
KICK OFF |
5:00
AGFフィールド


SHIBUYA CITY FC

南葛SC
0
1
2026シーズン 関東サッカーリーグ1部
2026年5月17日
GAME RESULT
GAME REPORT
SCFC ZINE
未知なる自分をお披露目する挑戦の舞台。「魂を見せる」不屈のチャレンジャー
上位争いという観点で見れば、明日の南葛SC戦は、渋谷にとってリーグ前期中盤戦の立ち位置を知る重要な一戦になる。開幕戦では昨季王者の東京ユナイテッドFCに敗れたものの、第2節でエリース豊島FCを下して今季初白星を奪取。続く第3節の東京23FC戦は、攻め込まれながらも最後の一押しを欠き、スコアレスドローに終わった。勝ちきれなかった悔しさを残したが、前節の流通経済大学ドラゴンズ龍ケ崎戦では攻守で主導権を握り、6−0で快勝。得失点差を大きく伸ばし、4試合を終えて2勝1分1敗、勝点7。首位と勝点1差につける中で、ここから上位戦線に踏みとどまれるか否かが問われる。
対する南葛は、ここまで2勝2分の無敗で2位。第3節の日本大学N.戦を2−0で下し、前節は首位・東邦チタニウムとの直接対決では、敵地で勝点1を持ち帰った(1−1)。4試合で失点はわずか2。昨季は全国社会人サッカー選手権大会でベスト8まで進み、JFL昇格を狙うクラブとしての地力を見せた。今季も守備の安定感を土台に、試合の流れを手放さないしたたかさを備えている。
渋谷にとっては、前節の大勝で得た勢いを一過性のものにせず、強度と完成度を備えた相手にどこまで通用できるかが焦点となる。昨季まで「チャレンジャー」として対峙してきた南葛と、今度は同じ関東1部の上位争いで激突する。勝てば順位表の中で、大きく前へ出る、重要な分岐点だ。
そして南葛は、なかでもDF山出旭にとって特別な記憶を呼び起こす相手だ。2024年6月の全国社会人サッカー大会関東予選準決勝。当時東京都1部リーグ所属の渋谷は、関東1部の南葛SCを3−1で撃破した。単なるジャイアントキリングではなく、同年3月の東京都社会人チャンピオンシップ 2次戦準決勝で、PK戦の末に屈した相手への雪辱を果たす勝利だった。
その一戦で、勝負を決定づける3点目を奪った山出。大学時代の同期である鈴木友也のクロスに右足で応えてみせると、ゴール直後には一直線にピッチサイドのファン・サポーターのもとへ駆け寄った。
「前の週のFC CASA戦(1回戦)ではメンバーから外れていて、外から試合を見ていて。あの日はすごく雨が降っていて、屋根もなかったから足元もびしょびしょ。でも、そんなのは見に来ている人も同じで、その中でも声を出して応援してくれていた光景を俺は真隣で見ていた。(自分が)点を取った時に距離が近かったっていうのもあるけど、そういうのが重なったから、思わず(駆け寄った)」

カテゴリーが上がるにつれて、試合会場はスタジアム開催が増え、ピッチと観客の距離も少しづつ広がっていく。だからこそ、あの日の一撃は格別なものだったに違いない。強豪を沈める3点目であると同時に、悔しさを抱えていた自身と、支え続けるファン・サポーターたちが報われた瞬間でもあった。
あれから約2年。昨年10節・日立ビルシステム戦で負った左膝前十字靭帯損傷・外側半月板損傷による長期離脱を経験し、今季、再び公式戦のピッチへ戻ってきた。復帰はひとつの区切りにすぎない。いま向き合っているのは、コンディションを取り戻すことの先にある、以前とは異なる自分をどう表現するかという挑戦である。
今季はここまで4試合すべてで先発出場を記録し、開幕戦を除く3試合でフル出場。チーム状態が上向く中で、山出自身もまた確かな変化を見せている。長い離脱期間を忘れさせるほどの迫力と気迫に加え、心なしか身体も一回り大きくなった。その姿は、地道に取り組んできたリハビリと鍛錬のたまものだろう。日々の競争の中で、「唯一無二」の存在になろうと研鑽を積んでいる。
高さを生かした空中戦、球際で体を張る強度に加え、山出自身が今季から意識しているのが、攻撃参加だ。最近では攻撃陣に交じってコンビネーションの練習に加わるなど、攻撃に関わる選択肢とバリエーションをもっと増やしたいという思いを明かした。「今までこんなに攻撃に関わりにいくことはなかった」と語るように、新たな挑戦の連続だ。
「難しいというか、やっぱりイメージと実際のプレーが噛み合っていない。ミスした時や嚙み合っていないときってその場でわかるし、攻撃の流れを止めないようにしたい。あと俺は技術が高いわけじゃないから、決められたところにボールを出すって簡単じゃない。今までよりもっとこだわっていかなきゃいけない。
やっぱり(後藤田)亘輝とかすごく上手だなって思う。逆足で(クロスを)上げている(宮川)瑞希とかも本当にすごい。みんなすごいよ、リスペクトしている」
質の高いボールを届けること。そして前線との呼吸に合わせること。両方の難しさと戦いながらも、その試行錯誤を前向きに捉えている。攻撃の局面にも踏み込み、チームを押し上げる姿勢は、南葛戦で自らゴール前へ飛び込んだあの日のプレーとも地続きにあるのではないだろうか。

一方で、攻撃に出る分だけ背後のスペース管理や帰陣後の判断はより重要になる。1対1の局面で潰しにいくことは武器でありながら、「攻撃と守備のバランスがまだまだ」と頭を悩ませている。その境界にある「紙一重のライン」を見極める挑戦の只中にいる。
「守備のチャレンジもそうだし、攻撃のチャレンジもそうだし、新しいことにチャレンジしていくのがすごく楽しいから。もちろん全部が上手くいかないし、練習でも試合でも課題が出て『うわー』ってなることもあるけど、それが成功したときの喜びの方が大きい。なんなら、それが忘れられないし。試合で勝つ時も一緒。キツいトレーニングを毎日していても、試合に勝った瞬間に代えられるものって、今の人生で見つからないから。だから『またやろう』って思える」
精度の高いパスワークで内側を突いてくる南葛は、その現在地を測るには格好の相手だろう。守備では最も危険なコースを消し、攻撃ではためらわず前へ出る。山出がいま取り組む「攻撃も守備もどっちも挑む」というテーマが、これほど鮮明に問われる相手も多くない。
明日のAGFフィールドで迎えるアウェイ戦に向けて、「マジで負けたくない。どこの相手に対してもそうだけど、世間体を見てもチャレンジャーになるから、全部で勝ちてえ」と、自身の「チャレンジ」を披露してみせる。
「ちょうど練習前のミーティングで、マスさん(増嶋監督)が言ったんだよ。『サッカーをやっている目的をもう一度考えてほしい』って。俺はその目的が明確にあって、去年のEDO戦のときくん(政森宗治)が決めたゴールで、すごく心を動かされてリハビリを頑張ろうと思えたんだよね。そんな風に少しでも大きい舞台で、多くの人に『自分も頑張ろう』って思ってもらえるエネルギーを与えられるような選手になりたいし、生きている活力になりたい。そのために自分ができることって、もうわかってる。
だから、俺の理想の選手像である『来てよかった』『また見たい』『また明日から頑張ろう』って思わせられるプレーをしたいし、“魂”を震わせられる試合にしたい。もちろん、上手いプレーもすげえと思うけど、ガムシャラに泥臭く頑張っている姿を見せて、見に来てくれた人みんなと喜びたいし、また“あの瞬間”を味わえるように頑張ります」

関東1部の上位争いの中で南葛とぶつかり、山出もまた、離脱を経てたどり着いた現在地を示す。かつて勝利を決定づけた一歩を、今度はより逞しく、より成熟したプレーで刻めるか。
守備でも、攻撃でも、そして何よりその姿勢で。見る者の心を動かす“チャレンジャー”が、再び渋谷の力になることを証明してみせる。
取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希
編集 :畑間 直英
GAME REPORT
現在3位の渋谷と2位の南葛SCが対戦した関東サッカーリーグ1部第5節。上位争いの行方を占う一戦は、互いに強度高く入りながらも、攻守にわたって圧倒した南葛が後半13分に決勝点を奪い、渋谷は0−1で敗れた。
渋谷の先発は前節から2名変更。GKには積田景介、右ウイングには後藤田亘輝が入り、ともに今季初先発を飾った。なかでも今季FC琉球から期限付きで移籍してきた後藤田にとっては、公式戦でのスタメン出場が約1年ぶり。「コンディションを上げてきていたので、やっぱり勝ちたかったし、何か爪痕を残したかった」と待ち続けた出番だっただけに、悔しさは大きかった。

立ち上がりから南葛は、巧みなパス交換とサイドへの展開を織り交ぜながら、渋谷陣地に押し込む。相手のボール保持の時間が長くなる中、渋谷が今週のコンセプトとして掲げていた「攻めの守備」で応戦。前線からプレッシングをかけ、相手のビルドアップを阻もうと試みたものの、それがかえって相手の思うツボとなり、「自分たちもプレッシングをかけたけど、奪った後のパスが引っ掛けられた」と後藤田。それでも前半は一定の手応えもあり、前半24分には中盤でルーズボールに先に反応した後藤田が自ら前へ運び、迷わずミドルシュートを放つ。続く26分には、石上輝からの縦パスをゴール前で引き出し、宮川瑞希の決定機につなげた。守備から攻撃へ移る局面で、前進のきっかけをもたらした。

一方で、チーム全体としては奪った後の精度に欠けた。ボール奪取後の一手で遅れを取り、切り替えのスピードが武器の南葛に押し返される。流れを自分たちへ引き寄せきれず、前半を0−0で終えた。
後半も南葛は、両サイドを使い分けながら渋谷の守備網を揺さぶる。内に入ればすかさずシュートまで持ち込まれ、耐える時間となった。GK積田の好セーブで持ちこたえる場面もあったが、58分には南葛のロングカウンターから渋谷の左サイドを突かれる。速いクロスからピンポイントでゴール前で合わせられ、ついに均衡を破られた。流れの中から崩されて喫した失点は、この試合が今季初だった。
このシーンについて後藤田は、「はっきり覚えていないけれど、そういう隙というか、一本を仕留める能力が(相手の方が)勝っていたのかなと思う」と振り返る。さらに積田は「切り替えのところでふわっとなってしまった。強いチームはあそこの隙を逃してくれない。全体としては良かったけれど、一瞬の隙で結果がこうなってしまった」と唇を噛んだ。上位対決の勝敗を分けたのは、試合全体の支配率以上に、局面での質と決定力だった。
失点後、渋谷は政森宗治と伊藤雄教を投入し、前線を2トップに変え、1点を追いかける。対する南葛は後半にわたり負傷する選手が出てきたものの、変わらず攻守の切り替えが速く、最終ラインもコンパクトさを保ったまま対応。渋谷は最前線へボールを届けたい時間帯で思うように前進できず、背後を狙う場面も幾度もオフサイドに阻まれた。終盤には右サイドの小関陽星から大越寛人へ大きく展開する形もあったが、ゴールをこじ開けるには至らなかった。
試合後、後藤田は敗因を個の力にも求めた。
「まずは個人のところで負けなかったら相手に上回られることはないし、一人ひとりのスキルをもっともっと上げていかなきゃいけない。こういうゲームは誰か一人が(相手を)かわしたり、一個外したりしないと局面は変わらない。そういうところを自分自身がこれから取り組んでいきたい」
練習での強度に自負を持ち、チームの調子に比例してコンディションを高めてきたという背番号37。約1年ぶりの先発で勝利という結果を残せなかったが、アシストだけでなく得点への飽くなき意欲と持ち味でもあるアジリティは、停滞しかけた流れの中で光るものがあった。

次節は約2週間後だが、敗戦を引きずる時間はない。5月30日(土)アミノバイタルフィールドで、現在5位(5月17日時点)のEDO ALL UNITEDを迎える。昨季、優勝争いの中で苦杯と歓喜を味わった因縁の相手とのプライドを懸けた一戦だ。
「クラブとしてはEDOはライバルというイメージがある。自分自身は対戦したことがないけれど、クラブの想いを背負って絶対に勝利できるように臨んでいきたい」
渋谷が再び前へ進むためにも、上位対決で突きつけられた「局面を変える力」という課題を、次こそは証明したい。
取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希
編集 :畑間 直英
SCFC ZINE
未知なる自分をお披露目する挑戦の舞台。「魂を見せる」不屈のチャレンジャー
上位争いという観点で見れば、明日の南葛SC戦は、渋谷にとってリーグ前期中盤戦の立ち位置を知る重要な一戦になる。開幕戦では昨季王者の東京ユナイテッドFCに敗れたものの、第2節でエリース豊島FCを下して今季初白星を奪取。続く第3節の東京23FC戦は、攻め込まれながらも最後の一押しを欠き、スコアレスドローに終わった。勝ちきれなかった悔しさを残したが、前節の流通経済大学ドラゴンズ龍ケ崎戦では攻守で主導権を握り、6−0で快勝。得失点差を大きく伸ばし、4試合を終えて2勝1分1敗、勝点7。首位と勝点1差につける中で、ここから上位戦線に踏みとどまれるか否かが問われる。
対する南葛は、ここまで2勝2分の無敗で2位。第3節の日本大学N.戦を2−0で下し、前節は首位・東邦チタニウムとの直接対決では、敵地で勝点1を持ち帰った(1−1)。4試合で失点はわずか2。昨季は全国社会人サッカー選手権大会でベスト8まで進み、JFL昇格を狙うクラブとしての地力を見せた。今季も守備の安定感を土台に、試合の流れを手放さないしたたかさを備えている。
渋谷にとっては、前節の大勝で得た勢いを一過性のものにせず、強度と完成度を備えた相手にどこまで通用できるかが焦点となる。昨季まで「チャレンジャー」として対峙してきた南葛と、今度は同じ関東1部の上位争いで激突する。勝てば順位表の中で、大きく前へ出る、重要な分岐点だ。
そして南葛は、なかでもDF山出旭にとって特別な記憶を呼び起こす相手だ。2024年6月の全国社会人サッカー大会関東予選準決勝。当時東京都1部リーグ所属の渋谷は、関東1部の南葛SCを3−1で撃破した。単なるジャイアントキリングではなく、同年3月の東京都社会人チャンピオンシップ 2次戦準決勝で、PK戦の末に屈した相手への雪辱を果たす勝利だった。
その一戦で、勝負を決定づける3点目を奪った山出。大学時代の同期である鈴木友也のクロスに右足で応えてみせると、ゴール直後には一直線にピッチサイドのファン・サポーターのもとへ駆け寄った。
「前の週のFC CASA戦(1回戦)ではメンバーから外れていて、外から試合を見ていて。あの日はすごく雨が降っていて、屋根もなかったから足元もびしょびしょ。でも、そんなのは見に来ている人も同じで、その中でも声を出して応援してくれていた光景を俺は真隣で見ていた。(自分が)点を取った時に距離が近かったっていうのもあるけど、そういうのが重なったから、思わず(駆け寄った)」

カテゴリーが上がるにつれて、試合会場はスタジアム開催が増え、ピッチと観客の距離も少しづつ広がっていく。だからこそ、あの日の一撃は格別なものだったに違いない。強豪を沈める3点目であると同時に、悔しさを抱えていた自身と、支え続けるファン・サポーターたちが報われた瞬間でもあった。
あれから約2年。昨年10節・日立ビルシステム戦で負った左膝前十字靭帯損傷・外側半月板損傷による長期離脱を経験し、今季、再び公式戦のピッチへ戻ってきた。復帰はひとつの区切りにすぎない。いま向き合っているのは、コンディションを取り戻すことの先にある、以前とは異なる自分をどう表現するかという挑戦である。
今季はここまで4試合すべてで先発出場を記録し、開幕戦を除く3試合でフル出場。チーム状態が上向く中で、山出自身もまた確かな変化を見せている。長い離脱期間を忘れさせるほどの迫力と気迫に加え、心なしか身体も一回り大きくなった。その姿は、地道に取り組んできたリハビリと鍛錬のたまものだろう。日々の競争の中で、「唯一無二」の存在になろうと研鑽を積んでいる。
高さを生かした空中戦、球際で体を張る強度に加え、山出自身が今季から意識しているのが、攻撃参加だ。最近では攻撃陣に交じってコンビネーションの練習に加わるなど、攻撃に関わる選択肢とバリエーションをもっと増やしたいという思いを明かした。「今までこんなに攻撃に関わりにいくことはなかった」と語るように、新たな挑戦の連続だ。
「難しいというか、やっぱりイメージと実際のプレーが噛み合っていない。ミスした時や嚙み合っていないときってその場でわかるし、攻撃の流れを止めないようにしたい。あと俺は技術が高いわけじゃないから、決められたところにボールを出すって簡単じゃない。今までよりもっとこだわっていかなきゃいけない。
やっぱり(後藤田)亘輝とかすごく上手だなって思う。逆足で(クロスを)上げている(宮川)瑞希とかも本当にすごい。みんなすごいよ、リスペクトしている」
質の高いボールを届けること。そして前線との呼吸に合わせること。両方の難しさと戦いながらも、その試行錯誤を前向きに捉えている。攻撃の局面にも踏み込み、チームを押し上げる姿勢は、南葛戦で自らゴール前へ飛び込んだあの日のプレーとも地続きにあるのではないだろうか。

一方で、攻撃に出る分だけ背後のスペース管理や帰陣後の判断はより重要になる。1対1の局面で潰しにいくことは武器でありながら、「攻撃と守備のバランスがまだまだ」と頭を悩ませている。その境界にある「紙一重のライン」を見極める挑戦の只中にいる。
「守備のチャレンジもそうだし、攻撃のチャレンジもそうだし、新しいことにチャレンジしていくのがすごく楽しいから。もちろん全部が上手くいかないし、練習でも試合でも課題が出て『うわー』ってなることもあるけど、それが成功したときの喜びの方が大きい。なんなら、それが忘れられないし。試合で勝つ時も一緒。キツいトレーニングを毎日していても、試合に勝った瞬間に代えられるものって、今の人生で見つからないから。だから『またやろう』って思える」
精度の高いパスワークで内側を突いてくる南葛は、その現在地を測るには格好の相手だろう。守備では最も危険なコースを消し、攻撃ではためらわず前へ出る。山出がいま取り組む「攻撃も守備もどっちも挑む」というテーマが、これほど鮮明に問われる相手も多くない。
明日のAGFフィールドで迎えるアウェイ戦に向けて、「マジで負けたくない。どこの相手に対してもそうだけど、世間体を見てもチャレンジャーになるから、全部で勝ちてえ」と、自身の「チャレンジ」を披露してみせる。
「ちょうど練習前のミーティングで、マスさん(増嶋監督)が言ったんだよ。『サッカーをやっている目的をもう一度考えてほしい』って。俺はその目的が明確にあって、去年のEDO戦のときくん(政森宗治)が決めたゴールで、すごく心を動かされてリハビリを頑張ろうと思えたんだよね。そんな風に少しでも大きい舞台で、多くの人に『自分も頑張ろう』って思ってもらえるエネルギーを与えられるような選手になりたいし、生きている活力になりたい。そのために自分ができることって、もうわかってる。
だから、俺の理想の選手像である『来てよかった』『また見たい』『また明日から頑張ろう』って思わせられるプレーをしたいし、“魂”を震わせられる試合にしたい。もちろん、上手いプレーもすげえと思うけど、ガムシャラに泥臭く頑張っている姿を見せて、見に来てくれた人みんなと喜びたいし、また“あの瞬間”を味わえるように頑張ります」

関東1部の上位争いの中で南葛とぶつかり、山出もまた、離脱を経てたどり着いた現在地を示す。かつて勝利を決定づけた一歩を、今度はより逞しく、より成熟したプレーで刻めるか。
守備でも、攻撃でも、そして何よりその姿勢で。見る者の心を動かす“チャレンジャー”が、再び渋谷の力になることを証明してみせる。
取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希
編集 :畑間 直英
GAME REPORT
現在3位の渋谷と2位の南葛SCが対戦した関東サッカーリーグ1部第5節。上位争いの行方を占う一戦は、互いに強度高く入りながらも、攻守にわたって圧倒した南葛が後半13分に決勝点を奪い、渋谷は0−1で敗れた。
渋谷の先発は前節から2名変更。GKには積田景介、右ウイングには後藤田亘輝が入り、ともに今季初先発を飾った。なかでも今季FC琉球から期限付きで移籍してきた後藤田にとっては、公式戦でのスタメン出場が約1年ぶり。「コンディションを上げてきていたので、やっぱり勝ちたかったし、何か爪痕を残したかった」と待ち続けた出番だっただけに、悔しさは大きかった。

立ち上がりから南葛は、巧みなパス交換とサイドへの展開を織り交ぜながら、渋谷陣地に押し込む。相手のボール保持の時間が長くなる中、渋谷が今週のコンセプトとして掲げていた「攻めの守備」で応戦。前線からプレッシングをかけ、相手のビルドアップを阻もうと試みたものの、それがかえって相手の思うツボとなり、「自分たちもプレッシングをかけたけど、奪った後のパスが引っ掛けられた」と後藤田。それでも前半は一定の手応えもあり、前半24分には中盤でルーズボールに先に反応した後藤田が自ら前へ運び、迷わずミドルシュートを放つ。続く26分には、石上輝からの縦パスをゴール前で引き出し、宮川瑞希の決定機につなげた。守備から攻撃へ移る局面で、前進のきっかけをもたらした。

一方で、チーム全体としては奪った後の精度に欠けた。ボール奪取後の一手で遅れを取り、切り替えのスピードが武器の南葛に押し返される。流れを自分たちへ引き寄せきれず、前半を0−0で終えた。
後半も南葛は、両サイドを使い分けながら渋谷の守備網を揺さぶる。内に入ればすかさずシュートまで持ち込まれ、耐える時間となった。GK積田の好セーブで持ちこたえる場面もあったが、58分には南葛のロングカウンターから渋谷の左サイドを突かれる。速いクロスからピンポイントでゴール前で合わせられ、ついに均衡を破られた。流れの中から崩されて喫した失点は、この試合が今季初だった。
このシーンについて後藤田は、「はっきり覚えていないけれど、そういう隙というか、一本を仕留める能力が(相手の方が)勝っていたのかなと思う」と振り返る。さらに積田は「切り替えのところでふわっとなってしまった。強いチームはあそこの隙を逃してくれない。全体としては良かったけれど、一瞬の隙で結果がこうなってしまった」と唇を噛んだ。上位対決の勝敗を分けたのは、試合全体の支配率以上に、局面での質と決定力だった。
失点後、渋谷は政森宗治と伊藤雄教を投入し、前線を2トップに変え、1点を追いかける。対する南葛は後半にわたり負傷する選手が出てきたものの、変わらず攻守の切り替えが速く、最終ラインもコンパクトさを保ったまま対応。渋谷は最前線へボールを届けたい時間帯で思うように前進できず、背後を狙う場面も幾度もオフサイドに阻まれた。終盤には右サイドの小関陽星から大越寛人へ大きく展開する形もあったが、ゴールをこじ開けるには至らなかった。
試合後、後藤田は敗因を個の力にも求めた。
「まずは個人のところで負けなかったら相手に上回られることはないし、一人ひとりのスキルをもっともっと上げていかなきゃいけない。こういうゲームは誰か一人が(相手を)かわしたり、一個外したりしないと局面は変わらない。そういうところを自分自身がこれから取り組んでいきたい」
練習での強度に自負を持ち、チームの調子に比例してコンディションを高めてきたという背番号37。約1年ぶりの先発で勝利という結果を残せなかったが、アシストだけでなく得点への飽くなき意欲と持ち味でもあるアジリティは、停滞しかけた流れの中で光るものがあった。

次節は約2週間後だが、敗戦を引きずる時間はない。5月30日(土)アミノバイタルフィールドで、現在5位(5月17日時点)のEDO ALL UNITEDを迎える。昨季、優勝争いの中で苦杯と歓喜を味わった因縁の相手とのプライドを懸けた一戦だ。
「クラブとしてはEDOはライバルというイメージがある。自分自身は対戦したことがないけれど、クラブの想いを背負って絶対に勝利できるように臨んでいきたい」
渋谷が再び前へ進むためにも、上位対決で突きつけられた「局面を変える力」という課題を、次こそは証明したい。
取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希
編集 :畑間 直英



















