相手以上の熱量と運動量、球際とかの相手がストロングとしているところを、上から潰しにいくこと。ストロング以上のものをストロングとして体現したい」という思いこそが、最大の敬意なのだろう。
「敵になったからには100%以上の力を出せるように準備していかないといけないし、まずはやっぱり点を取りたいね。点を取って、ブーイングされたい。サポーターのこともめっちゃ好きだったし、熱いから、そのぶん当たりも強くなるかもしれないけど、それが一番かなって思います」

古巣のサポーターから浴びるざわめきは、半田がそれだけ厄介で脅威になった何よりの証しだ。明日の試合でスタジアムに響くのは、敵意を帯びたどよめきか、再会を喜ぶ歓声か、それとも新たな歓喜か。いずれにせよ、想像を超えるゴールで古巣をも沸かせてみせる。
取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希
編集 :畑間 直英
GAME REPORT
連勝を狙う渋谷と、今季初勝利を目指す東京23FC(以下、東京23)が激突した関東社会人リーグ第3節。日差しもあるなか曇天の空模様であったが、会場の熱量は十分で、関東リーグ1部での初ホームゲームにふさわしい空気がピッチを包んでいた。渋谷は前節と同じ11人を先発に送り込み、リザーブメンバーには青木竣が今季初めて名を連ねた。
立ち上がりから、東京23はハードワークと球際の強さを前面に押し出し、ロングスローを積極的に入れながらゴール前へ圧力をかけてくる。渋谷もそれに対して慌てることなく対応し、相手に流れを渡し切らない。6分にはこの日最初の決定機が早々に訪れる。吉永昇偉のサイドチェンジを受けた大越寛人が巧みに収めると、すかさずゴール前へクロス。これに伊藤雄教がヘディングで合わせたが、シュートはGKのセーブに阻まれた。
さらに22分には伊藤雄教が競り合いのなかでFKを獲得し、石上輝のキックにファーサイドで合わせたのは吉永。狙い通りの形でフリーになったが、ヘディングシュートはわずかにゴール右へ外れた。「あれを決めていれば本当に楽なゲームになって勝てたと思う」と振り返ったが、まさに拮抗した展開のなかで、この一撃が入っていれば、渋谷はかなり優位に試合を進められただろう。
前半は大きく蹴ってくる相手に少々翻弄されながらも、内容自体を大きく崩したわけではなく、ディフェンスラインは冷静に対応。渋谷はCKを4本獲得し、セットプレーの数では上回ったが、仕留め切れずスコアレスで前半を折り返した。
後半序盤には相手が2枚の交代を切るなかで、対する渋谷も62分にシャドーの植松亮と半田ゲンヤを下げて濱名真央、小関陽星を投入。さらに69分には伊藤、大越に代えて政森宗治、宮川瑞希を送り込み、先制点をモノにしようとする。
サイドから何本も精度の高いクロスを送り込む渋谷だが、東京23の高さのあるセンターバック陣にはね返される。73分には、相手のロングスローの攻撃からピンチを迎えたが、渥美拓也の間一髪のセーブで防ぐ。さらにそのこぼれ球をゴール前で石上が決死のクリアを見せ、あわや失点という場面を防いだ。
終盤に差し掛かり、試合を決定づけようと勝負に出る渋谷。81分には宮川の得意なカットインから強烈なミドルシュートを放つと、これは相手GKの好セーブに阻まれながらも、この日もっともゴールの気配を漂わせる場面となった。続けて3分後にも宮川のドリブル突破からファーサイドの吉永へボールが届くが、ここもあと一歩で合わせ切れない。
87分には吉永に代えて青木を投入し、渋谷は最後の交代カードを切る。アディショナルタイムに入ってからも攻勢は続き、45+2分にも宮川が再びカットインシュートまで持ち込んだが、これも左へ外れる。今季初出場でチャンスを幾度も創出したがゴールをこじ開けられず、試合は0-0でタイムアップ。
東京23の粘り強さやタフさに苦しめられながらも、試合全体を通して崩れることはなく、内容面では上回ったと言っていい。ただ、連勝を狙ったホームゲーム開幕戦だったことを思えば、勝利をサポーターに届けられなかったことへの悔しさが大いに残った。セットプレーの数も、押し込んだ時間も、決定機の質も、勝つための材料はそろっていたはず。
吉永は試合後、「攻めている中で一点を早めに取らないといけないチームにならないといけない。先制点を取れれば、相手が前がかりになったらうちは背後を狙ったりボールを握れると思う。やっぱり得点のところを、みんなで前半のコーナーキックで一点を取れるチームにならないといけない」と語り、勝ち切るための一点をどう奪うか、渋谷の完成度が試される。
次節は2週間後、5月2日に行われる流通経済大学ドラゴンズ龍ヶ崎戦。昨季の全国社会人サッカー大会準々決勝で対戦した相手とのリベンジマッチであり、吉永は「勢いを持つ学生に対して先制点を先に取れれば流れを持っていけると思う。絶対に勝たなければいけない試合になると思うし、勝利にこだわってやっていかないといけない」と表情を引き締めた。
ホーム開幕戦で勝ち切れなかったが、内容では相手を上回っていたと言っていいだろう。だからこそ、次に必要なものは言わずもがな、結果である。2週間と時間が空くなかで、どこまで修正を施し、それを次戦で発揮できるかが重要になる。

















