
KICK OFF |
17:30
AGFフィールド


SHIBUYA CITY FC

南葛SC
2
4
2026シーズン 関東サッカーリーグ1部
2026年8月29日
GAME RESULT
GAME REPORT
SCFC ZINE
強豪との決戦を前に味わった悔しいドロー。 一つの局面にこだわり、精緻なパスワークを誇る南葛を打ち破れ
“運命”が決まるのに、そう時間はかからなかった。後半11分、押し込まれる展開のままロングカウンターを浴びる。左サイドを割られ、ファーサイドへ山なりのクロス。相手の入ってくる位置は、すでに読めていた。伸ばした2本の腕でわずかにボールを逸らし、運命を先送りした。だがそのわずか2分後、今度は右サイドから同じ形を再現されファーサイドを撃ち抜かれる。豪快にネットが揺れた。
「あれを掻き出すか掻き出さないかで、運命というのは変わってくる」
この日、今季リーグ戦初先発を飾った在籍3年目の守護神・積田景介は、完敗に近い内容のわずか1失点を悔いるように、そう言葉を残した。掻き出せた1本と、掻き出せなかった1本。差はほんのわずかだったはずなのに、結果は白黒はっきりと分かれた。
あれから3ヶ月。明日は、その運命とやらを変えてみせる。

前回対戦と同じ舞台ーーAGFフィールドで迎えるホームゲーム、第14節・南葛SC戦。今季の行方を占う重要な一戦だ。
残り5試合。4位・渋谷と、2位・東京ユナイテッド / 3位・南葛との勝点差は「6」。今季は条件次第で2位でも地域CL出場の可能性があり、残り試合数が少なくなるにつれ、勝敗の重みは増す。
対する南葛は前節で首位に今季初黒星をつけ、勢いは上々。さらに今週25日には、J1・柏レイソルからDF成瀬竣平の完全移籍加入が発表された。明日の出場可否は定かではないが、首位撃破と強烈な新戦力の加入。この2つの事実だけでも、リーグ終盤戦へ勢いを加速させる相当なエッセンスになっているに違いない。
足元の技術を生かし、全員が連動する精度の高いパスワーク。ワンツーで局面を剥がしながらゴール前へ侵入したかと思えば、不意のミドルでゴールを脅かす。前期はほとんどの時間帯でボールを握られ、その多彩な攻撃に後手を踏んだ。そして今度は、守護神が「亀の甲羅のよう」と表現した首位の堅守さえ打ち破って、渋谷の前にやってくる。3ヶ月前にも十分すぎるほど味わった南葛の怖さは、さらに増していると考えるべきだろう。
「自分たちもその攻撃を受けるということは、それなりの覚悟はしなくてはいけない。守備の時間が増えるかもしれないけれど、そこで踏ん張ればチームとして勢いが出るはず」

関東1部という「カオスなリーグ」において、前節の痛み分けは何かの暗示だったのかもしれない。
今季初の連勝は「3」でストップ。前期に6発完勝を収めた相手に、今度は3得点3失点。気が緩んでいた、そう簡単なリーグではない――そう片付けるのは簡単だが、再び運命を左右しかねない一戦を前に味わった苦渋を、単なる取りこぼしで終わらせるわけにはいかない。勝利を得るに越したことはないが、積田は、“もったいない”で終わったこの一戦を次につなげるべき教訓として捉えている。
「後から振り返った時に、“良い薬“にしないといけない。あの時があったから、もう一回持ち直せたと思えるように。こういう時こそ、自分たちは試されている」
であれば、前節の3失点は見過ごせない。守備の要である鈴木の退場を境に形勢が傾いたとはいえ、「誰が出ても勝利のためにやってくれる選手が揃っている」のであれば、10人になったことだけを理由にはできない。3失点という課題は、南葛戦を前に払拭すべき急務だろう。
1失点目は前半31分。積田からパスを受けた石上が前を向いて縦につけようとしたところを奪われ、そのまま浮き球のシュートまで持ち込まれた。鈴木の退場後に喫した2失点目は、相手のビルドアップからダイレクトで縦を割られ、最後はこぼれ球を押し込まれた。いずれも、積田は一度ボールに触れている。
「1点目に関しては至近距離だったのもあるけれど、もう少し弾く位置を考えなくてはいけなかった。2失点目も同様。やっぱり弾く技術をもっと上げていかないと、チームの結果に結びついてこない」
極めつけは、勝利を逃すことになった3失点目だ。スローインからファーサイドへクロスを送られると、折り返しを押し込まれた。ゴール前は混戦しており対応の難しい場面だったが、今度はボールに触れることができなかった。
キャッチするのか、パンチングで逃がすのか、あるいはステイするのか。GKにとって、クロス対応は処理を誤ればゴール前にボールを残し、そのまま相手の決定機につながるリスクが付きものだ。
「特にクロスなんかは最低限触らなくてはいけないので、難しいところ。弾くなら、(味方が)拾ってくれるようなところに弾いたり、あるいは味方にも競らせるために滞空時間を少し作らなくてはいけない。そうやって考えてはいるけれど、できれば自分のところで終わらせるのがベスト。もしスクランブルが起きていたら弾かざるを得ないので、そこをどうやって弾くかというのは事前に考えて、中の状況を見てやっている。
ボールの移動中にパッと見た時にどういう状況なのか、上がってきたボールがどういうボールなのか。ボールのスピードや質によって変えているので、それらを一瞬で判断をするために練習で体に染み込ませている。できることなら最初はキャッチで考えているし、そこで一回呼吸を置いて攻撃につなげられる。それができなかったら、どこで弾くべきなのかを考えていかないといけない。
でもやっぱり混戦は難しいので、『弾くので精一杯だから頼むわ』とあらかじめ言っておいて準備してもらうことはある。それは前日のセットプレーの練習で言ったりするし、天候も雨が降っていたら自分もできるだけ頑張って弾くけれど、セカンドの意識を強く持ってほしいと改めてわかってもらえるようにはしている」

象徴的だったのが、第12節・東京23FC戦の前半11分だ。相手の右CKから強烈なシュートを浴びると、積田は果敢に飛び出して大きくパンチング。しかし、そのこぼれ球を拾われ今度はダイレクトボレーを打ち込まれる。強烈な一撃だったが、すぐさまポジションを取り直していた積田が反応し、今度は上へ大きく弾き出した。この日、何度も披露することになるビッグセーブの挨拶代わりのプレーだった。
二度続けてゴールを守ったのだから、結果だけを見れば文句のつけようがない。それでも積田にとっては、素直に喜べる場面ではない。最初のパンチングで相手の攻撃を終わらせられなかったという懸念があるからだ。
「結局本能的なところだから理想通りにいったらいいけれど、弾いたところでこぼれ球を詰められるのはよくあること。蹴られる前に敵の配置はなんとなく見ているからこそ、弾いた後で何が起こり得るかを考えなくてはいけない」
ビッグセーブは、GKにとって最大の見せ場の一つである。そもそも、打たせない状況をつくることが重要だが、決定的なシュートを止めればチームの勝利に直結する。だからこそ、自らに課すべき仕事は「ゴールに入れさせないこと」。
「理屈理論ではこういう守り方する、打たせないようにするというのはあるけれど、それを90分やれるとは思っていない。去年のJリーグでいうと、鹿島アントラーズの早川(友基)選手はやっぱりすごい。アントラーズはおそらく守り方も徹底しているだろうし、もし突破されて1対1になっても何度も早川選手が止めている。そういった個人のところで最後に止める能力がないと優勝できないし、シャーレを掲げられない。やっぱりゴールキーパーが重要な局面で止めないと、上にはいけないというのを改めて感じた」
「今年はそれを思ってやっているけれど、なかなか結果として結びついていないのが正直」と付け加えたが、直近4試合の積田を見れば幾度となく決定機を阻み、失点寸前の場面でチームを救っている。もはや「守護神」という言葉だけでは物足りなく感じるほど、その存在感は増している。

結果に報われないことが多いポジションで、それでも窮地を救う積田を我々は事あるごとに称えてきた。だからこそ、明日の試合が終わった時には彼が口にした次の決意を思い出してほしい。
「“当たっている”という言葉は自分は好きではない。もちろんそういう意図で言ってくれているわけではないと思うけれど『今日当たっているね』って言われると、たまたまボールが来て弾いてラッキー、その日だけとか、あるいは2試合くらいは偶発的にできるよね、というニュアンスに自分は捉えてしまう。自分の中では、日々のトレーニングでやってきたものを出しているので。
じゃあそう言われないために、『やっぱりね』『今日も流石だね』って言われるようなパフォーマンスを毎回しないといけない。毎試合ピンチのシーンがないことに越したことはないけれど90分通してそういったシーンは絶対に出てくるので、そこで止めるか止めないかで結果もそうだし、自分の今後のサッカー選手としてのキャリアが変わってくる。
だから、まだそう言われるということは偶発的なものになっている印象を持たれてしまってるし、まだまだ自分の力が足りてないということ。たまたまでやってるわけではないし、その1本を止めるために手の出し方や倒れ方など一個一個こだわりながら“3人”でやっている。そういうのを分かってもらうためにも、コンスタントにパフォーマンスを出していかないといけない」
日々の飽くなき積み重ねが試される相手として、南葛以上の存在はいないだろう。個々の能力はリーグトップクラス。クラブとしての規模も含め、間違いなくチャンピオン候補の一角だ。それでも「ビビることは全くない」と言い切る守護神。強敵と再び相まみえることへの闘志をたぎらせる。
「前期はなかなか攻撃に移れなかったことは確か。相手のゴール前まで迫ることはできなかったし、攻め込まれる機会は多かった。もしかしたら今回もそういうシーンは増えるかもしれないけど、我慢強く90分で勝つことを意識すれば、勝つチャンスは十分にある。自分が失点しないで踏ん張ればチームとしても勢いづくし、しっかり守っていけるはず。相手は(首位を倒した)勢いもあるし、強いことは間違いない。でもうちだって、それに負けないぐらいのチーム力や能力はある。ガチンコ勝負でいきたい」

3ヶ月前、勝敗を分けたのは、掻き出せた一本と、掻き出せなかった一本だった。
明日も、そんなわずかな差が90分の至るところに現れる。一本を止め切れるか。ひとつの球際で上回れるか。苦しい時間を全員で耐え切れるか。訪れた好機を決め切れるか。
残り5試合の行方を大きく左右する、「燃えないわけがない」一戦。今度は、そのわずかな局面をものにする。
3ヶ月前とは違う運命を、自分たちの手で掴むために。
取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希・Shun Natsui
編集 :畑間 直英
GAME REPORT
AGFフィールドにて行われた関東サッカーリーグ第14節。2試合連続のホームゲームとなった渋谷は、3位の南葛SCと対戦した。
前節での引き分けによって暫定4位につける渋谷。前期対戦では0-1で敗れており、対する南葛は首位・東邦チタニウムに今季初の黒星を与え、直近4連勝と好調を維持している。
上位進出を目指すうえでも是が非でも勝利が欲しい渋谷は、前節から先発を2名変更。退場処分を受けた鈴木に代わりCBに敷田を起用し、2トップの一角には伊藤が先発復帰を果たした。
「必ず先制点を取ること」「自分たちのやりたいサッカーをすること」。チームとして共有していたこの2つの狙いを胸に、重要な90分へと臨んだ。
冷たい小雨が降り注ぐなか、南葛ボールでキックオフ。開始早々に立て続けのFKのチャンスからゴールへ迫られると、その後も南葛らしい華麗なパスワークに揺さぶられる。8分にミドルシュートを許すと、10分には右サイドを突かれゴール前からダイレクトシュートを浴びる。
なんとかボールをつなぎ、自分たちのリズムをつくりたい渋谷。しかし、攻守の切り替えが速い南葛を前に後手を踏み、なかなか主導権を握れない。左サイドをドリブルで深くえぐられるだけでなく、近距離での細かな連係から守備を崩される場面も続いた。さらに、CBから最前線へ鋭い縦パスを通され、一気に局面を変えられる。異なる形から次々とゴールへ迫られ、いつゴールを挙げられてもおかしくない時間が続いた。
それでも14分、渋谷にもようやくチャンスが訪れる。ゴール前でボールを受けた植松がシュートを狙うも、相手DFのブロックに阻まれる。すると、そのこぼれ球に宮川が反応。迷わずダイレクトで右足を振り抜き、ファーストシュートを放った。
しかし、先にスコアを動かしたのは南葛だった。18分にFKから低弾道のボールを入れられると、積田が一度は防いだものの、こぼれ球を押し込まれて先制点を献上してしまう。
早い時間帯に追いつきたい渋谷も反撃に出る。21分には左サイドで宮川と植松が連係から、最後は土田がシュート。30分にはスローインから伊藤が落としたボールに石上が反応し、ゴールを狙う。敵陣でプレーする時間を増やし、負けじと応戦した。
一方、南葛も渋谷が前に出た背後を逃さない。ボールを奪えば素早く前線へ運び、ロングカウンターから右サイドを突破。ゴール前まで一気に攻め込み、渋谷が攻勢を強めるなかでも鋭い攻撃を繰り出してくる。
そして38分、再び南葛にゴールを許す。最終ラインから縦にボールを差し込み、一気に前進されるとマイナス方向へ折り返され、ダイレクトで合わせられたシュートはゴール左へ。縦に速い攻撃から追加点を奪われた。
前半終了間際にもCKの流れから強烈なミドルシュートでゴールを脅かされるなど、最後まで南葛の攻撃に苦しんだ渋谷。反撃に出る時間帯こそつくったものの、試合の主導権を握り返すまでには至らず、0-2で前半を折り返した。
後半は一転、渋谷が立ち上がりから攻勢を強める。開始わずか30秒、真也加が積極的にミドルシュートを放ち、反撃への姿勢を見せた。
しかし50分、前がかりになったところからカウンターを受ける。右サイドでボールを受けた相手に狙い澄ましたシュートを放たれると、コースを読んでいた積田も防ぎ切れず、ボールはゴール左下へ。後半開始早々に3点目を奪われ、さらに苦しい状況へ追い込まれた。
それでも、渋谷は3点のビハインドを背負いながらも落ち着いてボールを動かし、相手陣内へと押し込んでいく。54分には石上がダイレクトで前線へ送ると、最終ラインの背後へ抜け出した伊藤が反応。惜しくもオフサイドの判定となったが、ゴールへ向かう姿勢は失わない。
58分、ペナルティエリア中央の絶好の位置でFKを獲得すると、キッカーの真也加が低い弾道のシュートで直接ゴールを狙う。さらにその2分後、最終ラインから縦につないで前進し、最後は再び真也加がシュート。相手DF2人にブロックされたものの、こぼれ球を拾ってそのまま持ち運び、立て続けに左足を振り抜いた。シュートは大きく枠を越えたが、短い時間で何度もフィニッシュまで持ち込み、1点を返そうと攻勢を強めていく。
「やっぱりシュートから逆算してのサッカー。とにかくあの短い時間で点を返さなきゃいけないと、相手に焦らされた」と、背番号24が振り返ったようにゴールを急ぐ意識が強まっていた時間帯の64分、その背後を南葛に突かれる。カウンターから右サイドを一気に突破されると、最後はゴール右隅へシュートを決められた。3失点目と似た形から再びネットを揺らされ、スコアは0-4。追い上げようと前へ出ていた渋谷にとって、あまりにも痛い4点目となった。
試合を決定づけられた厳しい状況のなか、渋谷は67分に最初の交代カードを切る。宮川に代えて吉永、石上に代えて小関を投入し、最後までゴールを目指す姿勢をピッチで表現していく。
72分、右コーナー付近でFKを獲得すると、途中出場の小関が鋭いボールで直接ゴールを狙う。これは相手DFにクリアされたものの、続く左CKから再びチャンスを作る。一度後方へ展開して攻撃を組み直すと、真也加が左足から絶妙な軌道のクロスを送り込む。ファーサイドへ飛び込んだ伊藤が頭で合わせ、ついにゴールネットを揺らした。
伊藤はこれで2試合連続ゴール。4点のビハインドを背負っても攻撃の手を緩めなかった渋谷の待望のゴールに、スタンドからも大きな歓声が沸き起こった。
前節に続き、真也加との連携から生まれた得点。「やっぱり(真也加)チュイは左利きで、良いボールを蹴れることは分かっていた」と、アシストに感謝した伊藤だが、自身の動きにも積み重ねてきたものがあった。
「マークの外し方は、マーさん(三原監督)からミーティングの映像でも言われていたので、そこを意識して、ボールが上がる瞬間に相手の前へうまく入れた。自主練でもああいうセンタリングの練習をやっていたし、日頃の練習から相手を一個外すタイミングは常に意識していた。それが実を結んで、報われて良かった」
一方、ピンポイントのクロスでゴールを演出した真也加も、伊藤が飛び込んだスペースを狙っていた。
「セットプレーの崩れの中には、必ず誰かがいると思っていた。そこを見逃さずというか、あそこに誰かしら入ってくるだろうなと思ってスペースを意識してクロスを上げたら、(伊藤)雄教君が決めてくれた」
出し手と受け手、それぞれが狙いを持って生まれた反撃の一撃。渋谷はさらに追い上げるべく、77分に敷田に代えて岩沼、山出に代えて大越を投入し、フレッシュな選手を送り込んだ。
その後は一進一退の攻防が続くなか、徐々に南葛にも疲れが見え始める。途中出場の岩沼も最終ラインから前線へピンポイントのボールを送り込み、攻撃の起点をつくった。
そして86分、渋谷に再び絶好機が訪れる。左CKから小関がボールを送り、吉永がヘディングで合わせると、相手のハンドによりPKを獲得。キッカーを務めたのは、この日すでに1ゴールを挙げていた伊藤だった。ゴール右隅へ冷静に沈め、残りわずかな時間で点差を2点に縮めた。
「試合前はマーさん(三原監督)から(植松)亮くんが蹴ると言われていたけれど、自分はフォワードなので、PKの時に『蹴りたい』と言った。(吉永)昇偉にも任せてもらえたし、自分はストライカーとして決め切る自信はあった」
アディショナルタイムは5分。0-4から2点を返した渋谷には、まだ同点へ追いつく可能性が残されている。真也加が右サイドの深い位置から速い折り返しを送り込むも、中央ではわずかに合わない。さらに90+4分、斜めのパスを受けた藤本がダイレクトで折り返すと、真也加が左足で浮かせてゴール前へ。ファーサイドには、ハットトリックを狙う伊藤が待っていた。右足で押し込もうとしたシュートは惜しくもゴール右へ外れ、3点目には届かずタイムアップ。2ゴールを奪い試合終了間際まで南葛ゴールへ迫り続けたが、4点のビハインドを覆すには、残された時間があまりにも少なかった。結果は2-4と、後半の猛追も及ばず黒星を喫した。
前節の流通経済大学ドラゴンズ龍ケ崎戦に続き、この日も先制を許して追いかける展開。試合前に「必ず先制点を取ること」を掲げていただけに、真也加は課題を口にする。
「直近2試合、失点からのスタートになっているのは本当に良くないし、そこが渋谷が勝てない一つの要因。自分たちが理想としているのは自分たちが良いサッカーをして、もっと点を取りにいくこと。後半は良いプレーが増えていたけれど、前半からできたのではないかと思う」
この日2ゴールを挙げた伊藤も「先制点を取られると戦い方も難しくなる。自分たちが先制点を取れるくらい圧倒できないと、昇格は難しい」と振り返る。一方で、0-4から2点を返したことについては、「誰も諦めていなかったし、勝つ気持ちで全員がやっていた。それが2得点につながった」と前を向いた。
それでも、攻勢を強めた後半にも2失点。南葛との差を認めざるを得ない部分もあった。「0-2から全員で前に出て、相手をうまくハメてチャンスも多くつくれた。でも、そこで決め切れないのが南葛との差。自分たちもレベルは上がったと思うけれど、相手もさらに上がっていた。個の部分やプレス、シュートセンスの差は、これから埋めていかないといけない」と、上位を争う相手との差を突きつけられた90分となった。
次節は9月6日(日)、味の素フィールド西が丘で行われる第15節・EDO ALL UNITED戦。前期対戦は互いに譲らずスコアレスドローに終わった宿敵との、8度目の対戦を迎える。
勝ち点で並ぶ直接対決に対し、伊藤は「ここで負けたらEDOにさらに上に行かれてしまう。ここで落とすか落とさないかで、これからの1部での戦い方は本当に変わる。何が何でもまずは勝ちにこだわって、全員でやっていかないといけない」と闘志を燃やす。
今節での敗戦で上位との差はさらに開いた。それでも、可能性が潰えたわけではない。残された一戦一戦で勝ち点3を積み上げるために、まずは勝ち点で並ぶライバルとの一戦へ。ここで立ち止まるわけにはいかない。
取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希
編集 :畑間 直英
SCFC ZINE
強豪との決戦を前に味わった悔しいドロー。 一つの局面にこだわり、精緻なパスワークを誇る南葛を打ち破れ
“運命”が決まるのに、そう時間はかからなかった。後半11分、押し込まれる展開のままロングカウンターを浴びる。左サイドを割られ、ファーサイドへ山なりのクロス。相手の入ってくる位置は、すでに読めていた。伸ばした2本の腕でわずかにボールを逸らし、運命を先送りした。だがそのわずか2分後、今度は右サイドから同じ形を再現されファーサイドを撃ち抜かれる。豪快にネットが揺れた。
「あれを掻き出すか掻き出さないかで、運命というのは変わってくる」
この日、今季リーグ戦初先発を飾った在籍3年目の守護神・積田景介は、完敗に近い内容のわずか1失点を悔いるように、そう言葉を残した。掻き出せた1本と、掻き出せなかった1本。差はほんのわずかだったはずなのに、結果は白黒はっきりと分かれた。
あれから3ヶ月。明日は、その運命とやらを変えてみせる。

前回対戦と同じ舞台ーーAGFフィールドで迎えるホームゲーム、第14節・南葛SC戦。今季の行方を占う重要な一戦だ。
残り5試合。4位・渋谷と、2位・東京ユナイテッド / 3位・南葛との勝点差は「6」。今季は条件次第で2位でも地域CL出場の可能性があり、残り試合数が少なくなるにつれ、勝敗の重みは増す。
対する南葛は前節で首位に今季初黒星をつけ、勢いは上々。さらに今週25日には、J1・柏レイソルからDF成瀬竣平の完全移籍加入が発表された。明日の出場可否は定かではないが、首位撃破と強烈な新戦力の加入。この2つの事実だけでも、リーグ終盤戦へ勢いを加速させる相当なエッセンスになっているに違いない。
足元の技術を生かし、全員が連動する精度の高いパスワーク。ワンツーで局面を剥がしながらゴール前へ侵入したかと思えば、不意のミドルでゴールを脅かす。前期はほとんどの時間帯でボールを握られ、その多彩な攻撃に後手を踏んだ。そして今度は、守護神が「亀の甲羅のよう」と表現した首位の堅守さえ打ち破って、渋谷の前にやってくる。3ヶ月前にも十分すぎるほど味わった南葛の怖さは、さらに増していると考えるべきだろう。
「自分たちもその攻撃を受けるということは、それなりの覚悟はしなくてはいけない。守備の時間が増えるかもしれないけれど、そこで踏ん張ればチームとして勢いが出るはず」

関東1部という「カオスなリーグ」において、前節の痛み分けは何かの暗示だったのかもしれない。
今季初の連勝は「3」でストップ。前期に6発完勝を収めた相手に、今度は3得点3失点。気が緩んでいた、そう簡単なリーグではない――そう片付けるのは簡単だが、再び運命を左右しかねない一戦を前に味わった苦渋を、単なる取りこぼしで終わらせるわけにはいかない。勝利を得るに越したことはないが、積田は、“もったいない”で終わったこの一戦を次につなげるべき教訓として捉えている。
「後から振り返った時に、“良い薬“にしないといけない。あの時があったから、もう一回持ち直せたと思えるように。こういう時こそ、自分たちは試されている」
であれば、前節の3失点は見過ごせない。守備の要である鈴木の退場を境に形勢が傾いたとはいえ、「誰が出ても勝利のためにやってくれる選手が揃っている」のであれば、10人になったことだけを理由にはできない。3失点という課題は、南葛戦を前に払拭すべき急務だろう。
1失点目は前半31分。積田からパスを受けた石上が前を向いて縦につけようとしたところを奪われ、そのまま浮き球のシュートまで持ち込まれた。鈴木の退場後に喫した2失点目は、相手のビルドアップからダイレクトで縦を割られ、最後はこぼれ球を押し込まれた。いずれも、積田は一度ボールに触れている。
「1点目に関しては至近距離だったのもあるけれど、もう少し弾く位置を考えなくてはいけなかった。2失点目も同様。やっぱり弾く技術をもっと上げていかないと、チームの結果に結びついてこない」
極めつけは、勝利を逃すことになった3失点目だ。スローインからファーサイドへクロスを送られると、折り返しを押し込まれた。ゴール前は混戦しており対応の難しい場面だったが、今度はボールに触れることができなかった。
キャッチするのか、パンチングで逃がすのか、あるいはステイするのか。GKにとって、クロス対応は処理を誤ればゴール前にボールを残し、そのまま相手の決定機につながるリスクが付きものだ。
「特にクロスなんかは最低限触らなくてはいけないので、難しいところ。弾くなら、(味方が)拾ってくれるようなところに弾いたり、あるいは味方にも競らせるために滞空時間を少し作らなくてはいけない。そうやって考えてはいるけれど、できれば自分のところで終わらせるのがベスト。もしスクランブルが起きていたら弾かざるを得ないので、そこをどうやって弾くかというのは事前に考えて、中の状況を見てやっている。
ボールの移動中にパッと見た時にどういう状況なのか、上がってきたボールがどういうボールなのか。ボールのスピードや質によって変えているので、それらを一瞬で判断をするために練習で体に染み込ませている。できることなら最初はキャッチで考えているし、そこで一回呼吸を置いて攻撃につなげられる。それができなかったら、どこで弾くべきなのかを考えていかないといけない。
でもやっぱり混戦は難しいので、『弾くので精一杯だから頼むわ』とあらかじめ言っておいて準備してもらうことはある。それは前日のセットプレーの練習で言ったりするし、天候も雨が降っていたら自分もできるだけ頑張って弾くけれど、セカンドの意識を強く持ってほしいと改めてわかってもらえるようにはしている」

象徴的だったのが、第12節・東京23FC戦の前半11分だ。相手の右CKから強烈なシュートを浴びると、積田は果敢に飛び出して大きくパンチング。しかし、そのこぼれ球を拾われ今度はダイレクトボレーを打ち込まれる。強烈な一撃だったが、すぐさまポジションを取り直していた積田が反応し、今度は上へ大きく弾き出した。この日、何度も披露することになるビッグセーブの挨拶代わりのプレーだった。
二度続けてゴールを守ったのだから、結果だけを見れば文句のつけようがない。それでも積田にとっては、素直に喜べる場面ではない。最初のパンチングで相手の攻撃を終わらせられなかったという懸念があるからだ。
「結局本能的なところだから理想通りにいったらいいけれど、弾いたところでこぼれ球を詰められるのはよくあること。蹴られる前に敵の配置はなんとなく見ているからこそ、弾いた後で何が起こり得るかを考えなくてはいけない」
ビッグセーブは、GKにとって最大の見せ場の一つである。そもそも、打たせない状況をつくることが重要だが、決定的なシュートを止めればチームの勝利に直結する。だからこそ、自らに課すべき仕事は「ゴールに入れさせないこと」。
「理屈理論ではこういう守り方する、打たせないようにするというのはあるけれど、それを90分やれるとは思っていない。去年のJリーグでいうと、鹿島アントラーズの早川(友基)選手はやっぱりすごい。アントラーズはおそらく守り方も徹底しているだろうし、もし突破されて1対1になっても何度も早川選手が止めている。そういった個人のところで最後に止める能力がないと優勝できないし、シャーレを掲げられない。やっぱりゴールキーパーが重要な局面で止めないと、上にはいけないというのを改めて感じた」
「今年はそれを思ってやっているけれど、なかなか結果として結びついていないのが正直」と付け加えたが、直近4試合の積田を見れば幾度となく決定機を阻み、失点寸前の場面でチームを救っている。もはや「守護神」という言葉だけでは物足りなく感じるほど、その存在感は増している。

結果に報われないことが多いポジションで、それでも窮地を救う積田を我々は事あるごとに称えてきた。だからこそ、明日の試合が終わった時には彼が口にした次の決意を思い出してほしい。
「“当たっている”という言葉は自分は好きではない。もちろんそういう意図で言ってくれているわけではないと思うけれど『今日当たっているね』って言われると、たまたまボールが来て弾いてラッキー、その日だけとか、あるいは2試合くらいは偶発的にできるよね、というニュアンスに自分は捉えてしまう。自分の中では、日々のトレーニングでやってきたものを出しているので。
じゃあそう言われないために、『やっぱりね』『今日も流石だね』って言われるようなパフォーマンスを毎回しないといけない。毎試合ピンチのシーンがないことに越したことはないけれど90分通してそういったシーンは絶対に出てくるので、そこで止めるか止めないかで結果もそうだし、自分の今後のサッカー選手としてのキャリアが変わってくる。
だから、まだそう言われるということは偶発的なものになっている印象を持たれてしまってるし、まだまだ自分の力が足りてないということ。たまたまでやってるわけではないし、その1本を止めるために手の出し方や倒れ方など一個一個こだわりながら“3人”でやっている。そういうのを分かってもらうためにも、コンスタントにパフォーマンスを出していかないといけない」
日々の飽くなき積み重ねが試される相手として、南葛以上の存在はいないだろう。個々の能力はリーグトップクラス。クラブとしての規模も含め、間違いなくチャンピオン候補の一角だ。それでも「ビビることは全くない」と言い切る守護神。強敵と再び相まみえることへの闘志をたぎらせる。
「前期はなかなか攻撃に移れなかったことは確か。相手のゴール前まで迫ることはできなかったし、攻め込まれる機会は多かった。もしかしたら今回もそういうシーンは増えるかもしれないけど、我慢強く90分で勝つことを意識すれば、勝つチャンスは十分にある。自分が失点しないで踏ん張ればチームとしても勢いづくし、しっかり守っていけるはず。相手は(首位を倒した)勢いもあるし、強いことは間違いない。でもうちだって、それに負けないぐらいのチーム力や能力はある。ガチンコ勝負でいきたい」

3ヶ月前、勝敗を分けたのは、掻き出せた一本と、掻き出せなかった一本だった。
明日も、そんなわずかな差が90分の至るところに現れる。一本を止め切れるか。ひとつの球際で上回れるか。苦しい時間を全員で耐え切れるか。訪れた好機を決め切れるか。
残り5試合の行方を大きく左右する、「燃えないわけがない」一戦。今度は、そのわずかな局面をものにする。
3ヶ月前とは違う運命を、自分たちの手で掴むために。
取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希・Shun Natsui
編集 :畑間 直英
GAME REPORT
AGFフィールドにて行われた関東サッカーリーグ第14節。2試合連続のホームゲームとなった渋谷は、3位の南葛SCと対戦した。
前節での引き分けによって暫定4位につける渋谷。前期対戦では0-1で敗れており、対する南葛は首位・東邦チタニウムに今季初の黒星を与え、直近4連勝と好調を維持している。
上位進出を目指すうえでも是が非でも勝利が欲しい渋谷は、前節から先発を2名変更。退場処分を受けた鈴木に代わりCBに敷田を起用し、2トップの一角には伊藤が先発復帰を果たした。
「必ず先制点を取ること」「自分たちのやりたいサッカーをすること」。チームとして共有していたこの2つの狙いを胸に、重要な90分へと臨んだ。
冷たい小雨が降り注ぐなか、南葛ボールでキックオフ。開始早々に立て続けのFKのチャンスからゴールへ迫られると、その後も南葛らしい華麗なパスワークに揺さぶられる。8分にミドルシュートを許すと、10分には右サイドを突かれゴール前からダイレクトシュートを浴びる。
なんとかボールをつなぎ、自分たちのリズムをつくりたい渋谷。しかし、攻守の切り替えが速い南葛を前に後手を踏み、なかなか主導権を握れない。左サイドをドリブルで深くえぐられるだけでなく、近距離での細かな連係から守備を崩される場面も続いた。さらに、CBから最前線へ鋭い縦パスを通され、一気に局面を変えられる。異なる形から次々とゴールへ迫られ、いつゴールを挙げられてもおかしくない時間が続いた。
それでも14分、渋谷にもようやくチャンスが訪れる。ゴール前でボールを受けた植松がシュートを狙うも、相手DFのブロックに阻まれる。すると、そのこぼれ球に宮川が反応。迷わずダイレクトで右足を振り抜き、ファーストシュートを放った。
しかし、先にスコアを動かしたのは南葛だった。18分にFKから低弾道のボールを入れられると、積田が一度は防いだものの、こぼれ球を押し込まれて先制点を献上してしまう。
早い時間帯に追いつきたい渋谷も反撃に出る。21分には左サイドで宮川と植松が連係から、最後は土田がシュート。30分にはスローインから伊藤が落としたボールに石上が反応し、ゴールを狙う。敵陣でプレーする時間を増やし、負けじと応戦した。
一方、南葛も渋谷が前に出た背後を逃さない。ボールを奪えば素早く前線へ運び、ロングカウンターから右サイドを突破。ゴール前まで一気に攻め込み、渋谷が攻勢を強めるなかでも鋭い攻撃を繰り出してくる。
そして38分、再び南葛にゴールを許す。最終ラインから縦にボールを差し込み、一気に前進されるとマイナス方向へ折り返され、ダイレクトで合わせられたシュートはゴール左へ。縦に速い攻撃から追加点を奪われた。
前半終了間際にもCKの流れから強烈なミドルシュートでゴールを脅かされるなど、最後まで南葛の攻撃に苦しんだ渋谷。反撃に出る時間帯こそつくったものの、試合の主導権を握り返すまでには至らず、0-2で前半を折り返した。
後半は一転、渋谷が立ち上がりから攻勢を強める。開始わずか30秒、真也加が積極的にミドルシュートを放ち、反撃への姿勢を見せた。
しかし50分、前がかりになったところからカウンターを受ける。右サイドでボールを受けた相手に狙い澄ましたシュートを放たれると、コースを読んでいた積田も防ぎ切れず、ボールはゴール左下へ。後半開始早々に3点目を奪われ、さらに苦しい状況へ追い込まれた。
それでも、渋谷は3点のビハインドを背負いながらも落ち着いてボールを動かし、相手陣内へと押し込んでいく。54分には石上がダイレクトで前線へ送ると、最終ラインの背後へ抜け出した伊藤が反応。惜しくもオフサイドの判定となったが、ゴールへ向かう姿勢は失わない。
58分、ペナルティエリア中央の絶好の位置でFKを獲得すると、キッカーの真也加が低い弾道のシュートで直接ゴールを狙う。さらにその2分後、最終ラインから縦につないで前進し、最後は再び真也加がシュート。相手DF2人にブロックされたものの、こぼれ球を拾ってそのまま持ち運び、立て続けに左足を振り抜いた。シュートは大きく枠を越えたが、短い時間で何度もフィニッシュまで持ち込み、1点を返そうと攻勢を強めていく。
「やっぱりシュートから逆算してのサッカー。とにかくあの短い時間で点を返さなきゃいけないと、相手に焦らされた」と、背番号24が振り返ったようにゴールを急ぐ意識が強まっていた時間帯の64分、その背後を南葛に突かれる。カウンターから右サイドを一気に突破されると、最後はゴール右隅へシュートを決められた。3失点目と似た形から再びネットを揺らされ、スコアは0-4。追い上げようと前へ出ていた渋谷にとって、あまりにも痛い4点目となった。
試合を決定づけられた厳しい状況のなか、渋谷は67分に最初の交代カードを切る。宮川に代えて吉永、石上に代えて小関を投入し、最後までゴールを目指す姿勢をピッチで表現していく。
72分、右コーナー付近でFKを獲得すると、途中出場の小関が鋭いボールで直接ゴールを狙う。これは相手DFにクリアされたものの、続く左CKから再びチャンスを作る。一度後方へ展開して攻撃を組み直すと、真也加が左足から絶妙な軌道のクロスを送り込む。ファーサイドへ飛び込んだ伊藤が頭で合わせ、ついにゴールネットを揺らした。
伊藤はこれで2試合連続ゴール。4点のビハインドを背負っても攻撃の手を緩めなかった渋谷の待望のゴールに、スタンドからも大きな歓声が沸き起こった。
前節に続き、真也加との連携から生まれた得点。「やっぱり(真也加)チュイは左利きで、良いボールを蹴れることは分かっていた」と、アシストに感謝した伊藤だが、自身の動きにも積み重ねてきたものがあった。
「マークの外し方は、マーさん(三原監督)からミーティングの映像でも言われていたので、そこを意識して、ボールが上がる瞬間に相手の前へうまく入れた。自主練でもああいうセンタリングの練習をやっていたし、日頃の練習から相手を一個外すタイミングは常に意識していた。それが実を結んで、報われて良かった」
一方、ピンポイントのクロスでゴールを演出した真也加も、伊藤が飛び込んだスペースを狙っていた。
「セットプレーの崩れの中には、必ず誰かがいると思っていた。そこを見逃さずというか、あそこに誰かしら入ってくるだろうなと思ってスペースを意識してクロスを上げたら、(伊藤)雄教君が決めてくれた」
出し手と受け手、それぞれが狙いを持って生まれた反撃の一撃。渋谷はさらに追い上げるべく、77分に敷田に代えて岩沼、山出に代えて大越を投入し、フレッシュな選手を送り込んだ。
その後は一進一退の攻防が続くなか、徐々に南葛にも疲れが見え始める。途中出場の岩沼も最終ラインから前線へピンポイントのボールを送り込み、攻撃の起点をつくった。
そして86分、渋谷に再び絶好機が訪れる。左CKから小関がボールを送り、吉永がヘディングで合わせると、相手のハンドによりPKを獲得。キッカーを務めたのは、この日すでに1ゴールを挙げていた伊藤だった。ゴール右隅へ冷静に沈め、残りわずかな時間で点差を2点に縮めた。
「試合前はマーさん(三原監督)から(植松)亮くんが蹴ると言われていたけれど、自分はフォワードなので、PKの時に『蹴りたい』と言った。(吉永)昇偉にも任せてもらえたし、自分はストライカーとして決め切る自信はあった」
アディショナルタイムは5分。0-4から2点を返した渋谷には、まだ同点へ追いつく可能性が残されている。真也加が右サイドの深い位置から速い折り返しを送り込むも、中央ではわずかに合わない。さらに90+4分、斜めのパスを受けた藤本がダイレクトで折り返すと、真也加が左足で浮かせてゴール前へ。ファーサイドには、ハットトリックを狙う伊藤が待っていた。右足で押し込もうとしたシュートは惜しくもゴール右へ外れ、3点目には届かずタイムアップ。2ゴールを奪い試合終了間際まで南葛ゴールへ迫り続けたが、4点のビハインドを覆すには、残された時間があまりにも少なかった。結果は2-4と、後半の猛追も及ばず黒星を喫した。
前節の流通経済大学ドラゴンズ龍ケ崎戦に続き、この日も先制を許して追いかける展開。試合前に「必ず先制点を取ること」を掲げていただけに、真也加は課題を口にする。
「直近2試合、失点からのスタートになっているのは本当に良くないし、そこが渋谷が勝てない一つの要因。自分たちが理想としているのは自分たちが良いサッカーをして、もっと点を取りにいくこと。後半は良いプレーが増えていたけれど、前半からできたのではないかと思う」
この日2ゴールを挙げた伊藤も「先制点を取られると戦い方も難しくなる。自分たちが先制点を取れるくらい圧倒できないと、昇格は難しい」と振り返る。一方で、0-4から2点を返したことについては、「誰も諦めていなかったし、勝つ気持ちで全員がやっていた。それが2得点につながった」と前を向いた。
それでも、攻勢を強めた後半にも2失点。南葛との差を認めざるを得ない部分もあった。「0-2から全員で前に出て、相手をうまくハメてチャンスも多くつくれた。でも、そこで決め切れないのが南葛との差。自分たちもレベルは上がったと思うけれど、相手もさらに上がっていた。個の部分やプレス、シュートセンスの差は、これから埋めていかないといけない」と、上位を争う相手との差を突きつけられた90分となった。
次節は9月6日(日)、味の素フィールド西が丘で行われる第15節・EDO ALL UNITED戦。前期対戦は互いに譲らずスコアレスドローに終わった宿敵との、8度目の対戦を迎える。
勝ち点で並ぶ直接対決に対し、伊藤は「ここで負けたらEDOにさらに上に行かれてしまう。ここで落とすか落とさないかで、これからの1部での戦い方は本当に変わる。何が何でもまずは勝ちにこだわって、全員でやっていかないといけない」と闘志を燃やす。
今節での敗戦で上位との差はさらに開いた。それでも、可能性が潰えたわけではない。残された一戦一戦で勝ち点3を積み上げるために、まずは勝ち点で並ぶライバルとの一戦へ。ここで立ち止まるわけにはいかない。
取材・文 :西元 舞
写真 :福冨 倖希
編集 :畑間 直英


















