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KICK OFF | 

17:00

スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場)

SHIBUYA CITY FC

東京23FC

4
1

2026シーズン 関東サッカーリーグ1部

2026年7月26日

GAME RESULT

ゴール

39

min

​

​

​

​

ゴール

44

min

RYO UEMATSU

​

​

​

選手交代

65

min

MIZUKI MIYAGAWA

YOSEI OZEKI

IN

OFF

選手交代

65

min

GENYA HANDA

NAOKI TSUCHIDA

IN

OFF

失点

75

min

​

​

​

​

選手交代

78

min

SHOI YOSHINAGA

MAO HAMANA

IN

OFF

選手交代

78

min

TOKIHARU MASAMORI

YUTAKA ITO

IN

OFF

ゴール

88

min

TOKIHARU MASAMORI

​

​

​

選手交代

94

min

RYOTARO MAEDA

KENYA HONDA

IN

OFF

ゴール

95

min

ASAHI YAMADE

​

​

​

​STARTING XI

FW

YUTAKA ITO

99

MF

NAOKI TSUCHIDA

40

MAO HAMANA

3

YOSEI OZEKI

77

KENYA HONDA

11

RYO UEMATSU

8

DF

YUYA FUJIMOTO

55

TOMOYA SUZUKI

12

ASAHI YAMADE

5

SHUSEI YAMAUCHI

30

GK

KEISUKE TSUMITA

17

GAME REPORT

SCFC ZINE


混戦を抜け出す一戦へ。目指すべき場所にたどり着くために、ここから始める「連勝街道」


いつ抜け出せるのかと思うほど、長いトンネルだった。ようやく手にした6試合ぶりの前節の勝利は、それだけに格別だった。チームの総和がついに実を結んだという実感が、疲れを一瞬で吹き飛ばした。もっともっと、あの景色を見たいと思うほどの中毒性があった。


後半にPKで追いつかれたことは反省材料だが、吉永昇偉の言葉を借りれば「サッカーをしていたら1点くらい失点をしてもおかしくない」。どれだけ用意周到にしようとも予想外のことは起こるものだ。今フォーカスすべきは失点数ではなく、得点を取ること。とにかく勝って、勝って、勝ち続ける。明日も勝利を手にし、連勝街道に乗るしかない。


明日の相手となる東京23FCは、ここまで2勝6分3敗の勝ち点12。渋谷と同勝点で8位につけている。勝ってもいないが負けてもおらず五分の結果が続いており、アグレッシブな守備とハードワークを重んじるチームだ。首位を独走する東邦チタニウムが8勝2分無敗の勝ち点26で抜け出す一方、中位から下位にかけては勝ち点で数珠つなぎの混戦になっている。その混戦から一歩抜け出せるかどうかの分水嶺である。


なかでも、明日の一戦にひときわ強い「思い入れ」を抱いているのが吉永だ。前期の対戦はドローに終わったが、大きな決定機は二度あり、その決定機に泣いたのが吉永だった。26歳のバースデーゲームでゴールを奪えなかった悔しさはあるが、それ以上に「俺が決めていれば確実に」試合を動かせたという悔恨を抱えている。


得点不足はチームが抱えてきた課題だが、不調の根本には試合を優位に進めながら「先制点」を奪取できなかったことだと指摘する。70分、80分と自分たちの時間をつくりながらも、攻め続けるほど逆に得点は遠のき、じわじわと相手に主導権を握り返されてしまう。そうした焦りが生まれる状況を「もったいない」の一言で表現した。


皮肉なことに、その先制点を奪う役割を担うのは、ワントップもウイングもこなすユーティリティ性を持つ吉永だ。ここまでの出来については、「プロテクト(相手DFからボールを守るプレー)とかはできているかもしれないけど、やっぱり得点のところで貢献できてない。先制点を自分で課題に挙げている中で、それを自分が取ればチームとして楽になるじゃんと思っているけれど、なかなかそれができていない」と、表情は晴れなかった。



思えば昨年、彼はこんなことを言っていた。「自分がゴールを決めるよりも、仲間が決めたほうが嬉しい」と。


「今も自分が取れたら一番いいけれど、例えば裏に抜けてキーパーと1対1で、横に誰かがいたら俺は横に絶対出す。それは俺が決める確率よりも横のやつが決める確率の方が1%でも高かったら、俺はそっちに出したい。出すことによって得点が生まれてチームが盛り上がるのなら、自分が取らなくてもいいよねっていうモチベーションは変わらない。


だってゴールはゴールだから。俺が決めるゴールでも、(半田)ゲンヤ君が決めるゴールでも、トキ君(政森)が決めるゴールでも感情は変わらない。俺が決めても嬉しい、ゲンヤ君が決めてくれても嬉しい、トキ君でも嬉しい。自分のゴールで勝ちたいと思う気持ちもあるけれど、そもそも試合に勝ちたいから。誰かが決めてくれれば自分じゃなくてもいい。


いまは純粋に渋谷で勝ちたい思いがあるから、自分が決めることで喜んでくれる人もたくさんいる。けれど、自分一人を応援しに来てくれてる人よりも、チームを応援してくれてる人が多いわけだから、両方を喜ばせたい。そうなったらゴールに関わり続ければいいだけ。ラストプレーで起点になってもアシストしても、自分は変わらないと思っている」



プレーヤーの性格や価値観は、多かれ少なかれプレースタイルに現れるというが、吉永の場合はそれが非常にわかりやすい。増嶋竜也前監督からは、彼の「優しさ」ゆえに、エゴの必要性を説かれたこともあった。自らが足を振り抜く姿勢の必要性は重々理解している。それでも、「今の自分を捨ててまで勝ちたいとは思わない」と言い切る。自分がどんなプレーでチームに貢献できるのか、どんな瞬間に自分らしさを発揮できるのかを、彼自身が一番よく分かっているからだ。


「『ボールを収める瞬間』が、一番チームのためにプレーしている実感がある。ゴールキックや跳ね返しのボールを俺が収められるだけで攻撃につながる。流経戦や前節もそうだったけれど、自分がゴールの起点になれたら、それがチームのためにプレーできたと思える。ボールを収める瞬間って、結構プロテクトの時が多くて。相手ボール7割、自分3割のボールを自分で収めたいから、それができた時が一番チームのために働けている感じがある。前プレスに行ったりプロテクトしたりとか、難しいものができてる時が一番自分を出せている。だから、痛い思いをするのが好き。


もちろんプロテクトの時や三連続前プレスで追うのは痛いし、疲れる。でも、それをやって相手がミスしてマイボールのスローインになったりとかしたらもう万々歳。みんなが『ナイス、昇偉!』って言ってくれるあの瞬間が好きだし、その声かけに救われる。でもその声かけって、良い時しか出ない時もあるから、それをなくしたい気持ちはある。俺が言われて気持ちいいことって、多分みんなも言われて気持ちいいから、全員にいい声かけをしてあげたい。届いて気持ちいい言葉は自分にも届いてほしいし、みんなにも届いたら気持ちいいでしょ?という気持ちがあるから、試合中以外にも声を出すのかもしれない」


チームのために、仲間のために、みんなのために...それに付随する言葉がいったい何度出てきただろうか。前線の選手である以上、ゴールを奪い、チームを勝利へ導くことは重要な任務である。もっと「エゴ」や「毒」を持つ必要があると言われたことがあったが、仲間のために走り、体を張り、攻撃の起点になろうとする姿勢を捨てるつもりはない。誰に何と言われようが、チームのために献身し続けること自体が、吉永にとっての「エゴ」の在り方なのかもしれない。



前節で一勝したとしても、渋谷を取り巻く現状は決して楽観できるものではない。昇格争いに目を向ければ、首位を突っ走る東邦チタニウムがこのまま突き抜けても不思議ではない状況だ。勝ち点差や残された試合数だけを見れば、渋谷の進む道を険しいと捉える声があるのも当然だろう。しかし、そうした外野の思惑をよそに、この状況“だからこそ”闘志を燃やす男がいる。


「ネガティブな感情を持っている人たちが手のひら返す時に、『ほらな』という瞬間が大好き。『いや、言っただろ』『意見変えるなよ』と思うタイプだから、そういう人たちが手のひらを返した時の言葉を聞きたい。だからそいつらがどんなこと言っていたとしても、俺らは結果を出すしかない。勝ってない間はそっちが正義かもしれないけど、勝ってる間は俺らが正義だから、なんとか勝つしかないし、やるしかない。


だから勝ったらアホみたいに喜びたい。目の前で『やったろ』と思っているし、多分自分は性格がそこまで良くないから、やられたらやり返したい(タイプ)。俺らの前で喜んだチームの目の前で、俺は大喜びしてやりたいと思っている。でも、そのためには勝つしかない。負けている間は何を言っても相手は自分たちのことを見ないし、敗者の言葉なんか伝わらない。だから全部勝ちたい」


笑顔がトレードマークの吉永だが、ふとした瞬間にドライな顔とジョークではない声色になるのは、それだけ譲れない信念があり、守りたいものがあるからこそ果敢になれるということの表れだろう。あまり表立っては見せないが、ピッチに立った時に漂わす「毒」は目を惹くものがある。


「今までと変わらずと言いたいけれど、今まで以上に俺はやらないといけない」


チームのために身を差し出す献身性と、外から向けられる言葉を結果で覆そうとする反骨心。誰かを見返すこと以上に、愛する仲間とともに勝つために戦う。渋谷に加わり1年2ヶ月が経とうとしているが、その年月とは比例しないくらい、クラブへの想いは増している。チーム随一と言ってもいい負けん気の強さと芯の強さを力に変え、この渋谷で新たなブレイクスルーを迎えようとしている。



前節の勝利で取り戻したあの手放しがたい景色を、一度きりで終わらせるわけにはいかない。江戸川の空の下で渋谷が欲するのは、勝利の余韻ではなく、その先にあるさらなる歓喜だ。


勝ち点で並ぶ対決だけに、勝てば数字上も精神的にも大きな意味を持つ。前節でつかんだ勢いを一過性のもので終わらせず、連勝という結果につなげられるかどうか。日に日に厳しさを増す夏の暑さよりも熱い渋谷が、再び熱狂を呼んでみせる。


取材・文 :西元 舞

写真   :福冨 倖希

編集   :畑間 直英


GAME REPORT


関東サッカーリーグ第12節。勝ち点で並ぶ7位の渋谷と8位の東京23FCが、スピアーズえどりくフィールドで激突した。


今節は石上が累積警告により出場停止。そのボランチの位置には本田が先発復帰し、前田は第8節以来となるメンバー入りを果たした。


前田と半田、敷田の3人にとっては、古巣との再会となる一戦。ウォーミングアップの段階で東京23サポーターの熱いチャントが響き渡るなど、勝手知ったるスタジアムでの対戦に注目が集まった。


雨上がりの蒸し暑さの中で始まった試合は、互いにロングボールを織り交ぜながら敵陣に侵入する。渋谷は左サイドを起点に右の小関へ展開し、最前線の伊藤の裏を突こうとする。8分には土田のクロスに伊藤が反応する好機を作った。


対する東京23もロングスローを軸に攻勢をかけ、11分には右CKからの強烈なシュート。ここはGK積田が好セーブでピンチを救う。前節から続いてこの日何度も見せることになるビッグセーブの最初の一本だったが、「公式戦だから、練習試合だからということではなく、先発でもサブでもメンバー外でも、自分のスタンスは変わらない」と、変わらぬ姿勢が表れていた。


前半の給水後は徐々に東京23がセカンドボールを回収する時間帯が続いたが、その流れを変えたのは濱名。31分、自陣から一気にロングキャリーでボールを運ぶと、ペナルティエリアに侵入して相手DF1枚をかわし、際どいシュート。惜しくも枠の右へ外れたが、「流れが悪い時間帯に自分の個人技で打開し、チームに流れを引き寄せられた」と、この仕掛けを起点に攻勢に転じるきっかけを作る。


徐々に押し返す渋谷は36分、またもや濱名の仕掛けから左CKを獲得し、こぼれ球を山出がダイレクトで狙う。これは相手の必死のクリアに阻まれた。


そして38分、ついに均衡を破る。右CKを得た渋谷は、藤本のボールに鈴木がヘディングで合わせると、ボールは相手選手に当たってオウンゴールを誘発。前節で同じ形で先制点に絡んだ鈴木は、三原監督の現役時代の代名詞であった”三原ロール”を披露し、喜びを爆発させた。


渋谷の攻撃はここで終わらない。前半アディショナルタイム、山内が中盤でボールを奪うと、伊藤がプレスに来た相手をかわして右サイドを突破。中央を駆け上がった植松も最終ラインの背後を取り、伊藤からのパスを受けてペナルティエリアへ侵入。スライディングで止めに入った相手DFとGKを鮮やかにかわし、冷静にゴールネットを揺らした。


前半最後のプレーでは東京23FCにミドルシュートを許したものの、積田が落ち着いてセーブ。終了間際にリードを広げた渋谷が、2点を先行して試合を折り返した。


日が沈んでも蒸し暑さが残るなか、後半がキックオフ。2点を追う東京23FCは積極的に最終ラインの背後を狙ったが、鈴木が持ち前のスピードを生かして対応し、相手に自由を与えない。


それでも49分、中央をドリブルで切り裂かれ、そのこぼれ球から強烈なミドルシュートを浴びる。しかし、ここも積田が素早く反応し、クロスバーの上へとはじき出した。


攻勢を強める東京23FCに対し、渋谷も簡単には主導権を渡さない。濱名が巧みに身体を入れて相手の前進を阻み、中盤では植松がボールを収めて攻撃の起点をつくる。


57分には、山内のインターセプトから濱名が一気に加速。ハーフウェーライン付近から中央を怒濤のスピードで持ち上がり、そのままシュートまで持ち込んだ。ミスや荒さはまだあると本人は認めながらも、「藤本や周りの選手との連係、点の取り方のバリエーションを、練習の中で探り合いながら高めていきたい」との言葉通り、次の一手を探るような仕掛けの連続だった。


2点を追う東京23FCは、2人を入れ替えて反撃への姿勢を強め、素早いパスワークから渋谷の守備を揺さぶりにかかる。雨が降り始めた60分、渋谷も土田に代えて半田、小関に代えて宮川を投入。直後には左CKの競り合いからゴールを脅かされたものの、次第にこの交代策が攻撃面で効果を発揮していく。


69分、右サイドに入った宮川が鮮やかなドリブルで相手を抜き去り、中央の伊藤へボールを届けようとする。相手DFの対応に阻まれてフィニッシュには至らなかったが、直後に濱名がドリブルでペナルティエリア右の深い位置まで侵入。二次、三次攻撃へとつなげた渋谷は、最後に植松がマイナス方向へ折り返し、宮川が右足を振り抜いた。追加点こそ奪えなかったものの、交代で入った選手を中心に果敢にゴールへ迫った。


飲水タイムを挟み、東京23サポーターのコールが一段と大きくなる。すると75分、FK後の素早いスローインから右サイドを攻略され、クロスを送り込まれる。中央で合わせたヘディングのこぼれ球に対し、後方から走り込んだ選手に身体を投げ出しながら押し込まれ、執念の1点を返された。反撃への希望をつなぐゴールに、東京23側のスタンドは一気にボルテージを上げた。


1点差に詰め寄られた渋谷は77分、濱名に代えて吉永、伊藤に代えて政森を投入する。直後にはカウンターからゴール前まで運ばれたが、ここでも積田が立ちはだかる。さらに3分後には、縦に速い攻撃からオーバーヘッドを狙われる場面も迎える。


大粒の雨が降り注ぐなか、試合は最終盤へ。右サイドからのクロスにヘディングで合わせられ、あわや同点という場面もつくられたが、渋谷は最後の一線を割らせなかった。


アディショナルタイムは5分。押し込まれる時間が続くなか、今度は渋谷に決定機が訪れる。自陣で相手のスローインからつながれたボールを奪い返すと、政森が前進。ペナルティエリア内で相手DFに倒され、PKを獲得した。


キッカーを務めた政森は、ゴール中央へ蹴り込んで勝負を決定づける3点目。自身にとっては、今季初ゴールとなった。


相手に攻め込まれる状況でのPKについて、「久々に緊張したので、ゴロで真ん中に行ってしまったけれど、自分はだいたいいつも真ん中に蹴るので、そこは意識した。ただ、あんなにボテボテのゴロになるとは思わなくて、焦ってちょっと(詰めに)行こうとしたけれど、入ってからはほっとした」と、安堵の笑みを浮かべた。


さらに90+5分、FKのチャンスから宮川のボールに山出が強烈なヘディングを叩き込み、ダメを押す4点目。試合はラストプレーの半田のシュートで幕を閉じ、渋谷が4-1で勝利した。


試合後、積田は「相手に決められた後も粘り強く戦えて、決めるべき人が決め、最後は(山出)旭がしっかり締めの1点を取ってくれた。90分を通して勝ち切れたことは、すごく良かった」と充実の表情を見せた。


アウェイの地で今季初の連勝を飾った渋谷。苦しい時間を耐え、最後は攻撃陣が結果で応えた。守備の粘りと個の打開力がかみ合った渋谷は、アウェイで4得点を奪い、連勝という確かな成果を手にした。


リーグ戦はここで一時中断。台風の影響で延期となっていた第8節・日本大学N.戦が、8月16日(日)にスポーツ日大アスレティックパーク稲城で行われる。酷暑を迎えてさらなる進化を目指す渋谷が、3週間後にどんな姿を見せるか注目だ。


取材・文 :西元 舞

写真   :福冨 倖希

編集   :畑間 直英


SCFC ZINE


混戦を抜け出す一戦へ。目指すべき場所にたどり着くために、ここから始める「連勝街道」


いつ抜け出せるのかと思うほど、長いトンネルだった。ようやく手にした6試合ぶりの前節の勝利は、それだけに格別だった。チームの総和がついに実を結んだという実感が、疲れを一瞬で吹き飛ばした。もっともっと、あの景色を見たいと思うほどの中毒性があった。


後半にPKで追いつかれたことは反省材料だが、吉永昇偉の言葉を借りれば「サッカーをしていたら1点くらい失点をしてもおかしくない」。どれだけ用意周到にしようとも予想外のことは起こるものだ。今フォーカスすべきは失点数ではなく、得点を取ること。とにかく勝って、勝って、勝ち続ける。明日も勝利を手にし、連勝街道に乗るしかない。


明日の相手となる東京23FCは、ここまで2勝6分3敗の勝ち点12。渋谷と同勝点で8位につけている。勝ってもいないが負けてもおらず五分の結果が続いており、アグレッシブな守備とハードワークを重んじるチームだ。首位を独走する東邦チタニウムが8勝2分無敗の勝ち点26で抜け出す一方、中位から下位にかけては勝ち点で数珠つなぎの混戦になっている。その混戦から一歩抜け出せるかどうかの分水嶺である。


なかでも、明日の一戦にひときわ強い「思い入れ」を抱いているのが吉永だ。前期の対戦はドローに終わったが、大きな決定機は二度あり、その決定機に泣いたのが吉永だった。26歳のバースデーゲームでゴールを奪えなかった悔しさはあるが、それ以上に「俺が決めていれば確実に」試合を動かせたという悔恨を抱えている。


得点不足はチームが抱えてきた課題だが、不調の根本には試合を優位に進めながら「先制点」を奪取できなかったことだと指摘する。70分、80分と自分たちの時間をつくりながらも、攻め続けるほど逆に得点は遠のき、じわじわと相手に主導権を握り返されてしまう。そうした焦りが生まれる状況を「もったいない」の一言で表現した。


皮肉なことに、その先制点を奪う役割を担うのは、ワントップもウイングもこなすユーティリティ性を持つ吉永だ。ここまでの出来については、「プロテクト(相手DFからボールを守るプレー)とかはできているかもしれないけど、やっぱり得点のところで貢献できてない。先制点を自分で課題に挙げている中で、それを自分が取ればチームとして楽になるじゃんと思っているけれど、なかなかそれができていない」と、表情は晴れなかった。



思えば昨年、彼はこんなことを言っていた。「自分がゴールを決めるよりも、仲間が決めたほうが嬉しい」と。


「今も自分が取れたら一番いいけれど、例えば裏に抜けてキーパーと1対1で、横に誰かがいたら俺は横に絶対出す。それは俺が決める確率よりも横のやつが決める確率の方が1%でも高かったら、俺はそっちに出したい。出すことによって得点が生まれてチームが盛り上がるのなら、自分が取らなくてもいいよねっていうモチベーションは変わらない。


だってゴールはゴールだから。俺が決めるゴールでも、(半田)ゲンヤ君が決めるゴールでも、トキ君(政森)が決めるゴールでも感情は変わらない。俺が決めても嬉しい、ゲンヤ君が決めてくれても嬉しい、トキ君でも嬉しい。自分のゴールで勝ちたいと思う気持ちもあるけれど、そもそも試合に勝ちたいから。誰かが決めてくれれば自分じゃなくてもいい。


いまは純粋に渋谷で勝ちたい思いがあるから、自分が決めることで喜んでくれる人もたくさんいる。けれど、自分一人を応援しに来てくれてる人よりも、チームを応援してくれてる人が多いわけだから、両方を喜ばせたい。そうなったらゴールに関わり続ければいいだけ。ラストプレーで起点になってもアシストしても、自分は変わらないと思っている」



プレーヤーの性格や価値観は、多かれ少なかれプレースタイルに現れるというが、吉永の場合はそれが非常にわかりやすい。増嶋竜也前監督からは、彼の「優しさ」ゆえに、エゴの必要性を説かれたこともあった。自らが足を振り抜く姿勢の必要性は重々理解している。それでも、「今の自分を捨ててまで勝ちたいとは思わない」と言い切る。自分がどんなプレーでチームに貢献できるのか、どんな瞬間に自分らしさを発揮できるのかを、彼自身が一番よく分かっているからだ。


「『ボールを収める瞬間』が、一番チームのためにプレーしている実感がある。ゴールキックや跳ね返しのボールを俺が収められるだけで攻撃につながる。流経戦や前節もそうだったけれど、自分がゴールの起点になれたら、それがチームのためにプレーできたと思える。ボールを収める瞬間って、結構プロテクトの時が多くて。相手ボール7割、自分3割のボールを自分で収めたいから、それができた時が一番チームのために働けている感じがある。前プレスに行ったりプロテクトしたりとか、難しいものができてる時が一番自分を出せている。だから、痛い思いをするのが好き。


もちろんプロテクトの時や三連続前プレスで追うのは痛いし、疲れる。でも、それをやって相手がミスしてマイボールのスローインになったりとかしたらもう万々歳。みんなが『ナイス、昇偉!』って言ってくれるあの瞬間が好きだし、その声かけに救われる。でもその声かけって、良い時しか出ない時もあるから、それをなくしたい気持ちはある。俺が言われて気持ちいいことって、多分みんなも言われて気持ちいいから、全員にいい声かけをしてあげたい。届いて気持ちいい言葉は自分にも届いてほしいし、みんなにも届いたら気持ちいいでしょ?という気持ちがあるから、試合中以外にも声を出すのかもしれない」


チームのために、仲間のために、みんなのために...それに付随する言葉がいったい何度出てきただろうか。前線の選手である以上、ゴールを奪い、チームを勝利へ導くことは重要な任務である。もっと「エゴ」や「毒」を持つ必要があると言われたことがあったが、仲間のために走り、体を張り、攻撃の起点になろうとする姿勢を捨てるつもりはない。誰に何と言われようが、チームのために献身し続けること自体が、吉永にとっての「エゴ」の在り方なのかもしれない。



前節で一勝したとしても、渋谷を取り巻く現状は決して楽観できるものではない。昇格争いに目を向ければ、首位を突っ走る東邦チタニウムがこのまま突き抜けても不思議ではない状況だ。勝ち点差や残された試合数だけを見れば、渋谷の進む道を険しいと捉える声があるのも当然だろう。しかし、そうした外野の思惑をよそに、この状況“だからこそ”闘志を燃やす男がいる。


「ネガティブな感情を持っている人たちが手のひら返す時に、『ほらな』という瞬間が大好き。『いや、言っただろ』『意見変えるなよ』と思うタイプだから、そういう人たちが手のひらを返した時の言葉を聞きたい。だからそいつらがどんなこと言っていたとしても、俺らは結果を出すしかない。勝ってない間はそっちが正義かもしれないけど、勝ってる間は俺らが正義だから、なんとか勝つしかないし、やるしかない。


だから勝ったらアホみたいに喜びたい。目の前で『やったろ』と思っているし、多分自分は性格がそこまで良くないから、やられたらやり返したい(タイプ)。俺らの前で喜んだチームの目の前で、俺は大喜びしてやりたいと思っている。でも、そのためには勝つしかない。負けている間は何を言っても相手は自分たちのことを見ないし、敗者の言葉なんか伝わらない。だから全部勝ちたい」


笑顔がトレードマークの吉永だが、ふとした瞬間にドライな顔とジョークではない声色になるのは、それだけ譲れない信念があり、守りたいものがあるからこそ果敢になれるということの表れだろう。あまり表立っては見せないが、ピッチに立った時に漂わす「毒」は目を惹くものがある。


「今までと変わらずと言いたいけれど、今まで以上に俺はやらないといけない」


チームのために身を差し出す献身性と、外から向けられる言葉を結果で覆そうとする反骨心。誰かを見返すこと以上に、愛する仲間とともに勝つために戦う。渋谷に加わり1年2ヶ月が経とうとしているが、その年月とは比例しないくらい、クラブへの想いは増している。チーム随一と言ってもいい負けん気の強さと芯の強さを力に変え、この渋谷で新たなブレイクスルーを迎えようとしている。



前節の勝利で取り戻したあの手放しがたい景色を、一度きりで終わらせるわけにはいかない。江戸川の空の下で渋谷が欲するのは、勝利の余韻ではなく、その先にあるさらなる歓喜だ。


勝ち点で並ぶ対決だけに、勝てば数字上も精神的にも大きな意味を持つ。前節でつかんだ勢いを一過性のもので終わらせず、連勝という結果につなげられるかどうか。日に日に厳しさを増す夏の暑さよりも熱い渋谷が、再び熱狂を呼んでみせる。


取材・文 :西元 舞

写真   :福冨 倖希

編集   :畑間 直英


GAME REPORT


関東サッカーリーグ第12節。勝ち点で並ぶ7位の渋谷と8位の東京23FCが、スピアーズえどりくフィールドで激突した。


今節は石上が累積警告により出場停止。そのボランチの位置には本田が先発復帰し、前田は第8節以来となるメンバー入りを果たした。


前田と半田、敷田の3人にとっては、古巣との再会となる一戦。ウォーミングアップの段階で東京23サポーターの熱いチャントが響き渡るなど、勝手知ったるスタジアムでの対戦に注目が集まった。


雨上がりの蒸し暑さの中で始まった試合は、互いにロングボールを織り交ぜながら敵陣に侵入する。渋谷は左サイドを起点に右の小関へ展開し、最前線の伊藤の裏を突こうとする。8分には土田のクロスに伊藤が反応する好機を作った。


対する東京23もロングスローを軸に攻勢をかけ、11分には右CKからの強烈なシュート。ここはGK積田が好セーブでピンチを救う。前節から続いてこの日何度も見せることになるビッグセーブの最初の一本だったが、「公式戦だから、練習試合だからということではなく、先発でもサブでもメンバー外でも、自分のスタンスは変わらない」と、変わらぬ姿勢が表れていた。


前半の給水後は徐々に東京23がセカンドボールを回収する時間帯が続いたが、その流れを変えたのは濱名。31分、自陣から一気にロングキャリーでボールを運ぶと、ペナルティエリアに侵入して相手DF1枚をかわし、際どいシュート。惜しくも枠の右へ外れたが、「流れが悪い時間帯に自分の個人技で打開し、チームに流れを引き寄せられた」と、この仕掛けを起点に攻勢に転じるきっかけを作る。


徐々に押し返す渋谷は36分、またもや濱名の仕掛けから左CKを獲得し、こぼれ球を山出がダイレクトで狙う。これは相手の必死のクリアに阻まれた。


そして38分、ついに均衡を破る。右CKを得た渋谷は、藤本のボールに鈴木がヘディングで合わせると、ボールは相手選手に当たってオウンゴールを誘発。前節で同じ形で先制点に絡んだ鈴木は、三原監督の現役時代の代名詞であった”三原ロール”を披露し、喜びを爆発させた。


渋谷の攻撃はここで終わらない。前半アディショナルタイム、山内が中盤でボールを奪うと、伊藤がプレスに来た相手をかわして右サイドを突破。中央を駆け上がった植松も最終ラインの背後を取り、伊藤からのパスを受けてペナルティエリアへ侵入。スライディングで止めに入った相手DFとGKを鮮やかにかわし、冷静にゴールネットを揺らした。


前半最後のプレーでは東京23FCにミドルシュートを許したものの、積田が落ち着いてセーブ。終了間際にリードを広げた渋谷が、2点を先行して試合を折り返した。


日が沈んでも蒸し暑さが残るなか、後半がキックオフ。2点を追う東京23FCは積極的に最終ラインの背後を狙ったが、鈴木が持ち前のスピードを生かして対応し、相手に自由を与えない。


それでも49分、中央をドリブルで切り裂かれ、そのこぼれ球から強烈なミドルシュートを浴びる。しかし、ここも積田が素早く反応し、クロスバーの上へとはじき出した。


攻勢を強める東京23FCに対し、渋谷も簡単には主導権を渡さない。濱名が巧みに身体を入れて相手の前進を阻み、中盤では植松がボールを収めて攻撃の起点をつくる。


57分には、山内のインターセプトから濱名が一気に加速。ハーフウェーライン付近から中央を怒濤のスピードで持ち上がり、そのままシュートまで持ち込んだ。ミスや荒さはまだあると本人は認めながらも、「藤本や周りの選手との連係、点の取り方のバリエーションを、練習の中で探り合いながら高めていきたい」との言葉通り、次の一手を探るような仕掛けの連続だった。


2点を追う東京23FCは、2人を入れ替えて反撃への姿勢を強め、素早いパスワークから渋谷の守備を揺さぶりにかかる。雨が降り始めた60分、渋谷も土田に代えて半田、小関に代えて宮川を投入。直後には左CKの競り合いからゴールを脅かされたものの、次第にこの交代策が攻撃面で効果を発揮していく。


69分、右サイドに入った宮川が鮮やかなドリブルで相手を抜き去り、中央の伊藤へボールを届けようとする。相手DFの対応に阻まれてフィニッシュには至らなかったが、直後に濱名がドリブルでペナルティエリア右の深い位置まで侵入。二次、三次攻撃へとつなげた渋谷は、最後に植松がマイナス方向へ折り返し、宮川が右足を振り抜いた。追加点こそ奪えなかったものの、交代で入った選手を中心に果敢にゴールへ迫った。


飲水タイムを挟み、東京23サポーターのコールが一段と大きくなる。すると75分、FK後の素早いスローインから右サイドを攻略され、クロスを送り込まれる。中央で合わせたヘディングのこぼれ球に対し、後方から走り込んだ選手に身体を投げ出しながら押し込まれ、執念の1点を返された。反撃への希望をつなぐゴールに、東京23側のスタンドは一気にボルテージを上げた。


1点差に詰め寄られた渋谷は77分、濱名に代えて吉永、伊藤に代えて政森を投入する。直後にはカウンターからゴール前まで運ばれたが、ここでも積田が立ちはだかる。さらに3分後には、縦に速い攻撃からオーバーヘッドを狙われる場面も迎える。


大粒の雨が降り注ぐなか、試合は最終盤へ。右サイドからのクロスにヘディングで合わせられ、あわや同点という場面もつくられたが、渋谷は最後の一線を割らせなかった。


アディショナルタイムは5分。押し込まれる時間が続くなか、今度は渋谷に決定機が訪れる。自陣で相手のスローインからつながれたボールを奪い返すと、政森が前進。ペナルティエリア内で相手DFに倒され、PKを獲得した。


キッカーを務めた政森は、ゴール中央へ蹴り込んで勝負を決定づける3点目。自身にとっては、今季初ゴールとなった。


相手に攻め込まれる状況でのPKについて、「久々に緊張したので、ゴロで真ん中に行ってしまったけれど、自分はだいたいいつも真ん中に蹴るので、そこは意識した。ただ、あんなにボテボテのゴロになるとは思わなくて、焦ってちょっと(詰めに)行こうとしたけれど、入ってからはほっとした」と、安堵の笑みを浮かべた。


さらに90+5分、FKのチャンスから宮川のボールに山出が強烈なヘディングを叩き込み、ダメを押す4点目。試合はラストプレーの半田のシュートで幕を閉じ、渋谷が4-1で勝利した。


試合後、積田は「相手に決められた後も粘り強く戦えて、決めるべき人が決め、最後は(山出)旭がしっかり締めの1点を取ってくれた。90分を通して勝ち切れたことは、すごく良かった」と充実の表情を見せた。


アウェイの地で今季初の連勝を飾った渋谷。苦しい時間を耐え、最後は攻撃陣が結果で応えた。守備の粘りと個の打開力がかみ合った渋谷は、アウェイで4得点を奪い、連勝という確かな成果を手にした。


リーグ戦はここで一時中断。台風の影響で延期となっていた第8節・日本大学N.戦が、8月16日(日)にスポーツ日大アスレティックパーク稲城で行われる。酷暑を迎えてさらなる進化を目指す渋谷が、3週間後にどんな姿を見せるか注目だ。


取材・文 :西元 舞

写真   :福冨 倖希

編集   :畑間 直英


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