
KICK OFF |
9:00
神奈川県サッカー協会フットボールセンター(かもめパーク)


SHIBUYA CITY FC

東邦チタニウム
0
2
2026シーズン 関東サッカーリーグ1部
2026年7月5日
GAME RESULT
GAME REPORT
SCFC ZINE
解像度を上げ、“強いチーム”へ生まれ変われるか。三原体制の初陣で問われる、渋谷のプロフェッショナリズム
今こそ、チームの真価が試される時だ。
先月18日、約3年半にわたり渋谷を率い、二度の昇格へ導いた増嶋竜也監督の退任、ならびにJ2所属ジュビロ磐田のトップチームコーチ就任が発表された。後任として指揮を執るのは、昨年からヘッドコーチを務めてきた三原雅俊新監督だ。
全社関東予選の敗退から3週間が経過し戦況は決して良いとは言えないが、この期間には3名の新加入選手が加わった。クラブを取り巻く状況が大きく動いたことは何かの定めのように見えるし、なんとかしてこの変化をプラスに働かせたい。
2024シーズンはプレーヤーとして渋谷で健闘した三原新監督。とりわけ既存選手への理解も信頼も深いが「(信頼は)あるけれど、そこに頼らず」と安住するつもりはない。堅実かつフラットな人柄の上、DF鈴木友也も「ベースは大きく変えないで、残った選手たちの良さを生かす選択肢を取るかもしれない」と推測する。
先週末には日本大学N.との試合が開催される予定だったが、台風の影響により延期。就任から約1週間という限られた時間の中で迎える一戦だったこともあり、試合前には「バランスを見ながら」采配を振るうと指揮官は答えていた。明日の一戦ではより選手の特徴を見極めながら、ピッチに送り出すことができるはず。自身の組織構築については、次のように語る。
「僕は選手としても一緒にやっていたしコーチという立場だったので、絶対的な牽引力があるかと言われたらそうではないと思っている。なので、選手と一緒にチームをつくりあげたい。最初のミーティングで『プロフェッショナリズム』と言ったが、『一人ひとりがプロフェッショナルな姿勢でチームが勝つために行動してほしい』と伝えたし、求めたい」
残されたリーグ戦は11試合。明日対戦するのは、現在首位を走る東邦チタニウム。勝ち点差は8と、突き放されている状況だ。考えれば考えるほど全社での敗退は痛く、DF敷田唯も「すごくネガティブというかショッキング」な結果だったと受け止める。全社での2失点に加え、リーグ前節では桐蔭横浜大学FCを相手に3失点。直近の試合では守備に脆さが散見される。これらを遡り「言い方を選ばずに言うと、“すごく弱いチーム”やなっていう色が見えてしまっていた」と、敷田。
続けて、「抽象度が高いけれど、強いチームのひとつの要素は失点をしないこと。ピンチになっても体を張れる、当たるなどいろいろあるが、うち(渋谷)は当たって失点することが多い。(全社の)厚木戦もそれがあったし、キワのところを守れなかった。自分が守備の選手だからこそ、そこがすごく気になった」と振り返る。

さらにチームの士気的要素も課題として挙げられているが、「声を出せば良いって言うわけでもないし、雰囲気が良かったら勝てるわけでもない」と、本質そのものに目を向ける。
「チームとして良い時は絶対にあると思うが、じゃあその時は何が良かったのか、悪い時は何が悪かったのか。一つひとつの行動や瞬間を抽象化していく作業が今のチームには必要」
刻一刻と迫られる時間の中で、考え方や価値観が違う者同士の見解を噛み砕き、共通認識を擦り合わせていくことは相応の労力がかかるが、「そこを合わせていかないといけないのが、チームスポーツでありサッカー。やめちゃいけないし、そこの数を増やしていかないといけない」と、苦労を厭わない。準備にしろ雰囲気にしろ、それらを「抽象度が高い」問題として捉え、「もっと言語化していく必要がある」と強調する。
「何なのかということを模索し、探究し続けなければいけない。個人としてもチームとしても何をしないと良くならないのか、一人一人がもっと考え続けないといけない。やめたらもう終わり」

昨年は同リーグの東京23FCに所属していた敷田。全社3位決定戦ではVONDS市原FCを相手に敗れ、泣く泣く地域CLの出場権を逃した。「( VONDSは)めっちゃ守備が堅いし、まさに失点しないチームだった。傍から見たらそこまで綺麗なゴールが多いわけではないけれど、最後に押し込むキワの勝負強さや勝利に対しての執着心があった」と分析し、これもまた「勝利の執着心とは何か?」という疑問に行き着くと語る。だが、トライアンドエラーを繰り返す中で、見えてくるものがあるのも事実。答えのない問いに対して、自分なりの見解もある。
「最後に守れる、最後に決められる、最後に足を出せる。しんどい時に頑張れるやつが一人じゃなくて二人の方が強いし、それがもっと増えていくこと。挙げればキリがないけれど、そこの数や因子を増やし続けることが大事だと思う」
自身の持ち味である対人守備と球際の強さについては、「負ける気がしない」と自負がある。一方で、自分が直接関わっていないプレーに関しては、その場面が起きる前に誰かを動かし、危険な状況そのものを未然に防ぐコーチング、いわば「人を動かす力」は足りない部分だと痛感する。
「あとは『心を動かす』こともあると思っている。一つの声かけでも、何を話すか、トーンや表情、言い回しで感じ取り方はものすごく変わってくる。『動かす』ことにも種類はめちゃめちゃあると思う。プレーの動きに対しての影響力もそうだし、人に対しての影響力もこだわっていきたい」
どこまでも細部にこだわる背番号15。「基準値をあげることや解像度にめちゃくちゃこだわっていかないといけない」姿勢は、まさに「プロフェッショナル」そのものだ。
「勝つために何ができるか。一人一人がどれだけ向き合えるか。全員ができればベストだけれど、時にはできてない時もある中でそういう人たちをどう引き上げていくか。それがチーム力だし、それこそが強いチーム。渋谷だからこそできることや表現できないことは、もっともっと伸ばしていかないといけない。そこをやり続けた量と質が結果に繋がってくる」

三原新監督体制になって迎える明日の初陣は、リーグ無敗を誇る首位との対決。昨年も対戦経験がある敷田は、「特に東チタと対戦するゲームは毎回めちゃくちゃ難しくなる。ディフェンスの人間からすると、(相手の)フォワードはサイズがあって速くて、強い。もともとJリーグでやっていた選手もいるので、個人個人の能力がすごく高い。だからこそ、個でどれだけ勝てるかがめちゃめちゃ大事になってくる」と、その脅威を語る。
相手の強度に対して、どれだけ自分たちの土俵で戦えるか。直近の渋谷は相手に飲まれてしまうゲームが多く、指揮官もその現状を生んでいる原点に目を向ける。
「今選手たちに対して考えているのは、チームでやろうとしていることに意識が向きすぎていること。ゴールを奪うこと、ゴールを守ることの本質的なところをもう少し意識しないと、怖さは生まれないと思っている。それは特に攻撃のところ。チームの形を守ることはゴールを奪うための『手段』であって、チームのやり方がゴールにならないように、もっともっと怖いところに入っていける『アイデア』が欲しいなと思う」
リーグ優勝しか望みがない危機的かつ緊張感のある状況。関東1部の各チームも頂点を狙い、ここから先は文字通りの死闘が待っている。そのリスタートで立ちはだかるのは、強烈な個の能力を誇る東邦チタニウム。いかに自らの力を表現し、圧倒できるか。まさに「個vs個」の強度が問われる一戦である。
急ピッチで再建を進める渋谷は、まだ完成系とは言えない。それでも、未知の問いに泥臭く向き合い、基準値を上げ続ける姿勢こそが、「プロフェッショナリズム」の本質だ。形に囚われない「模索」の先にある「アイデア」が生まれたとき、渋谷はもう一度その真価を証明できる。

取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希
編集 :畑間 直英
GAME REPORT
関東サッカーリーグ1部第9節・東邦チタニウム戦。5位の渋谷は、ここまでリーグ無敗を誇る首位に挑んだ。相手との勝点差を縮めるためにも是が非でも勝利が欲しかったが、前半の2失点が重くのしかかり反撃は実らず。結果は0-2と、悔しい敗戦を喫した。
三原新監督の初陣となったこの一戦。先発には次の11人を選んだ。
積田景介がゴールマウスに立ち、3バックには敷田、鈴木、山内を配置。中盤の底に土田と本田、2列目に宮川、真也加チュイ大夢、半田、後藤田、最前線に伊藤が立った。
鈴木は第4節以来のスタメン復帰。また、今月17日にJ1所属・FC町田ゼルビアより期限付き移籍で加入した真也加が早くも先発入りを果たし、リザーブには同じく新加入のソン ホギョン(横河武蔵野FCより)が名を連ねた。新戦力を加え、三原新監督のもとで新たなスタートを切った渋谷。指揮官がどのようなゲームプランを描くのかにも注目が集まった。

立ち上がりは相手の特徴であるロングボールからの攻撃を受ける場面が多かったが、渋谷は自分たちのスタイルを貫きボールをつないで応戦する。4分、左サイドでボールを受けた真也加が利き足の左足でクロスを送ると、半田がヘディングで合わせるもこれは枠外。11分にはビルドアップから縦パスを受けた真也加が積極的なポストプレーの動きを見せた。
両者互いに譲らぬ攻防が続いたが、決定機を仕留める力では相手が上回った。前半12分、中盤でのビルドアップミスから左サイドを突破されると、クロスを上げるかと思われた場面でそのままニアサイドへ振り抜かれ、先制点を献上。さらに28分には、自陣でのボールロストから鋭いミドルシュートを沈められ、リードを2点に広げられた。
いずれの失点も、自分たちで試合を苦しくしてしまった側面は否めない。前半から早速チャンスに絡んだ真也加は、「ちょっとセーフティーにやりすぎた」と課題を口にする。
「自分たちのペースも作りたかったので、2失点とも前に、前に行き過ぎてしまった。自分も様子を見ながらやりたいと思っていたが、それが裏目に出てしまった。後半は攻撃的なシーンが作れたが、もっとゴールに向かってシュートを打つのは前半からできたはず。もう少し(伊藤)雄教君とも連携を取りたい」

そして、この日もゴールマウスを守った積田景介は、試合後には人一倍唇を噛んだ。
「(1失点目は)やられてはいけないシーンだったし、ああいうところでやられてしまうとチームとして動揺を生んでしまう。(ーークロスを上げられる想定のポジションを取っていた?)クロスも来るかなと思ってポジションを取っていたが、あの場面だとクロスが8割、シュートが2割というところを頭に残さないといけなかった。そこをクロスだろうと思ったことで、ちょっと割り切りすぎてしまったかもしれない。やっぱりシュートも飛んで来ることを頭に残しておかないといけない。みんなが頑張って守っているのに、自分のところでやられてしまったのは反省点。
2失点目もブラインドになっていて見えなかったなかで、ボールが出てきてしまった。ああいうところで止めないとチームの流れが悪くなる。相手も割り切って固めてくるし、あの時間で2点差がついてしまうと、試合を難しくしてしまう。もっと自分のシュートを止める能力、ゴールを守る能力を上げていかないといけない。これはチームとしてというより、完全に個人として止める能力がないと上には行けないし、勝てない。自分が踏ん張らないといけない」
2点を追う後半、渋谷は交代策で反撃に出る。ハーフタイムに小関を投入し、後半20分には濱名と植松を送り出し攻撃のギアを上げる。右ウイングに入った小関は得意のボールタッチで攻撃にリズムを生み出し、濱名もカットインと縦突破を交ぜながら左サイドを活性化。植松も前線で精力的に動き、それぞれの持ち味を発揮しながら勢いをもたらした。
さらに同23分にピッチインしたソン ホギョンが、当たり負けしない体格を生かして起点を作り、伊藤とのコンビネーションから攻撃をけん引する。同31分にはホギョンの縦パスに抜け出した伊藤がシュートまで持ち込む。続く36分には鈴木のロングフィードを植松が折り返し、ファーサイドへ走り込んだホギョンがスライディングで合わせにいったが、わずかに届かなかった。

この競技では2点差が一番危険なスコアとよく言われるが、この日のチタニウムの牙城はその常套句を思い出す隙もないほど堅かった。終盤にかけて足を攣る選手も見られたが、交代カードを切りながら守備の強度を保ち、全員が集中力を切らさず渋谷の猛攻を耐え抜いた。相手ベンチからは「ゆっくりやれ!」と指示が飛んだように、割り切った試合運びで渋谷をじわじわと追い詰めていった。
「相手は首位で最小失点数のチームなので、そのとおりの堅さがあった」と相手の守備を称えた伊藤。そのうえで、「後半は自分たちにもチャンスがなかったわけではない。少ないチャンスの中で仕留めて点を決めることで、ああいうチームにも勝っていけるのではないかと思った」と悔しさをにじませた。

前節の桐蔭横浜大学FC戦では3失点、全社予選では2失点。結果だけを見れば、守備面に課題が残る状況が続いている。それでもこの日は、相手のロングボールに対してディフェンスラインが跳ね返した後のプレスバックを徹底し、セカンドボールを拾って次の攻撃へつなげる動きがあった。三原新監督が促した「コンパクトフィールド」の意識も浸透し、ラインを下げすぎることなく戦えていた。
最後方でゴールを守る積田も「結果が出ていないのは事実」と認め、「かといって、やっている方向は間違っていない」と語る。
「相手が2点先行して、固めてしまおうとしているのはわかっていた。その中で、ボールを持ってはいるけれども、どう前に進むかというところはずっと課題だと思う。(渋谷は)みんな上手いし、強いし、能力のある選手が揃っているからこそ、あとはどう持っていくか。0点で終わるチームではないし、自分からしたら逆になんでこんなに点が取れないんだろうと思うくらいやっている。ラスト30mに入ったときに、どれだけアイデアを持って精度を上げていけるか。そこをやっていけば、どんどんみんなの良いところが出てくるのではないかと思う」
残り10試合となったリーグ戦。今回の敗戦でチタニウムの勝ち点は20と、勝点差は11も引き離されてしまった。自力優勝は厳しさを増している。連係が取れているだけでなく、一人ひとりの完成度も高いチタニウムを前に、自分たちは何を、どこから改善すべきなのか。その問いはより重みを持って突きつけられたが、「まだ何も終わっていないし、決まってもいない」と守護神は前を向く。
「マスさん(増嶋竜也前監督)が去った後でもあるし、なかなか勝てていないタイミングで難しい状況だからこそ、チームとしての力も一人ひとりの力も試されている。簡単ではないけれど、簡単ではないからこそやりがいを感じる。最後にどうなっているかはわからないので一日一日、一試合一試合積み上げていくしかない。先を見ることも大事だけれど、しっかり目の前のことに向き合って積み上げていった結果、最後にどうなっているかを見てみようじゃないかと。逆境だからこそ、自分たちは試されている。そのことを意識してまた向き合ってやっていきたい」

次節は1週間後の第10節、東京ユナイテッドFC戦。開幕戦で喫した敗戦を晴らしたい一戦ではあるが、7位に低迷する渋谷にとって重要なのは、リベンジ以上にどの相手でも勝点3を積み重ねることだ。変化を加えながら進む挑戦は、どこで功を奏すのか。渋谷はもう一度、目の前の一戦から積み上げていく。
取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希
編集 :畑間 直英
SCFC ZINE
解像度を上げ、“強いチーム”へ生まれ変われるか。三原体制の初陣で問われる、渋谷のプロフェッショナリズム
今こそ、チームの真価が試される時だ。
先月18日、約3年半にわたり渋谷を率い、二度の昇格へ導いた増嶋竜也監督の退任、ならびにJ2所属ジュビロ磐田のトップチームコーチ就任が発表された。後任として指揮を執るのは、昨年からヘッドコーチを務めてきた三原雅俊新監督だ。
全社関東予選の敗退から3週間が経過し戦況は決して良いとは言えないが、この期間には3名の新加入選手が加わった。クラブを取り巻く状況が大きく動いたことは何かの定めのように見えるし、なんとかしてこの変化をプラスに働かせたい。
2024シーズンはプレーヤーとして渋谷で健闘した三原新監督。とりわけ既存選手への理解も信頼も深いが「(信頼は)あるけれど、そこに頼らず」と安住するつもりはない。堅実かつフラットな人柄の上、DF鈴木友也も「ベースは大きく変えないで、残った選手たちの良さを生かす選択肢を取るかもしれない」と推測する。
先週末には日本大学N.との試合が開催される予定だったが、台風の影響により延期。就任から約1週間という限られた時間の中で迎える一戦だったこともあり、試合前には「バランスを見ながら」采配を振るうと指揮官は答えていた。明日の一戦ではより選手の特徴を見極めながら、ピッチに送り出すことができるはず。自身の組織構築については、次のように語る。
「僕は選手としても一緒にやっていたしコーチという立場だったので、絶対的な牽引力があるかと言われたらそうではないと思っている。なので、選手と一緒にチームをつくりあげたい。最初のミーティングで『プロフェッショナリズム』と言ったが、『一人ひとりがプロフェッショナルな姿勢でチームが勝つために行動してほしい』と伝えたし、求めたい」
残されたリーグ戦は11試合。明日対戦するのは、現在首位を走る東邦チタニウム。勝ち点差は8と、突き放されている状況だ。考えれば考えるほど全社での敗退は痛く、DF敷田唯も「すごくネガティブというかショッキング」な結果だったと受け止める。全社での2失点に加え、リーグ前節では桐蔭横浜大学FCを相手に3失点。直近の試合では守備に脆さが散見される。これらを遡り「言い方を選ばずに言うと、“すごく弱いチーム”やなっていう色が見えてしまっていた」と、敷田。
続けて、「抽象度が高いけれど、強いチームのひとつの要素は失点をしないこと。ピンチになっても体を張れる、当たるなどいろいろあるが、うち(渋谷)は当たって失点することが多い。(全社の)厚木戦もそれがあったし、キワのところを守れなかった。自分が守備の選手だからこそ、そこがすごく気になった」と振り返る。

さらにチームの士気的要素も課題として挙げられているが、「声を出せば良いって言うわけでもないし、雰囲気が良かったら勝てるわけでもない」と、本質そのものに目を向ける。
「チームとして良い時は絶対にあると思うが、じゃあその時は何が良かったのか、悪い時は何が悪かったのか。一つひとつの行動や瞬間を抽象化していく作業が今のチームには必要」
刻一刻と迫られる時間の中で、考え方や価値観が違う者同士の見解を噛み砕き、共通認識を擦り合わせていくことは相応の労力がかかるが、「そこを合わせていかないといけないのが、チームスポーツでありサッカー。やめちゃいけないし、そこの数を増やしていかないといけない」と、苦労を厭わない。準備にしろ雰囲気にしろ、それらを「抽象度が高い」問題として捉え、「もっと言語化していく必要がある」と強調する。
「何なのかということを模索し、探究し続けなければいけない。個人としてもチームとしても何をしないと良くならないのか、一人一人がもっと考え続けないといけない。やめたらもう終わり」

昨年は同リーグの東京23FCに所属していた敷田。全社3位決定戦ではVONDS市原FCを相手に敗れ、泣く泣く地域CLの出場権を逃した。「( VONDSは)めっちゃ守備が堅いし、まさに失点しないチームだった。傍から見たらそこまで綺麗なゴールが多いわけではないけれど、最後に押し込むキワの勝負強さや勝利に対しての執着心があった」と分析し、これもまた「勝利の執着心とは何か?」という疑問に行き着くと語る。だが、トライアンドエラーを繰り返す中で、見えてくるものがあるのも事実。答えのない問いに対して、自分なりの見解もある。
「最後に守れる、最後に決められる、最後に足を出せる。しんどい時に頑張れるやつが一人じゃなくて二人の方が強いし、それがもっと増えていくこと。挙げればキリがないけれど、そこの数や因子を増やし続けることが大事だと思う」
自身の持ち味である対人守備と球際の強さについては、「負ける気がしない」と自負がある。一方で、自分が直接関わっていないプレーに関しては、その場面が起きる前に誰かを動かし、危険な状況そのものを未然に防ぐコーチング、いわば「人を動かす力」は足りない部分だと痛感する。
「あとは『心を動かす』こともあると思っている。一つの声かけでも、何を話すか、トーンや表情、言い回しで感じ取り方はものすごく変わってくる。『動かす』ことにも種類はめちゃめちゃあると思う。プレーの動きに対しての影響力もそうだし、人に対しての影響力もこだわっていきたい」
どこまでも細部にこだわる背番号15。「基準値をあげることや解像度にめちゃくちゃこだわっていかないといけない」姿勢は、まさに「プロフェッショナル」そのものだ。
「勝つために何ができるか。一人一人がどれだけ向き合えるか。全員ができればベストだけれど、時にはできてない時もある中でそういう人たちをどう引き上げていくか。それがチーム力だし、それこそが強いチーム。渋谷だからこそできることや表現できないことは、もっともっと伸ばしていかないといけない。そこをやり続けた量と質が結果に繋がってくる」

三原新監督体制になって迎える明日の初陣は、リーグ無敗を誇る首位との対決。昨年も対戦経験がある敷田は、「特に東チタと対戦するゲームは毎回めちゃくちゃ難しくなる。ディフェンスの人間からすると、(相手の)フォワードはサイズがあって速くて、強い。もともとJリーグでやっていた選手もいるので、個人個人の能力がすごく高い。だからこそ、個でどれだけ勝てるかがめちゃめちゃ大事になってくる」と、その脅威を語る。
相手の強度に対して、どれだけ自分たちの土俵で戦えるか。直近の渋谷は相手に飲まれてしまうゲームが多く、指揮官もその現状を生んでいる原点に目を向ける。
「今選手たちに対して考えているのは、チームでやろうとしていることに意識が向きすぎていること。ゴールを奪うこと、ゴールを守ることの本質的なところをもう少し意識しないと、怖さは生まれないと思っている。それは特に攻撃のところ。チームの形を守ることはゴールを奪うための『手段』であって、チームのやり方がゴールにならないように、もっともっと怖いところに入っていける『アイデア』が欲しいなと思う」
リーグ優勝しか望みがない危機的かつ緊張感のある状況。関東1部の各チームも頂点を狙い、ここから先は文字通りの死闘が待っている。そのリスタートで立ちはだかるのは、強烈な個の能力を誇る東邦チタニウム。いかに自らの力を表現し、圧倒できるか。まさに「個vs個」の強度が問われる一戦である。
急ピッチで再建を進める渋谷は、まだ完成系とは言えない。それでも、未知の問いに泥臭く向き合い、基準値を上げ続ける姿勢こそが、「プロフェッショナリズム」の本質だ。形に囚われない「模索」の先にある「アイデア」が生まれたとき、渋谷はもう一度その真価を証明できる。

取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希
編集 :畑間 直英
GAME REPORT
関東サッカーリーグ1部第9節・東邦チタニウム戦。5位の渋谷は、ここまでリーグ無敗を誇る首位に挑んだ。相手との勝点差を縮めるためにも是が非でも勝利が欲しかったが、前半の2失点が重くのしかかり反撃は実らず。結果は0-2と、悔しい敗戦を喫した。
三原新監督の初陣となったこの一戦。先発には次の11人を選んだ。
積田景介がゴールマウスに立ち、3バックには敷田、鈴木、山内を配置。中盤の底に土田と本田、2列目に宮川、真也加チュイ大夢、半田、後藤田、最前線に伊藤が立った。
鈴木は第4節以来のスタメン復帰。また、今月17日にJ1所属・FC町田ゼルビアより期限付き移籍で加入した真也加が早くも先発入りを果たし、リザーブには同じく新加入のソン ホギョン(横河武蔵野FCより)が名を連ねた。新戦力を加え、三原新監督のもとで新たなスタートを切った渋谷。指揮官がどのようなゲームプランを描くのかにも注目が集まった。

立ち上がりは相手の特徴であるロングボールからの攻撃を受ける場面が多かったが、渋谷は自分たちのスタイルを貫きボールをつないで応戦する。4分、左サイドでボールを受けた真也加が利き足の左足でクロスを送ると、半田がヘディングで合わせるもこれは枠外。11分にはビルドアップから縦パスを受けた真也加が積極的なポストプレーの動きを見せた。
両者互いに譲らぬ攻防が続いたが、決定機を仕留める力では相手が上回った。前半12分、中盤でのビルドアップミスから左サイドを突破されると、クロスを上げるかと思われた場面でそのままニアサイドへ振り抜かれ、先制点を献上。さらに28分には、自陣でのボールロストから鋭いミドルシュートを沈められ、リードを2点に広げられた。
いずれの失点も、自分たちで試合を苦しくしてしまった側面は否めない。前半から早速チャンスに絡んだ真也加は、「ちょっとセーフティーにやりすぎた」と課題を口にする。
「自分たちのペースも作りたかったので、2失点とも前に、前に行き過ぎてしまった。自分も様子を見ながらやりたいと思っていたが、それが裏目に出てしまった。後半は攻撃的なシーンが作れたが、もっとゴールに向かってシュートを打つのは前半からできたはず。もう少し(伊藤)雄教君とも連携を取りたい」

そして、この日もゴールマウスを守った積田景介は、試合後には人一倍唇を噛んだ。
「(1失点目は)やられてはいけないシーンだったし、ああいうところでやられてしまうとチームとして動揺を生んでしまう。(ーークロスを上げられる想定のポジションを取っていた?)クロスも来るかなと思ってポジションを取っていたが、あの場面だとクロスが8割、シュートが2割というところを頭に残さないといけなかった。そこをクロスだろうと思ったことで、ちょっと割り切りすぎてしまったかもしれない。やっぱりシュートも飛んで来ることを頭に残しておかないといけない。みんなが頑張って守っているのに、自分のところでやられてしまったのは反省点。
2失点目もブラインドになっていて見えなかったなかで、ボールが出てきてしまった。ああいうところで止めないとチームの流れが悪くなる。相手も割り切って固めてくるし、あの時間で2点差がついてしまうと、試合を難しくしてしまう。もっと自分のシュートを止める能力、ゴールを守る能力を上げていかないといけない。これはチームとしてというより、完全に個人として止める能力がないと上には行けないし、勝てない。自分が踏ん張らないといけない」
2点を追う後半、渋谷は交代策で反撃に出る。ハーフタイムに小関を投入し、後半20分には濱名と植松を送り出し攻撃のギアを上げる。右ウイングに入った小関は得意のボールタッチで攻撃にリズムを生み出し、濱名もカットインと縦突破を交ぜながら左サイドを活性化。植松も前線で精力的に動き、それぞれの持ち味を発揮しながら勢いをもたらした。
さらに同23分にピッチインしたソン ホギョンが、当たり負けしない体格を生かして起点を作り、伊藤とのコンビネーションから攻撃をけん引する。同31分にはホギョンの縦パスに抜け出した伊藤がシュートまで持ち込む。続く36分には鈴木のロングフィードを植松が折り返し、ファーサイドへ走り込んだホギョンがスライディングで合わせにいったが、わずかに届かなかった。

この競技では2点差が一番危険なスコアとよく言われるが、この日のチタニウムの牙城はその常套句を思い出す隙もないほど堅かった。終盤にかけて足を攣る選手も見られたが、交代カードを切りながら守備の強度を保ち、全員が集中力を切らさず渋谷の猛攻を耐え抜いた。相手ベンチからは「ゆっくりやれ!」と指示が飛んだように、割り切った試合運びで渋谷をじわじわと追い詰めていった。
「相手は首位で最小失点数のチームなので、そのとおりの堅さがあった」と相手の守備を称えた伊藤。そのうえで、「後半は自分たちにもチャンスがなかったわけではない。少ないチャンスの中で仕留めて点を決めることで、ああいうチームにも勝っていけるのではないかと思った」と悔しさをにじませた。

前節の桐蔭横浜大学FC戦では3失点、全社予選では2失点。結果だけを見れば、守備面に課題が残る状況が続いている。それでもこの日は、相手のロングボールに対してディフェンスラインが跳ね返した後のプレスバックを徹底し、セカンドボールを拾って次の攻撃へつなげる動きがあった。三原新監督が促した「コンパクトフィールド」の意識も浸透し、ラインを下げすぎることなく戦えていた。
最後方でゴールを守る積田も「結果が出ていないのは事実」と認め、「かといって、やっている方向は間違っていない」と語る。
「相手が2点先行して、固めてしまおうとしているのはわかっていた。その中で、ボールを持ってはいるけれども、どう前に進むかというところはずっと課題だと思う。(渋谷は)みんな上手いし、強いし、能力のある選手が揃っているからこそ、あとはどう持っていくか。0点で終わるチームではないし、自分からしたら逆になんでこんなに点が取れないんだろうと思うくらいやっている。ラスト30mに入ったときに、どれだけアイデアを持って精度を上げていけるか。そこをやっていけば、どんどんみんなの良いところが出てくるのではないかと思う」
残り10試合となったリーグ戦。今回の敗戦でチタニウムの勝ち点は20と、勝点差は11も引き離されてしまった。自力優勝は厳しさを増している。連係が取れているだけでなく、一人ひとりの完成度も高いチタニウムを前に、自分たちは何を、どこから改善すべきなのか。その問いはより重みを持って突きつけられたが、「まだ何も終わっていないし、決まってもいない」と守護神は前を向く。
「マスさん(増嶋竜也前監督)が去った後でもあるし、なかなか勝てていないタイミングで難しい状況だからこそ、チームとしての力も一人ひとりの力も試されている。簡単ではないけれど、簡単ではないからこそやりがいを感じる。最後にどうなっているかはわからないので一日一日、一試合一試合積み上げていくしかない。先を見ることも大事だけれど、しっかり目の前のことに向き合って積み上げていった結果、最後にどうなっているかを見てみようじゃないかと。逆境だからこそ、自分たちは試されている。そのことを意識してまた向き合ってやっていきたい」

次節は1週間後の第10節、東京ユナイテッドFC戦。開幕戦で喫した敗戦を晴らしたい一戦ではあるが、7位に低迷する渋谷にとって重要なのは、リベンジ以上にどの相手でも勝点3を積み重ねることだ。変化を加えながら進む挑戦は、どこで功を奏すのか。渋谷はもう一度、目の前の一戦から積み上げていく。
取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希
編集 :畑間 直英



















